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東西を引き裂く冷戦の象徴

第二次世界大戦後、敗戦国となったドイツは西ドイツとドイツ民主共和国(東ドイツ)に分裂。1961年から1989年までベルリン市内には東西を分断する壁が存在した。

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ドイツ民主共和国(以下、東ドイツ)はソ連、ドイツ連邦共和国(以下、西ドイツ)はアメリカ・イギリス・フランスによる連合国軍がそれぞれ統治をおこなった。徐々に豊かになっていく西ドイツに対し、社会主義の独裁的政治などにより東ドイツは発展が進まず、それぞれの格差は開くばかりであった。自由で豊かな西側を目指し、毎日2000人程度の国民が東側を去っていったとされる。これは1949年に東ドイツが建国されてから長く続き、全体では約200万人にものぼったと言われる。
東ドイツ政府高官は、国民が国を去るようでは社会主義国家は作れないと考え、強制的に逃げられないようにするために国境を封鎖、そして鉄条網が引かれその境界全てが監視されるようになった。これは「鉄のカーテン」と呼ばれるものであったが、それでも危険を冒して亡命をおこなう人々が絶えなかった。その様な亡命者対策のため、155kmにもおよぶコンクリート製のベルリンの壁が作られた。

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1989年のベルリンの壁崩壊によって、そのほとんどは撤去されているが、シュプレー川沿いに一部ベルリンの壁を利用したイーストサイド・ギャラリーがある。ここではベルリンの壁に国内外のアーティストによって様々な絵画が描かれており、自由や平和へのメッセージが表されている。ここへは鉄道を利用してオストバーンホーフ(ベルリン東)駅から徒歩で向かった。

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壁に沿って流れるシュプレー川。この川を泳いで逃亡をはかった者もいたのだという。

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1961年に作られたベルリンの壁、その壁が崩壊してからの年月が壁のあった年を超えた。3mほどの高く頑丈な壁は人々にとって絶望の象徴であったのではないだろうか。

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ベルリンの壁で最も有名なペイント「兄弟のキス(Bruderkuss)」。ソ連 第5代最高指導者「レオニード・ブレジネフ」と東ドイツ 第3代国家評議会議長「エーリッヒ・ホーネッカー」が描かれている。

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1979年東ドイツ建国30周年行事の際に交わされた挨拶としてのキス(ブレジネフが挨拶として使用したと言われる)のシーンを撮影したものをもとに描かれている。

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ベルリンの壁の内側の様子。ここはかつては「死のエリア」であった。

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壁は東側の国民を外(西側)へ出さないために、西ベルリンを取り囲む形で作られた。国民を隔離するための恐ろしくも恥ずかしいものであった。


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壁の空白地帯は現在ではレストランやお店が並び、観光地となっている。ベルリンの定番料理「カリーヴルスト」。

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東側の中心地アレキサンダープラッツ。近代的なテレビ塔が目を引く。

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かつて壁が存在したエリア。鉄の棒を利用したモニュメントが立ち並ぶ。

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壁が存在した場所を示す鉄のラインが地面に引かれ、そこが引き裂かれた地点であったとかろうじてわかる。

壁が存在した時代、約5,000人の人々が決死の覚悟で気球、綱渡り、地下トンネルなどさまざまな方法で東ベルリンから西ベルリンへの脱出を成功させたとされる。ベルリンの壁があった28年の間に、地下トンネルから西ドイツに脱出できたのはわずか300人程であった。

西ベルリンの大学生たちは放棄されたパン店の地下から東ベルリンに向かって5ヶ月・145m程のトンネルを掘り進め逃亡を図った。そして「トーキョー」を合言葉に1964年10月3日に28人、4日に29人が西ベルリンへ脱出。男性23人、女性31人、子ども3人。これはベルリンの壁の歴史上最大のトンネル脱出とされている。

1964年10月10日、東京オリンピック(第18回夏季大会)開会式。それはトンネルを抜けた先にある未来の希望を象徴するものであったのではないだろうか。現在その穴が掘られた場所(通称「トンネル57」)には記念碑が埋め込まれている。

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ベルリンの中心部にはいくつものマーケット。ビンテージショップが出店。人々で賑わっている。

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ドイツといえば「ビール」そのジョッキが多数並ぶ。

ベルリンには壁のほか、第二次世界大戦中のホロコースト(大量虐殺)を祈念するモニュメント、ナチスドイツ・ヒトラーが潜み、そして自殺を図った地下壕など、暗い歴史の遺産が多く存在している。それらのモニュメントを記録することを試みている。

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