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自分をさらけだし、相手の心に入る演技で観客を魅了する個性派俳優 ”にわ つとむ”さん

主演をつとめた映画「審判」は、人類の現在地を問うフランツ・カフカの問題作が原作となっています。その主役を見事に演じきった彼の裏には、並々ならぬ長年の努力と演技に対する真摯な姿勢、そして誰にも負けない力強い信念がありました。気持ちだけで相手と循環していくマイズナーテクニックという手法で演技の訓練を続け、演技の中の自己表現を通して、人間の尊さを一点の曇りもなくさらけ出して、見ている人に「あなたはここにいていいんだよ」というメッセージを送り続けてきた「俳優 にわつとむさん」にお話を伺いました。


にわ つとむさんプロフィール
1974年生まれ。兵庫県出身。慶応義塾大学在学中に、蜷川幸雄演出舞台でデビュー。その後、お笑い芸人を経て再び俳優に。NHK「マッサン」やTV朝日「相棒」など数々のドラマ、映画、舞台に出演。ジョン・ウィリアムズ監督作品へは、3作目の出演となる。着実に磨いてきた演技力が開花すべく、今後が注目される個性派俳優。
座右の銘:わががわががの「が」をすてて、おかげおかげの「げ」でいきる
   All Photo © Carl Vanassche

「すべての人が活き活きと生きられる未来を創りたい!」

Q:どんな心のあり方や認識の変化が俳優としての今の活躍に繋がっていますか?

俳優を目指すと決心したときは、誰からも称賛を浴びて、自分がスポットライトにあたって、拍手喝さいの中にいる姿を描いていました。しかし現実は厳しく、この仕事を続けていく中で、「自分は人並み以上に恐怖心と不安感と自己防衛本能がある人間だ」ということを思い知らされるようになり、売れない日々が続き辛い思いをしました。映画「審判」では主役に抜擢されて、脚光を浴びることもありましたが、一瞬自信がわいても、また不安や恐怖が襲ってきました。

しかし俳優として日々、自己研鑽を怠ることはなく、自分をさらけだして、相手の心の奥深くにタッチできるような状態にもっていける訓練を長く重ねています。しかしそれがとてもとても難しく、自分をさらけだせない自分に気が付き、俳優としての限界を感じたこともありました。そのような経験を重ねながら、今は自分をさらけ出せない、という自らの限界に直面しながらも、そんな自分を丸ごと受け止めて、役の中ではせめても自分らしく在りたい、と強く思うようになりました。

俳優という仕事の奥深さに気が付いた時から、自分は俳優として生きていく使命があるのだと自覚をし始めました。自分はここにいて許されるのだということを心から感じることができたとき、自分が俳優として生きるということに対して腹をくくれた、自分の心と真摯に向き合いながら、目の前の壁を乗り越えることを意識し、自分の使命を全うしたい、という自分の力強い気持ちが今の活動に繋がっています。

Q:AIが活躍する時代に必要とされるニーズは何だと思いますか?

俳優は、AIにはできない仕事だと思っています。
なぜなら、人間の心の機微や、皮膚感覚にでてくるものはAIには再現不可能だとおもうからです。人間にしかできないことが、人間が本当に必要としていることだと思います。俳優は未来永劫すたれることのない仕事だと言い切れます。AIにはできない、人間だけができる、多くの人々に必要とされる仕事である、と誇りをもってやっています。

Q:これからの未来、どんな美しい時代を創っていきたいですか?

それぞれの個性が損なわれることなく、縛られることなく、他者の目を気にすることなく、人間がのびのび生きている世界を創りたいです。

Q: 映画「審判」で見ている人に伝えたかったことは何ですか?

監督からは、この映画の意味をあまり考えないでほしい、と言われました。考えてしまうとそれが演技に出てしまうからです。なので、映画では、ただひたすら無我夢中に生きる主人公が映っているはずです。主人公が何に苦しんでいるのか、を見ている人が考えるきっかけになってくれたらなと思います。扉の向こうのその先には何が待っているのか・・・見た人それぞれに感じてほしいと思います
そして、自分も、扉の先の世界を知りたいと思っています。

幼いころ、母の作ったアルバムを見て、過去が過ぎていく悲しさで涙が溢れた、一秒、一秒を刻み込むように生きていこうと意識して生きていくことを決めたのがわずか4歳のとき、中学3年生で偶然見たドラマ、「北の国から」で体中の涙が溢れる体験をし、自分もこんな風に人の心をわしづかみにする仕事をやりたい、と思い、俳優の道を決意したそうです。しかし家族に反対され、慶応義塾大学に行くことを条件に俳優の道を志すことを許され、高校時代はテニスと勉学の両立に必死だったそうです。慶応義塾大学に進み、本格的に俳優の道を志すも、その後売れていない時期も続き決して平坦な道ではなかったけれど一度たりとも俳優として成功する決心が揺らぐことはなく、43歳にして映画「審判」の主役に抜擢されました。俳優という仕事を通して、人間の生き方、在り方に真正面から向き合うにわさん。俳優という仕事の光と影、そして自身の心の中を余すところなく語っていただきました。大変貴重なお話をありがとうございました!


にわさんのご活躍は以下のHPから見ることができます


【編集後記】
インタビューの記者を担当した中澤です。

心から俳優という仕事を愛し、真摯に役作りに向かっている姿勢のにわさんの在り方に大変感動しました。今後のご活躍を楽しみにしています。



この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。



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