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2020.10.12 欧米は『人権』ではなく『地政学』

最近の欧州情報は、9週連続デモが起きているベラルーシ情勢がトップで報じられています。
昨日も首都ミンスクだけでも140人以上が拘束されました。

欧州とロシアの中間に位置するベラルーシ。
日本ではあまり馴染みがない国ということもあり、場所を知らない方も結構いるかと思いますので、地図を載せておきます。

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ベラルーシでは今年8月9日に大統領選挙があり、現職のルカシェンコ大統領が6選を果たしました。

野党側は、
「選挙に不正があった」
として、“選挙のやり直し”を求めてデモを開始しました。

それがドンドン大規模になり、ついに
「革命が起こるか?」
という瀬戸際になっています。

欧米は、1994年から26年間もベラルーシ大統領を務めるルカシェンコを非難。

野党勢力に同調して、“選挙のやり直し”と求めています。

一方、ロシアのプーチンは独裁者仲間のルカシェンコを支持。

ベラルーシをめぐって、欧米とロシアの対立も激しくなっています。

8月19日付の産経新聞に、ルカシェンコに対する欧米の批判について、 
<ロシアのラブロフ外相は19日、ベラルーシのルカシェンコ大統領が6選を決めたことや、同国での抗議デモ弾圧を米国や欧州連合(EU)が批判していることについて、「(欧米の批判は)人権や民主主義ではなく、地政学に基づいている」などと批判した。>
と書いてありますが、ここで“地政学に基づいている”という意味を説明したいと思います。

ハートランド理論から見るロシア

現代地政学の祖といわれるハルフォード・マッキンダーは1919年、自著『デモクラシーの理想と現実』の中で、歴史的フレーズを書いています。

「東欧を支配する者はハートランドを制し、ハートランドを支配する者は世界島を制し、世界島を支配する者は世界を制する」

『世界島』というのは、ユーラシア大陸とアフリカ大陸になります。

マッキンダーは、これを巨大な島『世界島』と見ました。

そして、『ハートランド』は世界島の“心臓部”のことで、ざっくりいうと今のロシア(旧ソ連)です。

歴史的フレーズを上の言葉に置き換えてみると、
「東欧を支配する者はロシアを制し、ロシアを支配する者はユーラシア・アフリカ大陸を制し、ユーラシア・アフリカ大陸を支配する者は世界を制する」
というわけで、アメリカやイギリスなどの海洋国家(シーパワー)にとっては、まず“東欧を守ること”が重要なのです。

そして当時、米英には二つの大陸国家(ランドパワー)の敵がいました。

まず一つがドイツです。
ナチスドイツは第二次大戦時に東欧を併合し、その後、もう一つのランドパワーであり、ハートランドである旧ソ連に攻め込みました。

しかし、侵攻に失敗して連合国に敗れ、今は羊のようにおとなしい国になりました。

ですが、第ニ次大戦後にハートランド(ソ連)自身が東欧を吸収し、共産化してしまいました。

ソ連は、東欧とハートランドを支配し、そして全世界に共産主義は拡散されていったのです。

1991年12月にソ連が崩壊。
米英と西欧は、地政学的に重要な東欧を守ることにしました。

具体的には、ソ連から解放された東欧をEUとNATOに加盟させ、さらにソ連の一部だったバルト三国もEUとNATOに加盟させました。

これは、ハートランド(ロシア)から見ると、ロシアが外に出ないよう封じ込められているように感じるものです。

これが、欧米諸国に対しロシアが反発する原因となっている理由です。
しかし、欧米の戦略は止まりません。

彼らはロシアが勢力圏、影響圏、緩衝国家と考えている旧ソ連のウクライナやジョージアをEUとNATOに加盟させようとしています。

そして、今回のベラルーシ。

地図にあるように、ベラルーシはウクライナと同じように欧州とロシアの中間に位置します。

欧米は、当然
「ルカシェンコが消えて、親欧米の大統領になればいい」
と考えます。

それは、ベラルーシに人権と民主主義がないからであり、ロシアのラブロフ外相が言うように地政学的な理由からでしょう。

私たちにとって、人権と民主主義は大事ですなものですが、同時に“地政学的視点”を持つことも大事です。

「地政学的視点って何?」
と、普通の日本人ならあまり馴染みのない言葉に悩むことでしょう。

この地政学は、歴史好きの方には堪らないものかもしれませんが、実はビジネスの教養としても役に立ちますし、グローバル投資にも役立ちます。

そして、何より世界の指導者と同じ視点を持てるようになるのも地政学の良いところです。

地政学の書籍には入門編など様々なものがありますので、興味のある方は今後の自身の糧として参考になさっては如何でしょうか。

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