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涙のROCK断捨離 54.King_Crimson「B'BOOM」

キング・クリムゾン「B'ブーム オフィシャル・ブートレッグ-ライヴ・イン・アルゼンチン1994」/King Crimson「B'BOOM」
1995年

同時期のキング・クリムゾン3つめは、ライブ盤です。
三度目の正直で復活したダブル・トリオ編成のメタル・クリムゾン(なんだか凄く強そう!)は、「ブルーム」でコンセプトの確認を行い、同じメンバーでのライブを何度か経て確信を得て、「スラック」という完成度の高いアルバムにたどり着きます。
(私も、確か1995年の新宿厚生年金会館でライブを観ました。)
このアルバムは、新生メタル・クリムゾンのコンセプトをライブで試している記録であり、この時点のキング・クリムゾンが70年代と80年代の曲を演るとどうなるかという実験の証明でもあります。

最初に言ってしまえば、凄いです。
「スラック」を聴いた後だと、よりライブらしさを強く感じることができます。録音は、このライブの方が先ですが、今聴くなら「スラック」を先に聴くことをお勧めします。
新曲については、「ヴルーム」「スラック」のコラムでも書いた通りなので割愛しますが、どの曲も緊張感あふれる演奏で、超絶技巧プレーヤーたちのインター・プレイを堪能できます。

このアルバムを買ってしまうファン心理としては。「スラック」に至る過程を検証したいというだけでなく、このバンドが演奏する「レッド」「太陽と旋律パートⅡ」を聴きたい、ということが強いのではないでしょうか。私はそうでした。そして、それは期待を裏切らないものでした。
さらに言えば、80年代キング・クリムゾンの「エレファント・トーク」「ハートビート」「スリープレス」などについては、この編成の良さが活かされたのか、収録アルバムよりもヤバさが際立ってカッコいいものになっていました。(特に「スリープレス」は、このアルゼンチン・ライブでしか聴けないと思いますので、ファンの方は是非、CDで確かめてください。)
こうして新旧あわせた曲をこの編成のライブで聴くと、80年代の音楽的な変化もキング・クリムゾンの歴史の中にあって必然であったのだとさえ思えてくるから不思議です。
私は個人的にエイドリアン・ブリューの歌声が好きになれないので、彼が歌っているとそれだけでニコニコ顔が浮かんでダメなのですが、それさえ払拭すれば、ギターもベース(チャップマンスティック)もドラムも、演奏に関してはとてつもない圧力のライブが繰り広げられています。
CDは2枚組で、約1時間半のボリュームです。

ファンでなければ、わざわざ買ってまで聴かなくてもよいかもしれません。ただ、ダブル・トリオの実力は、しっかり調整されたスタジオ・アルバムでは実感しにくいと思いますので、そうした点を検証したいファンの方には価値ある一枚だと思います。

Spotifyに、このアルバムはありませんでした。
同時期のライブでは、メキシコとニューヨークのもの(「ヴルーム・ヴルーム」)はあります。

CDでは、時系列的に、「ヴルーム」で実験、「B'ブーム」で実地テスト、「スラック」でスタジオ本番、「ヴルーム・ヴルーム」でライブ本番という、バンドが成長する過程を追って聴くことができます。


写真の使用許諾に感謝します。
Photo by Benjamin Suter on Unsplash