「金平糖の涙」
「金平糖の涙」 園田汐
あらあら、ユウくん今日もお疲れだ。
本当だねえ。
特にここ最近は色々あったしね。
何があったの?
友達が死のうとしたり、仕事で心が追い詰められたり、まあ、人間らしい色々があったのさ。
ふーん。じゃあ早く迎えに行ってあげたら?担当でしょ?
んー、そうなんだけどさぁ。
天使がふたり、ふかふかの雲のソファに腰掛けながら、虹のスクリーンに映し出された下界を眺めています。
にしてもさ、虹に下界が映し出せるようになって、めちゃくちゃ楽になったよね。
え、わかる。前までは下まで行かなきゃ、担当の子のこと見られなかったもんね。
これができたおかげで下に降りる頻度すごく減ったよね。
天使たちにはそれぞれ担当の人間がいます。もちろん人間は多すぎるので、みんながみんな担当の天使がついているわけではありません。神様が適当に選んで天使たちを割り振るのです。天使たちは担当の人間を見守り、時折り手伝ってあげます。何を手伝うかって?色々です。何をすべきかをコソッと夢で教えてあげたり、一緒にいたら幸せになれる子に対して恋をさせてあげたり、迎えに行ってあげたり、です。
天使が担当についている人間は、最後は天使に迎えられてこちら側で人間から天使に変わります。
キミの担当は最近どうなのさ。
ぼちぼちかな。あの子は別に助けなくとも好きにやれる子だし、ボクが手伝うのは最後だけで大丈夫だと思う。
手のかからない担当で羨ましいこった。
でも、いいじゃん。手のかかる子ほど見てて楽しいじゃん?
まあ、それはそうなんだけどさ。
それに、ユウくんってアレだろ?泣けない子だろう?アタリじゃないか。彼の涙、どんな味なの?ボクにも食べさせてよ、
そだね。そこは確実にアタリだね。彼の涙はね、一級品だよ。本当に美味しい。
泣けない人間が苦しんで苦しんで、それでも泣けなくて、心の内側に涙を落とすと、その涙は天使の瞳から金平糖になって出てきます。それを天使が食べると、天使たちはふわふわで気持ち良くなって楽しくなってしまうのです。だから、泣けない人間が担当になった天使はみんなから羨ましがられるのです。
もしかしたら、このあと出るかもね。
え、ほんと?
うん。この頃出てなかったし、そろそろかなり溜まっちゃってると思う。
じゃあボクも待ってていい?
いいよ。出たら一緒に食べようか。
あ、ねえ、一緒に食べてさ、セックスしようよ。
それいいね。あ、見て。ほら、苦しそうでしょう?悩んでるんだよ。死のうとした友達にかけた言葉が正しかったのかとか、自分には本当は夢を叶えるための才能がないんじゃないかとか、勢いで仕事を辞めちゃったけどこれからどうしようとか、いろんな感情でぐちゃぐちゃになってるよ。これはそろそろ出るかもしれないね。
わー、楽しみだな。あんなにぐちゃぐちゃなの久しぶりに見たや。これは期待できそうだね。
あ、きた。出た出た。まって、しかもめちゃくちゃ出た。
おー、これは綺麗な金平糖が大量だ。
ね、透き通ってる。良質な金平糖の証だよ。この質で、この量はかなり凄いね。どうせなら全部二人で食べてぶっ飛んじゃおうか。
いいの?最高だね。
ふたりの天使は綺麗な綺麗な金平糖をいっぺんに何粒も口に放り込んで噛み砕きます。
この先はちょっと過激すぎて見せられません。狂ったようにセックスしてる天使なんて知りたくないでしょう?
了
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