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涙のROCK断捨離 4.Wishbone_Ash「Argus」

ウィッシュボーン・アッシュ「百眼の巨人アーガス」/Wishbone Ash「Argus」
1972年

この原稿を書くためにウィッシュボーン・アッシュのスペルを確認しようとPCに打ち込んだところ、なんとデビュー50周年を祝うニュー・アルバムの発売告知が現れました。
速攻でSpotifyを立ち上げて聴いています。
ミドルテンポの軽快なポップロックが多く、歌心を感じさせる良曲揃いという印象です。演奏は落ち着きがあり、ボーカルは若々しくさえあります。
ただ、確かに聴きやすい仕上がりですが、ちょっと個性に乏しく、「おお、これぞウィッシュボーン・アッシュだ」という感じにはなれませんでした。

1970年のデビュー以来、このバンドも長年にわたって活動し、多くのアルバムを世に出しています。50周年記念で新譜が出るほどなのですから。
しかし日本で話題になるのは、ほぼこの「百眼の巨人アーガス」に限られるのではないでしょうか。
このアルバムで繰り広げられる音世界は独自の物語性を感じさせ、ツィン・リード・ギターは個性的でした。

バンドメンバーが、プログレを志向していたのかどうかは分かりません。ただ、アルバムの作りはトータルコンセプトの組曲で、まさにプログレな作りです。
手元の「30周年記念エディション」には、オリジナルの7曲にプラスして
3曲のボーナストラックが付いているのですが、その全10曲でトータル・コンセプトになっていると思えるまとまり方です。
1曲目の「時は昔」で自問自答し、2曲目「いつか世界は」で世界が変わって見えて、3曲目「ブローイン・フリー」で甘い思いに浸っていると、4曲目「キング・ウィル・カム」で戦いが避けられなくなり、5曲目「木の葉と小川」で日常に別れを告げ、6曲目の「戦士」で遂に戦士として覚醒し、7曲目では早くも戦いが終わって「剣を捨てろ」となる。ここまでがオリジナル。
さらに30周年エディションでは、8曲目にセカンドアルバムに入っている「ジェイル・ベルト」が入り、ここで戦いの虚しさに心を拘束され、9曲目で「巡礼」(これもセカンドアルバムの曲)の旅に出て、10曲目の「フェニックス」(これはファーストアルバムの曲)で自己を取り戻す、という流れかと・・・。

正確には、ボーナストラックの3曲は、アルバムからではなくライブバージョンです。セカンドアルバムでは、「ピルグリム」の後に「ジェイル・ベイト」という流れなのですが、ここを逆にして、さらにラストをファーストアルバムからの「フェニックス」で締めるあたり、30周年エディション編集者の意図を感じます。
さらに余談ですが、Spotifyでは、8曲目の「ジェイル・ベイト」が、4枚目のアルバム「Wishbone Four」からの「No Easy Road」に差し変わっていました。(「Jail Bait」のままのものも、データ上ではあるようです。「Argus Jail Bait」の2ワードで検索したら出てきました。)

改めてこの有名なアルバムを聴いてみると、バンドとしてはプログレでは無いのではないかと思えてきました。
この時代は、長いソロを演奏するロックバンドは多くありましたし、そこでは実験的な音楽が繰り広げられることも珍しく無かったように思えます。
ひょっとしたら、バンド演奏が好きなロック少年たちが時流に合わせて演奏してたら凄いのができちゃった という感じだったのかもしれません。しらんけど。

必聴なのは、オリジナルアルバムでは最後を飾る「剣を捨てよ」。
誰もが称賛するツイン・リード・ギターが、これでもかと迫ってきます。
ツィン・リードと言っても、イーグルスの「ホテルカリフォルニア」のような統制の取れたものではありません。最後の数分は「あとは曲終わりまでお好きに演ってください」という感じで、こちらは音に身を任せるしかありません。できるなら大きな音で聴きましょう。

実を言えば、このアルバムはCDラックに2枚入っていたにもかかわらず、彼らの他のアルバムは持っていませんでした。他のアルバムも今更ながら聴きかじってみたのですが、良いバンドです。プログレ好きというよりも、70年代ロックファンとして好きになりました。もっと早く出あえて親密になっていたら、その後の人生が変わっていたのかなーなんて思いつつ、お別れします。


Spotifyでも聴けます。


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Photo by Nik Shuliahin on Unsplash