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2020.7.1 香港の落日と軍拡に走るオーストラリア

日本は世界の変化について行けるか?

6月30日、ついに香港国家安全維持法が成立してしまいました。

これで、香港の民主主義的統治を担保していた一国二制度が事実上崩壊しました。

昨年の大規模なデモの発生から、いよいよ危うくなるだろうという予想はしていました。

香港がイギリスから中国に返還された後、香港はずっとサイレント・インベージョンを受け続けて来ました。

その手法は外国に対する浸透工作と同じで、じわじわと実質的なコントロールを奪うものでした。

香港が自発的に犯罪者引き渡し条例を可決するなどして、大陸化が進むことを画策したようですが、香港市民の強大な反抗に遭って、とうとうなり振り構わず強引な手法で香港の民主主義を殺してしまいました。

誰の目にも中国の脅威が明らかになった瞬間でした。

香港以上に、サイレント・インベージョンで散々やられたオーストラリアでも、今大きな変化が起こっています。

南半球(Down Under)の平和にうつつを抜かしてきたオーストラリアですが、ここにきて軍備拡張を決定しました。

全国紙のジ・オーストラリアンに、モリソン政権が2013年以来維持してきた防衛費のGDP比2%レベルを超えて、長距離ミサイル防衛システムを構築する計画を発表しました。
対象は明らかに中国に対してです。

ジ・オーストラリアン紙に載っているモリソン首相の言葉を和訳すると、
「私が知っていることは、世界が変わったということだ。
世界は1930~40年代以来、このような経済的、戦略的に不確かな時代は経験していない。

このことは我々が当該地域に対する意識を高め、能力を向上させることを要求されている。
我々は潜在的な敵をより遠ざけなくてはならない。

我々の態勢見直しの一部は敵を遠方に固定し、複数のパートナーと共闘することで、地域の平和と安全と安定というゴールを達成することだ。

オーストラリアは、新型コロナのパンデミックと戦いながら、同時にコロナ後のより貧しく、より危険で、より混乱した世界に備えなくてはならない」
と述べています。

チャイナマネーで中国寄りだったドイツやイタリアも香港の一件で、今の中国がどのような国かを認識し、世界の構図はどんどん変わり始めています。

30年前は「ボーダーレスワールド(国境無き世界)」という言葉が格好良く響き渡った時代を覚えている方もいるかもしれません。

20年前は通信技術の発達と共に、国際化がグローバル化という言葉に取って代わりました。

10年前はというと、世界のトップ100社から日本企業がほとんど姿を消しました。

そして2020年は、新型コロナウイルスによるパンデミックでサプライチェーンの世界分散、特に中国への過度な依存が危険であることが明白になりました。

グローバル社会における経済合理性と繁栄は、世界中が基本的に平和で安定を好むという大前提があることを人類は忘れていました。

このグローバル社会は、日本人にとっては適応が難しい社会でした。

世界は平和を好む国ばかりではないことがはっきりした今、ポストコロナの時代は大きく2つの陣営に分かれた上で、更にいくつかの陣営に分かれ、安全保障を第一に考えざるを得ない、より不安定で混沌とした世界に逆戻りしてしまいそうな気配が漂っています。

時代は刻々と変わっています。

香港の落日、そして平和国家だったオーストラリアの軍備拡張が、太平洋圏の来たるべきタフな時代の到来を物語っています。

果たして日本はこの変化にどのように対応し、危機を乗り切ることができるでしょうか?

今サバイバルに必要なのは、知識よりも強靭な思考力です。

日本の政治家に、オーストラリアのモリソン首相と同じことが言える議員がいるでしょうか?

確実に今言えることは、もはや遺憾砲をどれだけ東シナ海へ向けて撃っても、自国を護ることができない時代に突入してしまったということです。

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