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『女優エブリンと七人の夫』テイラー・ジェンキンス・リード

*ネタバレというネタバレはない&あったとしても十分楽しめるのですが、気にする方は一部ネタバレ注意です。

〈内容〉

雑誌『ヴィヴァン』の新人記者モニークは、隠遁生活を送る往年の大女優エヴリン・ヒューゴの独占記事を任される。エヴリン自身がモニークを指名してきたというのだ。なぜ自分が選ばれたのか困惑しながらも、モニークは女優が住むマンハッタンの高級アパートメントに向かった。現在79歳のエヴリンはグラマーで優雅な女優として一時代を築き、七度に及ぶ結婚生活を送り、その波乱に満ちた伝記を執筆し死後出版するよう提案してきた。怪しみながらも同意したモニークは、悲痛の事実を知らされることに…

文庫カバー裏表紙より

〈本との出会い〉

大好きなPodcast番組『Y2k新書』で柚木麻子さんが紹介していたのを聴いて読んでみたいと思った。

〈感想〉

柚木さんのおすすめということもあり、信頼してはいたものの、タイトルからも、ラブロマンス的要素が強すぎたらどうしよう…(ニガテ)と思っていましたが、そんなことは全くなく、自分にとっても重要なメッセージがたくさんありました。読んでよかったと強く思いました。

表紙をめくって一枚目にこの文が書かれていたので「こりゃ信頼できる本や」と思えました。

*ネタバレ注意ゾーン

エブリンは、自分が欲しいもの、例えば新しい暮らしへの切符や仕事、名声をすべて手に入れていこうとします。

ほとんどの場合、自分の体と引き換えにしているのですが、その作戦がすべて成功しているところがすごいなと思いました。このような物語で性搾取の観点から、読んでいて辛くなることがあるのですが、エブリンは主体的で、きちんとそこに自分の意思があるという風に描かれていた点が新鮮でした。

また、ありがちな「望むものを手に入れようとした結果本当に欲しいものは手に入らなかった」というオチじゃないところが好きでした。

現代の軸で進む記者モニークの話とは、人種の問題、ジェンダーの問題で繋がってきて、考えさせられました。

また、エブリンがモニークに言った言葉が大事だと感じました。

「わたしをひとつの枠にはめるために、わたしの半分を無視するのはやめてちょうだい、モニーク。絶対に」

勝手に受け手の方で名前を付けて分類することによって、取りこぼされるものがあるということを常に意識しなくてはならないと思いました。

物語の中でもこれを覚えていないとエブリンのことを完全には理解できないだろうと思わされます。

私の中では、映画『Barbie』と同じジャンルです。おすすめです。


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