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世界で成功をみせている物流スタートアップ5社からみる事業機会

こんにちは!サムライインキュベート Internの藤本(@Homura_fujimoto)です。

今回は物流シリーズ#5として前回取り上げた世界における物流スタートアップの中から特に成長をみせているスタートアップを5社ご紹介します。
そして、各社の事例を通してこれからの日本の物流領域においてどのような事業機会があり、イノベーションが起こる可能性があるかを読み解いていきます。

それではさっそく見ていきましょう!

①荷主と中長距離輸送トラックのマッチングプラットフォーム「Convoy」

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設立:2015
拠点:アメリカ・シアトル
総調達額:$675.5M(約743億円)
ラウンド:シリーズD
URL:https://convoy.com

【事業概要】
「Convoy」は拠点の都市間などを輸送する中長距離トラックと荷主のマッチングと、違う荷主で行き先が同じ貨物を束ねて輸送することにより輸送を効率化するプラットフォームサービスです。

現状、荷主は電話やファックスを通じ、空トラックを必要になる都度探して輸送をしており、1台のトラックが満杯にならない貨物量でもトラックの手配が必要なことや、荷物の追跡ができずに到着時間が不正確であることなど、多くの問題を抱えていました。

しかし、本サービスでは1つのプラットフォームを通じ、多くの提携輸送業者から最適なトラックを選択し、輸送、追跡、決済までを一元化することができるため、安く早く確実に貨物を輸送することが可能となります。

また、トラック輸送業者においても貨物が片道しかない場合、帰りが回送運転になってしまう問題があります。Convoyの調査では全米の約35%のトラックが空荷状態で走行しており、距離換算で約1兆kmで費用だけでなく人手不足や環境負荷の面でも問題となっています。

その中で本サービスを使用することで帰りの回送運転を減らすことができ、収益が改善するだけでなく、問題となっているドライバー不足や環境負荷に対しても有効な解決策となっています。

日本においてもアメリカと同様のドライバー不足・環境対策という問題は発生している中、類似サービスは見られますが、中長距離輸送で同様のビジネスモデルを持つスタートアップは出現していません。

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②貨物の輸送状況可視化サービス「project44」

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設立:2014
拠点:アメリカ・シカゴ
総調達額:$397.5M(約437億円)
ラウンド:シリーズE
URL:https://www.project44.com

【事業概要】
「project44」は様々なデータを活用した陸海空における貨物の輸送状況可視化、輸送に伴う文書や証明書の電子化などによるプロセスの自動化によりサプライチェーンの可視化/効率化を提供しています。

従来の配送状況確認は荷主がフォワーダーへ、そして運送業者へ電話やメールで尋ねるなどの工程を踏んでおり、非常に非効率的かつ不透明でした。また、情報に確実性/即時性がないため、荷主は欠品や在庫余剰などを抱える、輸送途中の温度などの状態確認ができない、発注から到着へのリードタイムが長いなど多数の問題を抱えていました。

その中で当サービスの使用によりリアルタイムの輸送状況を確認でき、到着日時を推定できることで適切な在庫、生産管理ができ、輸送が速やかに行われることにより保管コストを削減できるなど、サプライチェーン全体での効率化が実現できます。また、輸送に伴い調整の中で必要な多くの書類の電子化とプロセスの自動化により、輸送に伴う手続きの自動化が可能となります。

日本においてスタートアップにより物流業向けの配送管理や在庫管理システムなどは開発されている一方、海外において様々なサービスが開発されているサプライチェーン管理サービスは開発が少ない状態です。新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、Eコマースが拡大する中で物流が改めて注目を浴び、社会の中で大きな役割を果たしている中で非常にチャンスが大きい領域ではないでしょうか。

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Image Credits:project44


③自動運転システム/センサー開発「Aurora Innovation」

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設立:2017
拠点:アメリカ・シリコンバレー
総調達額:$675.5M(約743億円)
ラウンド:シリーズD
URL:https://aurora.tech

【事業概要】

「Aurora Innovation」は自動運転ソフトウェアやLiDARなどのハードウェアの開発とパッケージ化により個々の車両に依存しない自動運転システムを開発しています。

現在までにUberの自動運転開発部門である「ATG」や、センサーの一種であるLiDAR開発スタートアップの「Blackmore」、「URS Technology」の買収など自動運転システム開発に必要な要素を揃えてきています。

加えて、自動運転車両の普及に向け、フォルクスワーゲンやFCA、トヨタ、デンソーなど世界の自動車関連大手企業と提携しており、着実に事業進捗をみせています。そして2021年7月にアメリカ・ナスダック市場へのSPAC方式による上場を発表し、時価総額$13B(約1兆4,000億円)、新規調達額$2B(約2,200億円)での上場予定です。

日本ではスタートアップによるバスや乗用車の自動運転は積極的に実証実験が行われていますが、完全自動運転トラックに特化した形では行われていません。日本においてもトラックドライバーの人手不足問題が加速している中、有人車両に対する後続車の自動運転による隊列走行だけでなく、先の完全自動運転開発までが求められています。

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Image Credits:Aurora Innovation


④自動運転配達小型ロボット開発/サービス「Starship Technologies」

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設立:2014
拠点:アメリカ・サンフランシスコ
総調達額:$99.2M(約109億円)
ラウンド:シリーズB
URL:https://www.starship.xyz

【事業概要】
「Starship Technologies」は大学構内や街中で歩道上を走行するフードデリバリーや日用品配達などのラストワンマイルの輸送を担う電動小型自動運転配達ロボットの開発と配達サービスを提供しています。

2021年5月には150万回の配達を達成し、アメリカ、イギリス、ドイツ、エストニアの複数都市にてサービス展開しています。配達は6輪型のロボットが搭載されたカメラやセンサーを活用し、天候に関係なく歩道や横断歩道上を人や障害物を避けつつ走行します。

注文はアプリ上から行い、到着時はアプリを使用してスマートフォンから車両のロックを解除することでで受け取ることができます。価格は1回$2で半径4km、重量約9kgの輸送が可能であり、今までの人による配達より圧倒的な低価格での配達を実現しています。

また、本拠点をアメリカ/サンフランシスコ、開発拠点をエストニア/タリン、フィンランド/ヘルシンキに持つなどサービスだけでなく、開発も世界的に行っている特徴も持ち合わせています。

日本においても同様の配達ロボットによる実証実験が行われており、無人ロボット開発スタートアップのZMPが開発したDeliRoが東京などの都市内で同様のサービスの実証実験を行っており、サービス提供の基礎は形成されつつあります。

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Image Credits:Starship Technologies


⑤3次元移動ロボット開発による倉庫ピッキング効率化「Exotec」

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設立:2015
拠点:フランス・カレー
総調達額:$113M(約124億円)
ラウンド:シリーズC
URL:https://www.exotec.com

【事業概要】
「Exotec」は前後/左右/上下の移動可能な自動搬送ロボットを活用し、倉庫内でのピッキング作業を効率化しています。

従来の倉庫内でのピッキング作業は作業員が倉庫内をスキャナーなどを持ちながら歩き回り、目的の商品を回収していました。しかし、Exotecは商品の入荷/出荷依頼が入ると作業員でなく、自動搬送ロボットが倉庫部分からコンテナを搬送することで、作業員は移動なく作業台の前で待ち、入荷や出荷した商品を取り出して梱包するのみです。

このように倉庫内を完全に自動化することはできませんが、自動倉庫より安価かつ容易に導入し、効率化/省人化ができます。また、増設の際も既存システムを停止することなく状況に応じて増減できます。加えて、倉庫部分の自動化によりロボット専用ゾーンができることで棚の高層化や通路を狭くすることによる倉庫の高密度化で更なる効率化を実現できます。

また、日本にも営業拠点を有しており、ファーストリテイリングで導入されるなど積極的に海外展開を進めています。昨今、自動倉庫/倉庫の効率化は代表格である2012年にAmazonが買収したKiva Systemsを初めとして、日本を含めた世界で多数のスタートアップが様々な形式を開発しており、どのようなシステムがスタンダードを形成するか注目されます。

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Image Credits:Exotec

世界で成長を見せる海外物流スタートアップ

今回は世界で特に成長が見られる物流スタートアップを5社取り上げ、事業概要と日本での事業機会についてご紹介しました。依然として日本には多くの事業機会があることをお伝えできたかと思います。

次回は日本に未だ存在しないビジネスモデルを有する世界の物流スタートアップのご紹介を通じて、日本での事業機会を探ります。

最後に

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