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美術

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美術にまつわる文章。美術は好きですが、まだまだ初心者です。お手柔らかに。
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カンヴァスの向こう側-空間概念

3年ほど前のこと。美術の勉強を始め、美術の魅力に気づき始めた私には、しかしそれでも理解することの出来ない美術のジャンルがあった。抽象画だ。

その頃の私には、抽象画の魅力など、少しもわからない。しかし、理由は不明瞭だが、「抽象画が好きな人はかっこいい!」というイメージを持っていた。そんなかっこいい人間になれないことが悔しくて、いつか抽象画を好きになってやるんだ…!と、訳の分からない意気込みだけは充

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ma donna-わが淑女

表現主義の絵画はいつだって、わたしの純情を踏み躙って、精神をぐちゃぐちゃに掻き乱してくる。
そんな作品たちに、わたしはいつでもこころを奪われてしまう、これは不可抗力だ。
得体の知れない、わたしを呑み込んでしまいそうな、畏怖の対象とさえ捉え得る蠱惑を、言語化してしまえればきっと、恐ろしさは軽減されるだろう。
しかし、そんなことをしてしまえば、わたしがこれほどまでにこころを鷲づかみにされるような経験も

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シテール島-喜びの島への船出

浮遊する和声感、旋回する音形…ドビュッシーによって描かれた《喜びの島》は、このような音楽的工夫によって、どこか宙に浮いたような、独特の世界観を作り上げている。ドビュッシーが印象主義の作曲家か、象徴主義の作曲家か、という議論はたびたび発生するが、印象主義的な、水の揺らぎに通ずるものも感じられるし、或いは象徴主義的に、人間の内面に渦巻く感情を描いた音楽にも感じられる。
この曲は、ヴァトーの絵画《シテー

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こころにうつりゆくよしなしごとを

小学校5年生の国語の時間に暗唱させられた、兼好法師の徒然草の冒頭の一文。この文は未だになんなく暗唱することができる。日常生活において、こころに取り留めもなく、色々な考えが断片的に浮かんでくることがしばしばあるが、そういうときはいつも、この文を思い出すものだ。

今日も例に漏れず、時に徒然草を思い出しながら、心に浮かんでは消えてゆくよしなしごとを見つめていたわけだが、ふと、とある画家のことを思い出し

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