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#22 ヨーロッパ研修記 〜現地での暮らしとトラブル、そしてお金の話〜


 帰国してからというものの、お世話になった方々や今後ヨーロッパへの勉強や研修を検討している方から、「どうやって生活していたのか?」と聞かれることもあり、せっかくであれば今後、行かれる方の役にも立てればと思い、書いてみることにします。

  • どうやってアポを取っていのか?

  • どうやって移動していたのか?

  • どうやって生活(滞在や食事)していたのか?

  • いくら掛かったのか?

 おおむね聞かれることはこの辺りで、正直に言えば「こうしておけば良かった」といった反省もあるので、誰かの参考になれば幸いです。

前提となる考え方・スタンス

 今回のヨーロッパ研修は、特定のお酒だけを学習するというよりも、ビールやワイン、シードルといった醸造酒から、ジンをはじめとした蒸留酒まで幅広く学ぶつもりで今回の研修を設計していました。

 また「現在のヨーロッパのリアルを学ぶこと」を最重要項目としていたため、あえて事前の調査をし過ぎることなく、計画を立てています。現地で自分が体感し、本当におもしろいと思ったお酒、また日本に届いていない最新の状況や情報を見たかったので、柔軟にプランしていくというのが基本的なスタンスです。(平たく言えば、どうせ自分の興味が変化すると思っていたので、ガチガチに決めていない。)

 また、これは精神論的な姿勢の話になりますが、「誰かに甘えない」ということを大切にしていました。お勧めのバーやつくり手の相談をさせていただき、快く教えてくださった方々がいらっしゃいます。しかし、たとえば「つくり手へのアポ取りのお願い」などは絶対にしないと決めていました。

 精神論的と言ったのは、自分の覚悟を自分自身で問うということ。また先人たちが苦労して築いて来られた、つくり手との関係性を自分が都合よく利用するようなことをしたくなかったためです。(唯一Dok Brewingは、訪問のタイミングでやりとりをしていたDIG THE LINEの本間さんのご厚意でお繋ぎいただきました。改めてありがとうございました。)

 人それぞれに考え方やスタンスがあり、それに良し悪しもないと思っていますが、何が言いたいかというと、結果的に、時間・コスト・工数などの観点から非常に効率の悪い研修になっているということです。
 間違いなくもっと上手に予定を組むこともできるので、あくまで一例としてお読みいただけたら幸いです。


ヨーロッパ研修の基本情報
期間:2023年10月18日〜11月24日
訪問国:オランダ(6日)→ベルギー(11日)→ドイツ(4日)→フランス(2日)→イタリア(15日)
費用:約100万(詳細は最後のまとめにて)


①訪問・アポについて

Lambiek FabriekのJozefさんとJoさん
PomeskのJoroenさん
Stafano Occhettiさんと彼のワイン畑にて
大好きになったPacinaのGiovannaさんとStefanoさん

 基本的には現地のバーやボトルショップを訪ね、実際に自分で飲んだり、スタッフと会話の中で興味を持ったつくり手におじゃまさせていただくことを繰り返していた。またビールなり、ワインなり現地のフェスティバルやイベントでは日本では聞いたこともないようなつくり手が出店している(例えばベルギーであればBXLを見てみると分かりやすいと思う)。
 それらを事前にWebサイトで調査し、インプットしていた。日本でも一定は調査をしつつも、リアルな情報は現地で得るという具合だ。

ブリュッセルのボトルショップMalt Attacks
ブリュッセルのビアバーMooder Lambic Original
同じくMooder Lambic Originalのランビックのセラー

 たとえばアムステルダムで最初に訪れたOkidokiは、日本では聞いたことがなかったが、今年のBLXや去年のWild Festival Groningenにも出展していてヨーロッパでも注目されているつくり手であることが窺い知れたため、事前に連絡をして訪問の約束をさせてもらった。
 またNIGHTSHOPというブリュッセルの人気レストランで飲んだPomeskというサイダーは日本では全く情報がなく、現地でもほぼ見かけることがなかったが、その味わいに感動し、連絡を取って訪問をさせていただいた。またStefano OcchettiのワインはミラノのワインバーVino al vinoで感動して、連絡をし、おじゃまをすることが出来た。
 現地で評価されているレストランやバー、ボトルショップには、最先端のトレンドや情報、そして人が集まっている。つくり手やトレンドなどの最新情報をキャッチアップするにはもっとも良い方法だと思う。

ブリュッセルのレストランNIGHTSHOP
ミラノのワインバーVino al Vino
L'Ermitageで夜な夜な飲んでいたらCantillonのBertoさんに出会う
Bertoさんに出会ったおかげで翌日のL'Ermitageの周年パーティに参加することができた。酒場での出会いは貴重。
Napolliでイタリアのワイルドシーンを教えてくれたIl Birraiuoloのスタッフたち
スケジュールと訪問リスト(一部抜粋)

 連絡の手段というと、Webサイトから連絡することもあったがInstagram経由でのやりとりが結果として多かった。まさか自分もこんな身近なSNSで訪問の約束をお願いできるとは思っても見なかったが、小さなつくり手だと自身でSNSを使いこなしていることもあり、彼らにとっても使い勝手が良かったのかもしれない。

 また日本へも輸出しているつくり手の中には、ブルワリーツアーを開催しているところも少なくない。たとえばCantillonは毎日ツアーを開催しているし、3 fonteinenデュポンも月数回はブルワリーツアーを開催しており、それを利用しておじゃましたつくり手もいくつかある。

Cantillonでは日本語に翻訳された醸造所やランビックに関する資料がもらえる。

 興味のあるつくり手がブルワリーツアーを開催していれば、それを利用するのが良いと思うが、現地で知ったマイクロなつくり手においては、開催していないところも多く、直接ご連絡をして訪問の約束をさせてもらった。

 ただ、これは突然の連絡や訪問を受け入れてくださったつくり手の方々のご厚意以外の何物でもありません。改めて最大級の感謝と御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

②移動について

10月から11月のオランダ・ベルギーはずっと雨が降っていてとても堪える
誰一人歩いていない田舎道を延々と歩いた

 こういった形ゆえつくり手への訪問が決まり、訪れる都市が決まってから、移動手段を確保する、もちろん宿泊先も。
 今回利用した移動手段は、飛行機・鉄道・長距離バスの大きく3つ。

 例えばブリュッセル〜ミュンヘン間、パリ〜ミラノ間の移動は電車だと、どれだけ早くても7時間は掛かる。時間的にも体力的にも、相当な負担がかかるため、超長距離の場合は飛行機で移動していた。

 パリ〜ミラノ間はeasyjetというヨーロッパのLCCを利用したが、金額的にも€99(当時レートで約16,000円)程度と比較的、安価で便数も多いため、非常に利用しやすいと思う。仮にこの移動を飛行機ではなく、鉄道で移動した場合、約35,000円かかる。飛行機で行くよりも、何倍もの時間がかかる上、コストも倍以上だ。

 LCCが飛んでいる都市であれば、時間的にも金銭的にもLCC一択。ヨーロッパ内のLCCにあまり良い評判を聞いていなかったが、気持ちの良いサービスを求めず、ただの移動と割り切ればLCCで十分だと思う。

ドイツのフラッグシップであるLufthansaにはAMEX
格安エアラインであるeasyjetには見たこともないロゴ。なお車体も車内も古い。

 鉄道も何度か乗った。なお、ここでいう鉄道とは、電車や地下鉄ではなく、都市間を移動する新幹線や特急を指す。例えばアムステルダム〜ブリュッセル間、ミラノ〜トリノ間など。

 新幹線と言ったものの、多くの車両はボロボロで、車内もお世辞にも綺麗とは言えない。トイレはずっと閉まっていたりする。もちろん車内販売のようなものはない。Wifiが繋がるのが唯一の共通点といったところか。
 また頻繁に遅延はするし、挙句の果てには電車そのものがキャンセルされたこともあった。個人的には、もっともコスパのわるい移動手段だったと思う。ちなみにヨーロッパの鉄道には大体ファーストクラスとセカンドクラスがあるが、上記はもちろんセカンドクラスの話。

Firenzeからの乗る予定だった列車もCANCELLATO(キャンセル)に

 そんなこともあって、研修の後半の長距離移動は、もっぱらバスを使っていた。
 ヨーロッパ内にはFlixbusという長距離バスがあちこち走っている。さまざまな面で日本の長距離バスと同じような感じで、飛行機や鉄道と比べても非常に安価。また鉄道とほとんど時間が変わらないケースも多く、次回ヨーロッパを訪れる際には、より積極的に利用したい手段。
 ちなみにFlixbusは、席が空いていればWebやアプリから直前でも予約できるため、その点でも利便性は高い。なお基本的にローカルの人たちの交通手段のようで、日本人はおろかアジア人すら見かけることはなかった。

SiennaからRomeへ
Flixbusの乗り場(Rome)

 余談だが、今回の研修は季節の変わり目である10月中旬から11月下旬、さらに、北はオランダ・アムステルダムから南はイタリア・ナポリと非常に気温差も大きな移動になった。
 ゆえに冬物の衣服を持たなければならず、結果的に荷物が重たくなり、体力的にも金銭的にも負荷が大きかった。(LCCや長距離バスは荷物の大きさや重量で追加料金が発生する。)
 本来、衣服は最小限にして、お酒をもっと持って帰りたかった。今後、訪れる際にはよりコンパクトに滞在できる季節を検討したいと思う。

帰りは重量制限の25kgギリギリだった
参考:大きな都市であれば街中の移動は大体LIME(日本でいうLOOP)があるので便利

③ホテル・食事について

  今回のヨーロッパ滞在中に、ユーロ円の為替が一時164円になるような歴史的な円安期だった。またヨーロッパはここ数年で物価高が急激に進んでいて、コロナ前に訪れた時と比べて、ホテルや食事は驚くほど高くなっていた。

右肩上がりで進行する円安を見て、日々ドキドキしていた。

 例えばブリュッセルの街中のレストランでビールを2杯飲んで、軽く食事をしたら€40(約6,000円)はかかる。もちろん高級店ではなく、比較的カジュアルなレストランで。今回は約1ヶ月半という長い期間の滞在ということもあり、抑えるところはしっかり抑えるというスタンスでいた。

Orval2杯と軽い食事で€40

 現地での滞在は、基本的にAir BnBでキッチン付きの部屋を借り、自炊中心の生活。物価高のヨーロッパでもスーパーでは比較的安く食材が手に入るため、非常に助かった。ちなみに日本から、だしの素や鶏がらスープの素、醤油などを持っていったのだが、現地でもアジアや日本の食材を扱うスーパーはあるのでうまく利用すれば、手頃に食事を取ることができると思う。またソーセージやチーズの種類が多いのはヨーロッパならではで、見ているだけでもとても楽しい。

約一週間滞在したブリュッセルのAir BnB
納豆も買おうと思えば購入できる(約600円)

 ホテルはどれだけ安くても一泊10,000円ほどかかるため、学生の時以来のドミトリーにも何度か宿泊した。ちなみに今回訪れた都市の中でも最も物価の高かったアムステルダムではドミトリーですら、一泊8,000円ほど。
 宿の予約は当日に予約するケースも何度かあったが、Booking.comとAir BnBの二つのサービスがあれば全く問題なかった。

 ただしイタリアでは食事がとても美味しく、自炊は控えめにして、積極的に現地の食事を楽しんだ。イタリアはその美味しさだけなく、ホテルやレストランの物価も、他の都市に比べると比較的落ち着いていて、非常に滞在しやすい国だった。

 なお多くの都市に滞在したが、身の危険を感じるような都市はほとんどなかったが、ブリュッセルだけは怖かった。僕自身も後ほど知ったが、滞在していたブリュッセル南駅付近は犯罪も多いエリア(参考:【注意喚起】ブリュッセル南駅付近の治安の悪化)で、夜21時を過ぎると人はほとんど出歩いていない。僕はそのことを知らずに当初夜中まで飲み歩いていたが、バーで出会ったローカルに絶対に止めろと強く注意されたくらいで、ローカルの人たちですら出歩かないエリアだった。

Mooder lambicの帰りに歩く夜道。酔っ払っているが本当に人がおらず怖かった。
朝ラン中に人間が横たわっていた。本当にドキッとしたのは言うまでもない。

④発生したトラブル

 1ヶ月半もいればいくつかのトラブルも発生するが、最も大きなトラブルの一つがクレジットカードの停止だった。原因はカード会社側が不正利用を検知したということで緊急停止に至ったわけだが、復旧するためには時差のある日本に直接電話をしないと復活しないということで本当に危なかった。(不正利用の場合、カード自体を再発行する必要があるため、不正利用ではなかったのは不幸中の幸い。)
 なおこの時、SIMの残高も切れており、日本への電話ができない。さらにカードが止まっているためSIMも購入できないという危機的な状況だったが、奇跡的にフランスにいる友人を訪ねるタイミングで、彼女が僕の代わりにSIMを購入してくれて助かった。

 もちろんVISA一枚でヨーロッパに行ったわけではなく、想定外だったこととしては、ヨーロッパの多くの場所ではAmerican Expressが使えないということ。ぜひ今後ヨーロッパを訪れる方はVISA or Master Cardを複数お持ちすることをお勧めする。単身ヨーロッパで唯一のカードが止まるというのは、大袈裟ではなく、想像を絶するほど不安になる。(さらに僕の場合、現金を数ユーロしか持ち合わせていなかったこともあったが。)

 カードの停止は大きなトラブルだったものの、実はヨーロッパの一部の地域を除き、現金を使う機会は皆無だった。現金を使った機会といえば、ベルギーとフランスの国境沿いの村であるデュポンを訪ねた時、あとは現地のコインランドリーでトークンを購入する際にしか現金は使わず、基本的には非接触のカード決済で全て支払うことができた。支払いについてはカードが止まりさえしなければ、日本以上に快適だと思う。

理不尽な罰金(€60)を食らったこともあるが、この程度であればかわいいもの

⑤まとめ(費用についても記載)

研修の最終目的地・ナポリにて

 結局、7,000文字近い文字量になってしまったが、今後ヨーロッパのつくり手の訪問を検討する方々にとって参考になれば幸いです。
 
 なお発生したコストについては概算だが、冒頭にも記載した通り約100万円だった。インパクトの大きい飲食費や宿泊費は複数で訪れることで抑制することができるし、交通費もバスを上手く使うことでさらに効率的になると思う。

 今回は、旅行でもバカンスでもなく、あくまでもお酒のビジネスの開始に向けた研修が目的のため、観光らしい観光はほとんどしていない。

 とはいえ何か無理をして、節約をしたかというと、そんな感覚は皆無だった。ヨーロッパの街並みを歩き、景色を眺めること。彼らが日常的に使うスーパーで現地の食材を買い、料理を楽しむこと。
 まして、バーやレストランでスタッフやローカルの人たちと会話なんてしていれば、十分。そう、ただ普通に過ごすだけで刺激的な日々だった。

 思ったように上手くいかないことやストレスを感じることは、もちろんあったが、今となっては全てが笑える良き思い出であり、大変充実したヨーロッパでの生活と研修になった。

 ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。

salo Owner & Director
青山 弘幸
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またお酒に関わる出会いやご縁を探しています。また応援のメッセージもとても嬉しいです。もしご興味を持っていただけたらお気軽にご連絡いただけますと幸いです。

 

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