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涙のROCK断捨離 43.Roger_Waters「Is this the life we really want?」

ロジャー・ウォーターズ「イズ・ディス・ザ・ライフ・ウイ・リアリィ・ウォント?」/Roger Waters「Is this the life we really want?」
2017年

前作から25年経ったとは思えないほど、相変わらず見事なロジャー・ウォーターズ節が炸裂するアルバムです。
これまでのようなゲスト・ミュージシャンとの化学反応を期待するのではなく、ナイジェル・ゴドリッジという気鋭のプロデューサーを起用したことは成功したと思います。彼のソロの中では、ベストな1枚では無いでしょうか。

アルバム全体をまとめるコンセプトはありますが、ストーリー全体を聴かせてゆくというよりも、各曲ごとの作りが良くなった気がします。
単に、昔より音がいいので、曲が際立って聴こえるのかもしれませんが、いずれにしてもロジャー・ウォーターズの良いところがしっかり出ています。
ロジャー・ウォーターズと言えば、効果的なSE使い、ソウルフルな女性ボーカル、味のある緩急がついたボーカル、アコースティックで耳を澄まさせておいてエレクトリックなサウンドで感情に揺さぶりをかける、という感動を作り出すテクニックが持ち味です。それに、アルバム全体で時々繰り返される主題が付けられたら、もう、ピンク・フロイド時代にやられてしまっているファンとしては抵抗できません。
これって、若い人にも効くのでしょうか。ある種の発明品だと思います。

70歳を超えて、今も怒りと喪失感をエネルギーに問題提起を続ける生きざまは大したものです。それもこれも、「ザ・ウォール」のライブが当たって大儲けできたことが大きかったのでしょう。自信がみなぎっています。

ジャケットは、黒塗りされた書類。
そこから消されずに残った僅かな単語を組み合わせると「Is this the life we really want?」の文字が読める。
日本語のタイトルこそ付きませんでしたが、直訳すると「これが我々が本当に望んだ人生なのか?」でしょうか。
(樋口一葉『たけくらべ』の一節「これが一生か、一生がこれか」を思い出して泣きそうになりましたが、このアルバムとの関係はありませんね。)
制作された2017年と言う時代的な背景も重要ですが、今(2020年4月)の日本で改めて、この現状への怒りに満ちたアルバムに耳を傾けるというのも意味があるように思います。


Spotifyでも聴けます。
https://open.spotify.com/album/2XhQwji1ixgjca0XzkiTek?si=IahdewatR7qhx0RUB9Ok6w


写真の使用許諾に感謝します。
Photo by micah boswell on Unsplash