火の玉の如く14(小説)
リーグ戦開始
数ヶ月経った。いよいよリーグ戦が始まった。あの練習試合から俺はさらに鍛え抜いた。以前とは数段比べようの無いほど力はついた。
俺はロッカールームで背番号8のユニフォームに着替える。この日の為にやってきたんだ!
必ず優勝する。それまでは意地でもやってやる!
オッサンがみんなを呼ぶ、スターティングメンバーを発表するみたいだ。
「今日はいつもの連中で戦ってもらう。ただし、左のサイドハーフは山崎だ」
オッサンの言葉に驚いた。俺でも村上でもなく、山崎だって?俺はオッサンに言った。
「オッサン!おかしいじゃないですか!村上さんならわかるが、なんで山崎さんなんスか?俺がスターティングメンバーじゃないんですか?」
オッサンは俺を睨んだ。
「やかましい!半人前のお前がスターティングメンバー?ふざけるな!村上よりも今は山崎のほうが上だ!上山、そんなに試合に出たかったら実力をつけることと日頃の態度を改めることだ!わかったな!」
オッサンの言葉に俺は歯ぎしりした。くやしさが全身に伝わる。今日の為に俺は頑張ってきたんだ。
そうしているうちに試合が始まった。今日の相手はサンズだ。サンズには小沢と久保田という強豪の選手がいる。
試合が始まった。ゆっくりした試合運びからサンズの小沢と久保田がうまく試合をつくる。あきらかにうちが押されている!
俺はこの日の為に何が俺の武器か考えた。そしてその答えが出た!その答えを練習してきたんだ!負ける訳にはいかない。その為には試合に出ないと!
「オッサン!いや、監督、俺を出して下さい!俺はこの日の為に俺の武器を見出して練習してきたんです!」
「お前の武器?そんなもんは役に立たん!今日は大事な試合だ。お前を出す訳にはいかん!」
オッサンはあくまでも俺の言葉を聞こうとしない。そうしている間にサンズが1点入れた。
小沢と久保田が抱き合う。くそー!俺を出しやがれ!急に誰かが俺の肩を叩いた。
振り返ると真由さんだ。
「上山くん、焦らないで。チャンスは必ず来るわ。その時に上山くんの力を発揮して」
真由さんは微笑みながらそう言った。
「こいつにチャンス?来ない来ない。永遠にな」
村上が嫌味な顔をして俺を見下していう。確かに交代があるとすればコイツだ。俺じゃなく村上だ。
「監督!お願いだ!俺を使ってくれ!」
俺はなおも懇願した。オッサンはその言葉を無視した。
「村上!ついでに上山!後半に入ったらウォーミングアップをしとけ!今はじっと休んで力を溜めろ!」
オッサンがそう言った。ということは後半に俺にチャンスがあるかもしれない。俺は心の中で闘志をみなぎらせた!
試合は相変わらずサンズが押している。ディフェンダーの戸田さん、久野さん、奥山さん、大沢さんも必死に止めている。
他のメンバーも下がって食い止める。なかなか前線にボールが出ない。少しでもチャンスになったと思うとすぐにボールを奪われる。
そして小沢と久保田が攻め込むというパターンが続く。キーパーの足立さんも必死に止めている。
「上山くん、今のうちに相手の動き、攻撃パターンをよく観察しておくことよ。後半、監督は上山くんにチャンスを与えるかもしれないわ」
真由さんがそう言った。確かにそうだ。今のうちに相手をよくみておかないと。ボクシングでも対戦相手を研究することは必須だった。
俺食い入るように相手を観察した。
「増田、1人分アイシングの用意だ。後半交代させるからな」
オッサンの言葉に俺は心躍らせた。必ず俺にチャンスをくれ!そして皆をびっくりさせてやる!
そうしているうちに前半終了のホイッスルが鳴った。皆疲れている。それだけサンズのプレッシャーがすごいということだ。
皆はそのままウェーティングルームに下がる。俺達もそのままウェーティングルームに行く。
真由さんとスタッフが皆にボトルを渡す。ボトルを持ちながら皆オッサンの話を聞く。
「小沢と久保田の動きにいいようにやられたな。もっと中央も使え。場合によっては選手交代もある。とにかくもっと中央だ。俺達は選手じゃない。戦士だ!相手をぶっ倒す勢いでいけ!」
「「「おう!」」」
オッサンの言葉に皆が気合いを入れる。勝負は後半だ。俺が出るならやってやる!いや、俺を必ず出してくれ。オッサン!
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