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涙のROCK断捨離 55.A_King_Crimson_ProjeKct「A Scarcity of Miracles」

ア・キング・クリムゾン・プロジェクト「ア・スケアシティ・オブ・ミラクルズ」/A King Crimson ProjeKct「A Scarcity of Miracles」
2011年

自らの著作権を守るためなどの理由はあるのでしょうが、過去音源やライブ盤が出過ぎると、当然ひとつひとつへの思い入れは薄くなっていきます。ファンなのでお金があれば買いますが、この時期のキング・クリムゾンにはあまり思い入れが無く、このアルバムについても、買いはしたものの、ほとんど聴かないままでした。

2011年のこのアルバムは、正確にはキング・クリムゾンではなく、派生プロジェクトのひとつ、ア・キング・クリムゾン・プロジェクトの作品です。
ただ、そのメンバーには往年のファンには気になるメル・コリンズが含まれていました。
ヌーボー・メタルを掲げて、固く激しいサウンドを展開した90年代末のキング・クリムゾンが暗礁に乗り上げ、しばらく経ったた頃に届けられたこのアルバムは、想像以上に静的でおとなしいものでした。
怒り狂ったように鳴っていたロバート・フリップのギターはすっかり控えめで、トニー・レヴィンもサポート・メンバーのような地味さです。
代わりに活躍しているのが、ジャッコ・ジャクジクメル・コリンズでした。正式なキング・クリムゾンでは無いという通り、あくまでプロジェクトであり、音もこの二人のバンドにロバート・フィリップがゲスト参加しているという感じです。

キング・クリムゾンの持っていた哀愁は随所に感じられますが、楽曲としてのインパクトは弱く、演奏としても注目ポイントがありません。
CDの帯に、「キング・クリムゾンの最終形態、ついにその姿を現す!」と書かれていましたが、本当に音を聴いてそう思ったのでしょうか?
個人的には、70年代キング・クリムゾンが持っていた抒情的な面が好きなので期待をしたのですが、正直なところ残念でした。

この時期、メタル・クリムゾンからの進化を模索するロバート・フリップは、これ以外にも様々なプロジェクトを立ち上げ、実験を繰り返していました。そちらには、プロジェクトと割り切れば、とても興味深く聴きごたえがあるものが実はいくつも存在しています。
また、時期は違いますが、ブライアン・イーノやデヴィッド・シルビアンとの試みも、非常に価値のあるものでした。
それだけに、このアルバムは、期待外れ感が大きくなってしまったようです。

このアルバムにロバート・フィリップが可能性を感じたのかどうかは分かりませんが、結果として、ジャッコ・ジャクジクメル・コリンズトニー・レヴィンは、その後のキング・クリムゾンのメンバーとなって活動してゆくことになります。
意地悪なことを言えば、ロバート・フィリップは、バンド・メンバーのせめぎ合いによる偶然の化学反応よりも、自分自身がコントロール可能な混沌っぽさを志向し始めてしまったのではないかと思うのです。
つまり、ジャッコのようなメンバーは、使い勝手が良かったのだと。

なんだか、どんどん厳しい感想になってしまいました。
気持ちを入れ替えて、ジャッコ・ジャクジクメル・コリンズのアルバムだと思って聴きましょう。


Spotifyではこのアルバムを探せませんが、
「King Crimson ProjecKCts」というプレイリストがあり、そこで、アーティスト Jakko M.Jakszyk を探すと、アルバム全曲を聴くことができました。
https://open.spotify.com/playlist/0Sm1NIHB4tzkCTIWtvc8bN?si=iO1X21gDSjmHJm5r4x1r2g


写真の使用許諾に感謝します。
Photo by Mika Baumeister on Unspla