映画「ある男」
観ました。以下感想です。
ネタバレします。ご注意下さい。
物語のはじまりは、ある男の死。
この人の事を「Xさん」として調べる弁護士城戸。
城戸さんは誠実に仕事をこなすやり手の弁護士という感じ。
依頼主に対して真摯に向き合っている。
前半で奥さんに人捜しに入れ込みすぎだと言われる。
またこの奥さんの両親に「在日」と言われる。
「城戸さんは3世だから」
3世だから何なのだろう。
日頃からうっすら感じていた生きづらさというか居づらさを
無い物として、無かったことにしていた部分を
人捜しを通して、自分自身のアイデンティティーにも
改めて触れる事になる城戸。
意識的なのか無意識的なのか。
結局Xさんは殺人犯の息子で、本名を隠したくて別人として
生きるために「谷口大輔」と名乗っている。
戸籍ブローカー。本当にいそうだし、居るだろうな。
日本は戸籍さえあればどうにでもなるというか
他に確かめようが無いよね。
どうしても家族から離れたかったり
理由は様々だろうけど、需要はきっとある。
温泉旅館の長男本当に嫌なやつだったな~。
あからさまに嫌なやつだったな~。
「どうせ遺産目当てでしょ」とか。
でも、自分自身の中にこの人と同じ部分がどうしてもある。
だから見ていて嫌な気持ちになるんだろうな。
同族嫌悪というか、「お前もそうだろ?」と言われている感じ。
両親は日本人と韓国人です、と自己紹介されたら
その場では普通に挨拶したとして、
後々、日韓で事件とか社会問題のニュースを見たり聞いたりしたときに
「あの人そういえば親は韓国人だったな」ときっと過る。
そこまでならまだよしとして、
その人に再会した時にレッテルを貼ってしまっていないか。
むしろ、あまりこちらから積極的に会おうとしないとか
もしもその人が事件に巻き込まれたり何かトラブルを起こしたら
「やっぱり」と少しも思わないのか。
自分の中の嫌な部分と強引に向き合わさせられる映画だった。
これから先、何度かこの映画の事を思い出して、
胸糞悪い思いをする人がいる事を肝に銘じておこう。
自分自身、誰かと接する時
相手を無意識にジャンル分けしていないか気を付けていきたい。
この人はこの人、私と会っている時の私の感じた印象でいい。
周りの人が言う事に振り回されないように。
無駄にレッテルを貼ったり、色眼鏡で見ない様に。
自分自身の感じた事を大切に、第一にしていこう。
そしてまた、戸籍を入れ替えた「ある男」それぞれがそれぞれの家族のもとに帰っていく。
それを見届けた城戸さんが、自分の温かい家庭に帰っていた。
もとの城戸に戻った。と思ったら・・・
前半で奥さんが少し触れるけど「私の事避けてる?」とかって
浮気を疑う相手は、自分自身も後ろめたい事をしているからって
どこかで聞いた事あるけど、
やたらと色っぽいなこの奥さんって思ったけど、
不倫かよ~。
げんなりした。
せっかく、
「いつものあなたにもどって」という奥さんのセリフに
応える形になったのに、
「いつものじぶん」に戻ったはずなのに
簡単に「いつもの」に歪が出る。
そもそも「いつものじぶん」てなんだろう
自分てなんだろう
城戸はその後どこかのバーで自分自身の身の上話と
「谷口大輔」の身の上話を混ぜて
初対面の客に語っている。
自分の人生ってなんだろうね。
こんなもんなのかね。
別人になりたくなるきっかけって
意外とすぐそばにあるね、っていう
不穏なオチだった。
面白かったけど、考えさせられる映画でした。
城戸さん、私はすきよ。
妻夫木さんが素敵だってのもあるけど、
話し相手への相槌
何とも返しようがない時に
微笑んで何も言わずにただ間を空けるのが
とても印象的でした。
真似してみようかな。
紳士的で誠実な、報われて欲しい城戸さん。
奥さんにとっては、刺激が足りないのか?
それとも構って欲しい時に構って貰えないから?
どちらにしろ気持ち悪いけれど
やめてほしかったけれど、
とにかく、報われて欲しい城戸さん
あなたにも深い温かい繋がりができますように。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?