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女子大生だけど、一人が楽しい話

また、寝るのを失敗した。朝起きよう起きようと思うと「起きることが出来なかったらどうしよう」と考えて、まったく起きられなくなるのだ。普段活動する人間なら疲れてすぐに寝てしまうことも出来るのだろうが、あいにく私はまったく普段動かない。寝転んでYouTubeを見て気が向いたらインターンの活動をして寝転ぶ。だから、夏休みに慣れきった身体に突然「今日から学校だよ!」と叫んでも聞いてくれるはずもないのだ。

そう、今日から学校である。今年の四月にやっと本格的に上京して華の女子大生となった私だが、四月から七月まで通った結果友達が出来ていない。大学に友達はいる。一人、地元から一緒に上京してきた大親友だ。いや……いや。大親友と書くと途端に気持ちが悪いかもしれない。普通にまあ、友人だ。世間的には大親友かもしれない。そんなことはどうでもいい。その彼女以外にまったく友達が出来ていないのだ。私より友達作りが上手い彼女でさえ新しく出来た友達が2人なのだから、そりゃ仕方がないとは思う。オンライン授業だったし。飲み会も無いし。LINEやインスタは惰性で交換するものの、まったくそれらの繋がりは利用されず誰がどのアカウントなのかサッパリ検討もつかない。友達も居ない、しかも一限からこんな電車に揺られて、しかも今日は敬老の日で祝日。こんな状態で新学期が始まって、モチベーションが下がらないのだろうか。


それが、まったく下がらないのである。私は勉強がわりと好きだ。特に、自分で選んだ科目しか取っていない、自分が好きな教科しかない最高の時間割。大学って、最高なのだ。さっき私は友達が居ないと書いたが、ネタにしているだけで実際に困ることはほとんどない。課題のわからないところは教授に聞けばいいし、なんなら休み時間に友達と談笑せずに済むのは有難い。高校の頃はそんなこと思ったことも無かったしむしろ話しすぎて授業の準備が終わらないような人間だったのだが、私は自分が知らなかっただけで人と話すと精神をすり減らすらしい。らしい、というのは最近気が付いたばかりなので実際自分のことである確信が持てていないのだ。だって、人付き合いって疲れるものでしょう、多分。でも、やっぱりたしかに人と会った日の翌日とそのまた翌日は家に引きこもって一人で居ないと精神が全回復しないし、極力遊びには赴きたくない。相手の好きなものの話や嫌いなものの話、昨日どんなことがあったのかとか彼氏の愚痴。それらすべて聞いて相槌を打ち、面白おかしく返さなきゃいけない。私は意外にそれが得意で、でもやっぱり全神経を使うから、疲れる。仕事の武器には出来るけれど、賃金も発生しないのにそれらをやるのはなかなか骨が折れる。そんな理由から休み時間イヤホンをつけてふらっと席を立っていると、みんな私のことなど忘れて談笑に勤しむ。大学って最高だ。良い意味で他人に干渉してこない。高校ならこれで私がどこか行こうものならすぐに引き止められて「一緒にご飯食べようよ~」(トイレでも可)等と言われ従わなければグループに属せず担任との面談が始まっていたはずだ。


先生は言う。
「クラスに友達はいるか?」
私は返す。
「要りません。」


多分そんな主張は理解されず(なまじ社交的な性格なばかりに余計に)心配される。
世の中には、私のように一人が好きな人間もいる。強がりでなく、本当に一人で生きる方が楽なのだ。移動教室も買い物も美術館も旅行も、すべて一人で楽しく過ごしているのだ。

さて、東京は恐ろしい場所である。油断して歩いているとすぐにTikTokを撮っている学生や自撮りをしている女子グループなどに出くわす。あれの背後に写ってしまえば最後、「え!ごめん写っちゃったんだけど載せていい!?」などと許可を取られ挙句の果てにじゃあ入り直して一緒に写ろうなどと言われてしまう。TikTokを撮っているのは大抵可愛くて優しい子達なので、みな私を見つけると話しかけてくれる。地元ではそんなことはなかった。まずTikTokを撮っている人が道端には居なかったし自撮りアカウントが見つかろうもんなら、次の日からクラス中に晒されるのがお決まりであった。嫌な訳では無い。でも、一人がいいのだ。


だから、私は武装をして望むのである。これは威嚇でもある。真っ赤なネイルとカラコンでギャルを装い、こそこそと教室の隅を歩いて移動する。グループには属さないで、一人で平穏な日々を過ごすぞ、という強い気持ちで。

さて、今日から新学期だ。

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