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「変わってないね」と、「変わったね」。


家庭内不和、一家離散の末。

身一つで家を出た私は、
20歳の時に同じ芸能事務所所属の女の人と ルームシェアを始めました。 

その後、私は取引先の方の薦めで事務所を出て独立し、長らくフリーランスとして芸能活動を行ってきました。

どこにも所属していない私が化粧品モデルのオーディションに実技審査で合格し、
TVCMの出演を果たした頃は、
家を出てから4年ほど経っていました。

放送を見てもらいたくて、
思いきって母親に報告しました。


「あんたは変わったね」


招かれた自宅で、母親にそう言われました。


もともと、二面性のある母娘。
歯車が合うときは密接に仲良く、合わなくなると途端に疎遠になりますが、

この出来事を機に、お互い適度な距離感で、
再びやりとりをすることができるようになりました。

そのため私は、
「変わったね」という言葉は褒め言葉だと捉えています。



ですが。


同窓会や冠婚葬祭など、
久しぶりに誰かと会う場でよく聞くのが、

「変わってないね」

という言葉。


私の知人で、何事にも挑戦し、前向きに頑張っておられる方がいました。

その方は同窓会の時にこれを聞き、
「人は変化してこそなのに!」とショックを受けられていました。


確かに、前述の「変わったね」とは真逆ですし、私も当時その方に激しく同意していました。



でも、その「変わってないね」が、


「安心したよ、本当は緊張してたんだ」


の言い換えだとしたなら。




何年もの時を経て、

長らく会ってない知人や親戚に挨拶を交わす時の、何とも言えない緊張感。


「きっと、覚えてなんかないだろうな」


それでもいざ会えば、年齢を等しく重ねた相手に垣間見える、あの頃と変わらない面影。

それはまるで、学生時代にタイムスリップしたような感覚。

そこで発せられる言葉が、
「なんだよ〇〇!変わってないなー!」
なのだとしたら。


単純に、変わってしまうことを恐れているのではなく、



あの頃みたいに話せるかな。

どんな空気感で喋ってたっけ。

皆家庭があったり夢を追いかけていたり。

会話が噛み合わなくて愛想笑いされるかな。



たくさんの不安から出る言葉なのだとしたら。



私は、「あぁ、変わってなくて良かったな」と、
今は深く思うことが出来るのです。


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