見出し画像

クラシックコンサート - 拍手をするタイミング -

みなさまごきげんよう。

きょうも溶けそうな陽気でしたね!
「はやく人間になりたい」と思いながら、溶けたまま日中を過ごしました。

さてさて、私は人気YouTuberのお一人、ヤマカイさんとその彼女のネレアさんが好きで、ときどき動画を拝見しているのですが、昨日、コンサートでの服装についてちょっと書いてからYouTubeを見ておりましたら、こちらがアップされているのに気づきました。

こちらの動画には彼らのファンの方々からたくさんのコメントが寄せられていたのですが、「お二人が好きなので舞台を観に行きたいけれど、バレエ鑑賞のドレスコードが分からないので不安」という趣旨のものもいくつかありました。

コメントをお寄せになっているファンの方に、別のファンの方が丁寧にお答えになっていたので、きっとみなさまドレスコードの不安なく、バレエ鑑賞にお出かけになり、待ちわびた彼らを直接目に焼き付けることができるでしょう。楽しみですね。私もチャンスがあれば横須賀公演を拝見したいなと思っております。

何ごとも初めては緊張しますよね。
おとなになればなるほど、不安にもなります。

昨日はクラシックコンサートなどへお出かけの際のお洋服について触れましたが、次にコンサート初心者の方からよくおっしゃる不安ポイントは

「拍手のタイミングがわからない」

というものです。

わかります、わかります。

私も一度だけですが、うっかり勘違いして楽章の間で拍手したことがあります。あの時は恥ずかしかった(笑)。

クラシックの楽曲は、1曲が途方もなく長いことが多々ある、というのがひとつの難点だと思います。
オーケストラなどの器楽だけの楽曲でも概ね1楽章~4楽章ぐらいまでありますし、宗教曲(キリスト教を題材にした声楽曲)ならばそうですね、みなさまにもなじみのある「ハレルヤコーラス」が収められているヘンデルさんが作曲された「メサイア」なんて、メサイアという一つの曲が3つのパートから成り、さらにはその3つがさまざまな曲から構成されていて、なんだかんだで54曲もあるのですから。そりゃ演奏も「メサイア」を一曲演奏するのに最低2時間かかるはずです。

メサイア

しかも、楽章や楽曲によってはあたかもそこで音楽がいったん終わったかのように感じるものも多々あります。

予めその曲がどういう曲なのか、知識がある方は別として、まったく初めての方が楽章と楽章の合間にうっかり拍手をしてしまいそうになるのも頷けます。

コンサート(演奏会)形式の場合

そんなお困りを解決する最大の方策は「指揮者を見ておく」ということです。
オーケストラなどの演奏には指揮者の存在が必要不可欠。
その指揮者がタクト(指揮棒)を下ろし、くるりと客席の方を向くまでとりあえず拍手を我慢してみると間違いありません。

ものすごくいい演奏で、ものすごく感動して、音が止まった瞬間に拍手を贈りたくなる衝動に駆られることもあるかもしれませんが、「フライングブラボー」や「フライング拍手」は好まれません。
なぜなら曲が終わっても、その発せられていた音の最後の響きの余韻を心から噛み締め味わいたいと望む奏者と聴衆が多いからです。特にコンサートホールへお出かけになるとCDなどの録音では味わえない、響きのさいごのきらめきの余韻が体感できると思いますので、ぜひホールへ足を運んでいただきたいのです。
そうして余韻に浸りたいと思っているのに、音が途切れ瞬間にブラボーと叫ぶ殿方がいたり、爆音のような拍手を響かせる方がいらっしゃると興ざめしてしまいます。
余韻を楽しむとき、概ね指揮者のタクトはまだ宙にいます。
そして、響きのさいごのきらめきが空間に溶け込んでふっと消えるのを確認して、指揮者はタクトを下ろします。

ここで客席にいる私たちも堰を切ったように感動を伝えるべく、万感の拍手を送り、ブラボーと叫ぶのです。

楽章と楽章の間にも指揮者はタクトを下ろし、やおら譜面台の楽譜のページをめくり(だいたいの指揮者は本番までに曲を暗譜されているので、演奏中は譜面をめくっていないことが多かったりします)、汗を拭くというケースがありますが、これは「次の楽章への準備タイム」です。楽章と楽章の間では基本的に拍手は行いませんので、指揮者が客席を振り返るまでは固唾をのんでただただ見守りましょう。
ちなみにこの「次の楽章への準備タイム」が妙に長いな...と感じるときは、客席では遅れて来たお客様を係りの方がお席へご案内していることが多いです。指揮者にはその特殊技能として背中にも目があるので、お客様がみな着席されるのを見届けてから次の楽曲の演奏を始めます。
うそです。
指揮者の背中に目があるのではなく、コンサートマスターをはじめとする、壇上で客席の様子を見ることができるメンバーと目配せで合図をしあっています(笑)。

演奏会へ行ってみたら、指揮者がいなかった!
ということもあります。
「室内楽」と呼ばれるもので、楽器の数も奏者の数も限定的で、指揮者が必要ないタイプのものになりますが、この時、指揮者の役割も兼ねるのがコンサートマスター(男性)またはコンサートミストレス(女性)。
基本的にヴァイオリンのトップがこの役目を担います。
客席から見ていると舞台に向かって左端で一番客席に近いところにいるヴァイオリニストがそれです。いうなれば座長です。
この場合は彼ないし彼女の愛器であるヴァイオリンに注目しましょう。

楽章と楽章の間でちょっと一息つくとき、弓を持った右手が体側にあることは多々ありますが、楽器を持った左手まで下ろすことはあまりありません。
そのまま構えていたり、場合によっては楽章間にチューニングを行ったりします。こんな時は拍手はせずに次の曲が始まるのをワクワクしながら待ちます。

最後の最後、曲が終わって奏者が楽器を下ろすときには頬には笑みが浮かんでいますので、その素敵な微笑みをみたら思う存分拍手を贈ってあげてください。

オペラやバレエ、ミュージカルの場合

オペラやバレエという舞台鑑賞の場合、オーケストラはいわゆる「オーケスラピット」に入ってしまっていて、見えるものといえば指揮者の頭と時々振り上げるタクトぐらいのものです。なので、指揮者やコンサートマスター/コンサートミストレスを見つめる、というのはまったく役に立ちません。
そもそも、見えない場合がほとんどです。

では、いつ拍手をするの?!

ということなのですが、いわゆる主役級の方が最初に登場した時にまず拍手をすることが多いです。
次に見せ場を持つ人がソロで演じたり歌ったりした時です。
ただ、この場合は舞台の途中であるので、ひとしきり拍手をしたらまた静かに鑑賞の姿勢へ戻ります。あまり長々と拍手し続けたり、ぶらぼーだ、ぶらーばだと叫んでいると物語の進行の邪魔になります。そこはどれほど感動しようとも節度を持つのも大事なことです。
まれに物語の途中なのにソロが素晴らし過ぎて拍手が鳴りやまず、ふたたび物語を進行させることが難しい状況になった時、演者のみなさまが困ったように笑っているのをお見掛けします。演奏する側も、聴く側も、心地よく同じ空間を共有するには一定の節度は大事です。
最後は幕が下りたり、幕がなかった場合も演者がしばらく身動きしなくなったりしますので、「これって、物語の最後なの?!」という疑問符が出ることは滅多にないかと思います。
そうしたらもうご自身の感動をそのままに拍手するなり、ブラボーと声の限りに叫ぶなりしていただいたら良いかと思います。
あ、今はCOVID-19の影響で叫ぶのは控えた方がいいですね、例えマスクを着用していたとしても。
その分、手がしびれるほどの拍手を贈り、心の中でブラボーと叫びましょう。

はやく心おきなくブラボー/ブラービ/ブラーバと叫べる日が来て欲しいですね。

因みにブラボー(ブラーボ)とはイタリア語なのですが、イタリア語はご存知の通り語尾が男性と女性、複数などで分かれます。
Bravoは男性ソリストへ
Bravaは女性ソリストへ
Braviは複数(演者全員)へ
使い分けられたらちょっとツウっぽいですが、日本で使い分けて叫んでいる人をまだ聞いたことがありません(笑)。

いろいろ書きましたが、一番大事なことは

演奏を気軽にたのしむこと!
そして、感動したならばその心を遠慮することなく拍手などで表現すること!


以上でございます。


いただいたサポートはより分かり易く、お子さまにも楽しんでいただけるような教材づくりに役立たせていただきます。