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16.子どもの未来を守りたい|イシグロテルキさん

先日お話させていただいたアナログ人間ことイシグロテルキさんとお話しした内容を書いていきたい。

イシグロさんとは以前にも一度Zoomでお話したことがあり、それ以来Twitter上でよく絡んでいた。
今回はイシグロさん主催のイベントの翌日だった。そのイベントにかけた想いを通して、普段からの考えについて語っていただいたのでまとめたい。

↓イシグロテルキさんTwitter

↓主催イベントレポ


■検索ワードをずらしたかった

イシグロさんが主催したのは、zoom戦略会議(私のイベントレポはこちら)というイベントで、内容は「人事や経営者に本音を語ってもらおう」というもの。
質問にゲストがそれぞれ自分の考えを答えていく形式をとっていた。

イシグロさんに話を聞くと、もともとは話の流れをスライドで用意していたが、直前でボツになったそう。

「最初にゲストである西村幸志郎さんのツイートを引用して、そこから話を派生させる形式を考えていた。しかし、最初に文字としてツイートを見せられたらそれが正解に見えてしまう気がするという話になって…」

そのため当日は出た質問にゲストが答えていくというアドリブ方式をとっていた。

「話のレベルが高すぎたかな?とは思う。でも、一つの結論に収まらなかったことや、ゲストそれぞれの立場や個性が出せていたのはよかった」


今回のイベントは、田中優大さん率いる株式会社VMKとの共同主催だった。

そのため(?)イシグロさんは、VMKが建てたコワーキングスペースVoltageのある京都にまで足を運んでいたオンライン開催なのに
大事なことなのでもう一度言う。オンライン開催なのに。

しかし、イシグロさんはその「わざわざ足を運ぶ」ということを大切にしているらしい。


私がお話ししたとき、首に青い首飾りをつけていた。
「これ昨日京都で買ったんだよね。染物らしくて、二重にしたら手首にもつけれるんだけど…」
と自慢げに黒いものまで出してくるので、思わず「修学旅行生じゃないですか」と笑った。
しかし、そうやってわざわざ京都にまで足を運んだからこそ、その首飾りとも出会えたのも確か。


今回のイベントも、そういう狙いがあったという。

イベントのテーマは「人事や経営者の本音を聞こう」だが、登壇者の方々の話を聞いて「その人自身」に興味を持ち、そこから企業探しの検索ワードがズレてもいいのではないか、ということを期待していたそうだ。

「今は検索すれば出てくる時代だから、業界をこれ!って絞ってしまったら、それ以外の話は見つけにくい。
でもそこを、例えば今回登壇された西村幸志郎さんを知ることで『土木業界もありかな』とか『北海道に就職するのもありちゃうん?』と思える可能性がで出てくる。
そうやって就活のための検索ワードにズレが生じてほしいし、その要因が人であってもいいんじゃないか、と僕は思うんだよね」


イシグロさんは「就活支援をしたいわけではない」という。

「今やりたいのは『ネットに閉じこもった感覚を壊したい』というのが強い」

とのこと。なかなかパワフルだ。



■スマートに生きたくない

「合説マジックってそんなに悪いものかな?」と、イシグロさん。

「ミスマッチの原因と言われるけど、自分の知ってる幅の中で選んだってミスマッチは起こる。
それに、どこの会社にだっていい部分と悪い部分がある。合わないなら合わないなりの働き方があると思うんよ」

イシグロさんは現在LEDのレンタル会社から内定をもらい、インターンに参加しているそう。
そこでも、「うーん」と思う部分もあれば、こうやってSNSで発信しようと思わせてくれたといういい側面もあるという。

「そんなミスマッチが起こることを恐れるよりも、マジックにかかったことで、感情が動かされたり、自分の中の優先順位が一瞬でも変わって、今まで考えてみたことのない方向にズレていけるメリットの方が大きいと思うんだよね」


しかし最近は、そのような自分の思っていないものに出会うことやそのための時間を「無駄」とする風潮が大きい。

AI技術の発展やマッチング機能の多様化により「求めたものがまっすぐ手に入る」時代に変わりつつある。
イシグロさんはその中で「情報にどうアクセスするか」が大切だとおっしゃった。
現在地からゴールまでが一直線になりつつある中で、どうやって途中にあるノイズを見て、何を感じ取るか、ということだ。

「ノイズだ」と思うものには自分の考えの外にあるものが含まれており、その視点を取り入れることで新しく自分を見直すことができる。
景色をきれいに見ようとしてノイズを排除するから、考えが一方通行になり、弊害が生まれるのだという。

「今の人は、無菌状態をつくろうとしているのかな、とも思う。
菌もすべてが悪というわけではないように、一見無駄に見えるものでも今後の人生に役立つことはたくさんある。
蚊がいるから世の中が回っているのに、マラリアなどを見て蚊を地球から排除しようとしているのと同じ」


就活でもこの状況は見られて、自分の興味のある業界職種に絞って「検索」にかけてしまう。
興味があることはすぐに見つかるだろうが、「たまたま」知らなかった世界に出会うことが少なくなってしまうかもしれない。
イシグロさんは、それを懸念しているそうだ。

自分の興味の外にあるものが見えなくなることが絶対悪とは言わない。しかし、もっと他にもいい方法があるのではないか、その可能性をみんなが考えていければ、と思っているそうだ。


「Twitterには特にスマートに生きていこうとする人が多いと思う。それはそれでどちらの考え方もわかるように参考にすることにしている。
僕は、あの中でスマートじゃない方向で1番になりたい」

と、イシグロさん。

人は利便性を求めていくから、便利なものにどうしても偏っていってしまう。

たとえばタクシーの現在地から目的地まで一直線に行ける効率の良さが評価されすぎると、バスがなくなってしまう可能性もある。

「世の中がスマートに偏ってきつつあるから、Twitter上ではスマートじゃない方向に偏って発言をするくらいがちょうどいいのかも」とおっしゃっていた。



■強い絆と弱い絆理論

「強い絆/弱い絆」理論というのを聞いたことがあるだろうか。

「強い絆/弱い絆」理論というのは、

「世の中の人のつながりには、『お互いに共通の知り合いがたくさん存在している』強い絆と、『自分たち以外に、ほとんど共通の知り合いがいない』弱い絆の2種類が存在するというもの。」
(写真・文章共に21世紀のビジネス基礎知識「弱い絆の強い価値」 | iXキャリアコンパスから引用)

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例えば、同じ学部の友達には、共通の友達がいることが多い。
これが「強い絆」であり、共通のフォロワーがいるTwitterもこれに当てはまる。上の、青い線がその「強い絆」を表す。

これに対して弱い絆というのは、例えばたまたま講義で席がとなりになった他学部の学生やコンビニで仲良くなった店員さんなどが当てはまる。
上の図の、赤い線の繋がりだ。


強い絆では誰かが何かすると、みんながそれを参照し真似をする。
それが、タイムラインでみんなが似たようなことを言う一種の気持ち悪さの要因でもあるという。ただ、SNS(特にTwitter)は共感を集める場所なので、仕方のない部分もある。

それに対し弱い絆というのは強い絆では得られない新たな情報や刺激の提供があるという。自分の範疇に関わらないところに触れるから、新たな刺激になるというのだ。


この理論でいくと、中途半端な関係を増やすほど自分の幅が広がることに繋がるそうだ。
しかし、その中途半端な関係を無理やりにでも作らなければできない世の中になってきていると、イシグロさんは危機感を持っているという。

コロナ前の時代は、無理をしなくても、会食での紹介で新しい人と繋がったりできた。あるいは話題という点でも、隣のテーブルの話題につられて普段は話さないような話をすることだってあった。
しかし、コロナによりオンラインが普及した世の中になっていった場合、会食が開かれたり、外で食事をする頻度が減っていしまうかもしれない。

Twitterでのつながりも、人の中にある要素の多くを出すことなく繋がってしまうため、新たな発見が少ない。

頻繁に絡むからこそ、その人のことを良く知っているつもりになるが、それはあくまで「就活」や「ビジネス」といった一面のみ。
これが、ネットで浅く強くかかわってしまう怖さだと、イシグロさんはおっしゃっていた。


イシグロさんが今懸念しているのは、このままで未来の子どもたちが幸せに育つことができるのだろうか、ということだそう。

SNSやインターネットの発達により、文字で情報をえれるようになり、動画や写真などにもアクセスしやすくなった。
しかし、その分「頭で理解する」ようになり、体感しようとしていないのではないか、という。

「共感っていう字は『共に感じる』と書く。でも今の人は脳みそでしか感じていない。
それで本当に他人を理解できるのか?自分の子どもを理解できるんだろうか?
ネットの世界ばかりにいるが、恋愛や子育てといった身体同士のふれあいになったときに大丈夫なのか?
そこで親に理解してもらえない子どもができてしまったら、その子は幸せになれないんじゃないかと思う」

イシグロさんの反スマート思考の裏側には、未来の子どもたちの幸せを願う心があるようだ。



■思いを発酵させる時間

便利になることで、今まで「無駄だ」と考えられてきた時間がどんどん短縮されて来ている。
しかしイシグロさんは、そういった「余白」も必要であるという。


大学に入って、今勉強していることが「思っていたことと違った」という学生もいるだろう。
しかし、それは負担があるからこそ、そう考えられるという。

学校に行く時間、課題をしたり、テストに向けて勉強する時間。
そういった負担のある時間を過ごすからこそ「なぜ自分はこれをやっているのだろう」と自問自答できる

例えば、芸能人は大阪東京の都会よりも、その周辺の都道府県の方が出身者の割合が多いというデータがあるそうだ。
これは、昔CDを買いに行くときなどに、都市近郊の住民の人々は1~2時間遠出する必要があった。
その電車の中で「なぜ自分はここまで遠出しているんだろう」と問うことができた。これが芸能人になりたいと思うきっかけになったのでは、という説がある。

コロナによってオンライン授業が普及し、「もうずっとオンラインでいいじゃん」という声もあるようだが、その手軽さは果たして自問する余白を残しておけるのだろうか


また、オンラインでやることで、友達ができにくいという難点がある。
それにより、人と出会うことで助けられたり、関心が広がったりという可能性がなくなってしまう。

「人との出会いや、余白の時間によって、やる気がない子が関心をもってやる気を出したり、他の道を見つけるきっかけになる。余白をなくすということはその可能性もなくすということにもなる。
オンラインの世界はやる気と能力がもともとある人しか生き残れない気がする。でも、やる気も能力もない子が悪いかといえば、そういうわけではない」

確かに「やる気のない人生だったけどある出会いがきっかけで…」というのはよくある話だ。成功者の中にもそういう方はたくさんいる。

そういう人が今後減っていく可能性があるのは、少し怖い気がする。



■人に好かれる理由

今回のイベントで1つ感じたのは、イシグロさんが登壇者の西村幸志郎さんに好かれていたということ。

イシグロさんは万人受けするタイプではないのかもしれないが、ハマる人はとことんハマるタイプだと思う
現に私がそうだ。なぜほかの人のためにこんな5700文字のnoteを書いているのだろう。つくづく疑問だ。


イシグロさんに「なぜあんなに好かれているんですか?」と聞くと「ビジョンとかポリシーがはっきりあるからかな」と教えてくださった。

「僕のビジョンに『子供たちを守るために身体を使っていく方法を身に着けたい』というのがある。そのために余白の大切さを伝えていきたいのであって、今回のイベントもただの情報提供ではない」


現在、LEDライトのレンタル会社から内定をいただき、インターンをしているというイシグロさん。
その会社では「LEDライトの普及通して現在日本で稼働している原発13基を止める」というミッションがあり、ビジョンも「100年後の地球と子どもたちの未来を守りたい」と、イシグロさんのものに沿っている。

このような思考・言葉・行動の一貫性が、イシグロさんが好かれる一つの理由なのかもしれない。


「それに、僕自身が幸志郎さんのことを好きなので

と幸志郎さん愛を語ってくださった。

確かに、ファンとして応援していれば、よくしていただけるというのはTwitterではよくある話だ。

…私のことはちゃんと好いてくれているんだろうか???
まあ、そのあたりは置いておこう。


たった2時間の面談で5700文字を埋めてしまう男、イシグロテルキ。
しかも実は最後の30~40分はTwitterの話が盛り上がったので今回の内容には含まれていないという…恐ろしい。

イシグロさんからは、みんなが利便性とスマートさに流されていく中、そこに疑問を持ち、発信し続ける力強さを感じる。

ぜひ彼のTwitterを見てほしい。
というかみんなイシグロさんとしゃべってみてくれ。

↓イシグロさんTwitter


イシグロさんへ

いつも本当にありがとうございます、という気持ちを込めて死ぬほど時間使ってnote書いてみました。
5700文字。今すぐZoomつないでドヤ顔したい。

そんな話はさておき、今回も夜遅くに時間をとっていただき、イベント後のつかれている中お話していただいて本当にありがとうございました。
note中にも書いたし、面談中にも言いましたが、その言動の一貫性と、世の中の流れに逆らう精神力を心から尊敬しています。
そして有名になりすぎる前に知り合っておいてよかったなとも思います。笑

また夏に大阪でお会いしましょう。
その時に今回の話の続きができること、楽しみにしております。
今回は本当にありがとうございました。


いつも読んでくださってありがとうございます。