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圧倒的に、音圧が足りない。

「圧倒的に、音圧が足りない。」

いきものがかりの楽曲"WE DO"を聴いて、そう思った。



突然だが、僕はOfficial髭男dismのファンである。元々、僕の地元・鳥取でちょっとだけ名の知れた若手バンドだったのだが、有名タイアップも付いたかの有名な"Pretender"で彼らに初めて興味を持った。そこからズルズルと沼にハマッていった。まあ、言ってしまえばニワカファンというやつである。

それまでの僕は、BUMP OF CHICKEN、いきものがかり、Mr.Children、スピッツなどを主に聴いていた。言い方は悪くなるが、いずれも「ちょっと前の人たち」だ。決して、今はもう盛りが過ぎていると言いたいわけではない。あくまで、全盛期はいつかと考えるとちょっと前の時期だったかもなぁ、ということである。完璧な主観だ。

そんな僕が、初めて好きになったイケイケの若手バンドこそ、Official髭男dismだった。今の流行りに乗り、今のトレンドを押さえ、今の若者に響く曲を作る人たちに初めて興味をそそられた。
実際に、それまでの僕は、先程の「ちょっと前の人たち」を傾聴し、ここ数年で流行っているハイトーンなバンドを嫌っていた。男のくせに女性みたいな音域で女性みたいな歌歌ってんじゃねーよ、と勝手に蔑んでいた。がしかし、ヒゲダンを好きになってからは世界が一変した。Mrs. GREEN APPLEやsumikaをはじめ、色んなバンドを聴くようになった。

では、ここまで若者バンドが嫌いだった僕が、なぜ突如としてヒゲダンにハマったのか。
もちろん、同郷というのも理由のひとつである。ボーカル藤原聡とドラム松浦匡希は、まさに僕の産まれ育った鳥取県米子市出身である。親近感が湧かないはずがない。
ただそれよりも彼らに惹かれた大きな理由がある。ズバリ「音圧」だ。

Official髭男dismの曲は、とにかく音圧がすごい。藤原聡の繊細な歌声とピアノの旋律が絡み合うバラードでは、ひとつひとつのメロディーがものすごくハッキリと刻み込まれ、トランペットやパーカッションが入り交じるロックチューンでは、バスドラム、ベース音を中心にズサズサと低音が耳に圧をかけてくる。こんな体験は初めてだった。"Pretender"のサビを初めてイヤフォンで聴いたときのあの衝撃は、あの「音圧」は未だに忘れない。

そんな中でも特に、"FIRE GROUND"という楽曲、これの音の圧は凄い。4人の演奏にEDMが合わさり生まれるグルーヴは、まさにFIREのごとく大きくなっていく。その熱気と眩しさに自然と体が動き出す。今まで出会った音楽では体験し得なかった感覚だった。
彼らはただただ「若者の間でバズってるだけ」と決めつけてはいけない。そう確信させた若さと技術と自信に満ち溢れた楽曲だ。



そんな"FIRE GROUND"や"Pretender"の収録されたOfficial髭男dismの新アルバム"Traveler"を一通り聴き終え、何度もリピートして全曲の歌詞を覚え始めようとしていた、アルバム発売2か月後。あのアーティストの新アルバムが発売された。

いきものがかりの"WE DO"。彼女らの、実に5年ぶりのオリジナルアルバムだ。


いきものがかりの世間的なイメージといえば、"SAKURA"、"YELL"、"ありがとう"、"風が吹いている"といった王道バラードに、CMやドラマ、アニメのタイアップとして使われがちな爽やかポップソングをウリとする、健全で角のない優等生アーティスト。といったところだろう。

そんないきものがかりが、約2年の活動休止期間を挟み、満を持してリリースしたアルバム"WE DO"の表題曲"WE DO"は、いきものがかりのイメージとは180°異なるものだった。
歪んだエレキギターの音が響き、重々しくも爽快感のある曲調。ボーカル吉岡聖恵の真っ直ぐな声から発せられる"さあ世界さん新しくなりましょう"という強気なメッセージ。約2年のブランクを意地でも跳ね除けてやろうという気概をひしひしと感じるアルバム一曲目だった。


いきものがかりファンの僕としては、"WE DO"はかなりエキサイティングな曲で、ライブ映えもしそうで聴いていて満足感しかないのだが、ふと"WE DO"がOfficial髭男dismの"FIRE GROUND"に似ているのではないかと思った。

この2曲が似ているか似ていないかは人それぞれ違う答えが出そうだが、僕から言わせてみれば酷似はしていないと思う。ただ、何となく同じ雰囲気を感じたというだけだ。
そこで僕は、何の躊躇いもなく、興味本位で"WE DO"と"FIRE GROUND"を聴き比べてみることにした。

"FIRE GROUND"を聴いたのち"WE DO"を聴いて、思った事。

圧倒的に、音圧が足りない。


第一に、同じボリュームで聴いているはずなのに、音量調節していないのに、"FIRE GROUND"より"WE DO"のが完全に音が小さかった。
同じギターと、ベースと、ドラムと、ボーカルの声があって、それで曲調も両曲ともアッパーで、でも"WE DO"の方が細々しく、迫力がなかった。細かな楽器の違いはあるだろうが、どこか力を感じなかった。

いきものがかり随一のロックソングが、霞んで見えた気がした。これが、ストリーミングチャートで記録を打ち立て続けるバンドと、結成20周年を迎えたベテランとの差かと考えると、いきものがかりのファンとして、少し残念な気持ちになった。


いきものがかりとOfficial髭男dism。同じ邦楽界で生きているとはいえ、得意とする音楽ジャンル、積み上げてきた実績、ファン層までも全然違う。こうやって横一線で比較して、どうこう述べるのは見当違いなのかもしれない。
でも、こうやって同じ時代に、同じ2019年に発表された曲として、音圧で負けてほしくないと思う。僕の中での「音圧」とは、ただ単に音の周波数の大きさのことを指すものではない。人々の心に印象付け、心に訴えかけ、音楽としてメッセージや思いを届ける力だと思っている。
例えるなら、鮮やかな花を咲かす打ち上げ花火があるとして、間近で見ても、かなり遠くから見ても同じ形の綺麗な花火を目視することが出来る。ただ、より近くにいた方が、花火の音をモロに受けることになる。ただ美しい情景を生み出すだけでなく、その後に胸にズシンと響き渡るような衝撃を喰らう。その衝撃が来ることで、「今、とても近い距離で目の当たりにしているんだ」と実感できる。そんな「間近の花火」をお茶の間に見せつけたOfficial髭男dismこそが、今こうやって爆発的な人気を誇示しているのではないか。


このまま何事もなければ、4月に僕は初めていきものがかりのライブに参加する。更に6月には初めてOfficial髭男dismのライブに参加する。
ライブは、CDの音源を何回も聴いただけでは知り得ない、いきものがかりとOfficial髭男dismの本当の「音圧」を体感できる場だと考えている。本人を目の前にして感じる圧は、ただスピーカーやイヤホンから流れ出てくる音とは全く性質も大きさもちがうだろう。

Official髭男dismが見せてくれた「音圧」は果たして本物か、はたまたいきものがかりの「音圧」はCDとは桁違いに凄いのか。そして彼らの、彼女らの今後の「音圧」はどう変化していくのだろうか。
また柄にもなく、比べてしまうのだと思う。




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