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ー同時通訳者の世界。最高峰のメンバーで描くアカデミー賞選出の注目作品ー映画『ウィスパリング』ー

世界各国の映画を鑑賞できる、ショート映画サブスクリプションSAMANSA。今回ご紹介するのはハンガリーで制作された作品のご紹介です。

その映画こそ『Susotázs(以下、ウィスパリング)』。
なんと70を超える国際映画祭で上映され、世界各国で30以上の賞を受賞、2019年の米アカデミー賞短編映画賞のショートリストに選出された実績ある映画です。

ウィスパリングとは、同時通訳者のことを言います。おそらく、多くの人にとってあまり注目したことがない仕事の一つではないでしょうか。

そう、ウィスパリングとはまさに『影の存在』と言われても過言ではない仕事。通常の通訳者とは違い、表に出ない黒子のような役割。

今回の映画は、そんなウィスパリングの仕事を通して描かれたロマンスコメディー。同時通訳者だからこそ描ける、新鮮で心をドキッとさせる展開。
ちょっぴり悲しくもほっこりする、柔らかい仕上がりになっているので、注目してみてください!

<作品名> ウィスパリング
<作品時間> 16分19秒
<監督> バルナバーシュ・トート
<あらすじ>
ハンガリー語の同時通訳者として働く2人の男、パルとアンドラーシュ。彼らは現在、プラハで開催される冷蔵庫メーカーの国際会議に参加していた。

会議が始まる前、会話をしながら準備をしている2人。そんな中、担当者から伝えられたのは、今回の通訳を利用しているのは 1 人だけであること。

そこでパルとアンドラーシュは、会議の通訳をしながら「この会場で誰が聞いているのかを当てる」ゲームを始める。そこで、判明した唯一通訳を聞いていた美しい女性。

2人は美しい女性を目の前に心を奪われていく・・・。そして、女性へ向けて驚くべき行動を始める。


◎ハンガリー最高峰の製作陣とキャスト

実は、今回は配信された『ウィスパリング』はハンガリーでも最高峰の製作陣で構成されています。日本ではあまり馴染みのない名前かもしれませんが、海外の大きな映画祭などでも大きな注目を集めているようです。

この作品を機会に、鑑賞の幅を広げてみてはいかがでしょうか!

【制作会社『Laokoon Filmgroup』】
『ウィスパリング』の制作を担当したLaokoon Filmgroupは、過去作でも世界的に注目されたハンガリー映画を制作しています。その代表作ともいえるのが『サウルの息子』です。

こちらは2015年に公開された映画で、その年のカンヌ国際映画祭グランプリ、アカデミー賞では国際長編映画賞に選出。ハンガリーで制作された映画が、世界的に注目を集めた年となりました。

【監督 バルナバーシュ・トート】
今回、監督を務めたのがバルナバーシュ・トート氏です。実はバルナバーシュ・トート氏が監督を務めた作品が、日本でも公開されたことがあります。

その作品が映画『この世界に残されて』です。第二次世界大戦後のハンガリーを描いたヒューマンドラマで、日本でも2020年に公開。苦しくも泣ける映画だと人々の間では話題を呼びました。

この映画を通してバルナバーシュ・トート氏は「自分自身が悲しみに打ちひしがれながらも、壊れかけたもう一つの魂を救うために、最後にもう一度立ち上がる人びとへの讃歌です」と印象的な言葉を残しています。

【女優 アンドレア・オズヴァルト】

さらに注目したいのが、物語のキーポイントとなっている美しい女性です。そんな心惹かれる女性を演じたのは、アンドレア・オズヴァルト。ハンガリー出身のハリウッド女優です。

代表作には、アクションテレビドラマシリーズとして世界的に愛されている『トランスポーターシリーズ』があります。

アンドレアは、シーズン2のカーラ役を演じました。これまでもファッションモデルや映画プロデューサーなど、多彩な才能を発揮してきたハリウッド女優さんですね。

◎監督、自ら経験した“悪夢”から生まれた物語

実は、今作が同時通訳者を舞台にしたのも、20年以上前に監督が1日だけ同時通訳者の仕事をしたことがきっかけだと語っています。

その感想は、なんと最悪・・・・。

当時、フランス語チャンネルを担当していたというバルナバーシュ・トート氏。実際に、通訳を聞いていたのはたった1人だけだったそう。

その時の記憶を、彼は「nightmare(悪夢)」と語り、自分が苦手だと認識をしたことで、1日でやめてしまったのだとか。

それでも短編映画脚本コンテストの募集を見つけ、苦い経験を生かすことに。最終的には、少額の予算を獲得してLaokoon Filmgroupと共同で製作することになりました。


◎同時通訳者という影の存在を映し出す


作品の中でも焦点に置かれているのが、同時通訳者の存在感。それは、シーンの描写やセリフにも思いが込められていることがわかります。

例えば、パルがマイクを通して女性を口説いているシーン。

「私は何時間も狭く、暗いブースの中で話しているだけ。会議の参加者でもなければ、このプログラムの一部でもない。私は隠された秘密のガーディアン(守護者)なんです。」

さらには映画の最後のシーンやエンドロールでも。

最後のシーンは、パルがたくさんの人の中で立ち尽くしている描写が描かれています。多くの人が行き交っているのに、彼に話しかける人は誰もいません。

それは、同時通訳者をするパルは『影』の存在だから。これが同時通訳者のリアルかもしれませんが、少し寂しさを感じさせられますね。

さらに、最後のエンドロール直前では『同時通訳者の重要性』を語りかけています。

「同時通訳はこの形式でしか行うことができず、少数の人にしか必要とされない。」

伝えたいのは、ウィスパリングは貴重で重要な存在だということではないでしょうか。

そもそも、リアルな会話を止めることなく瞬時に翻訳することは、とても高度な技術であることに間違いありません。そんな高度なスキルを持った人々のおかげで、様々なプログラムが成立していることをこの映画は教えてくれています。

まさに縁の下の力持ち。影の貢献者に焦点を当てた作品が、世界的に賞賛されるのも納得がいきますね。

<映画ライター/ shuya>

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