火の玉の如く15(小説)
後半が始まった。サンズは後半からロペスという選手を投入してきた。こいつがまた速いうえにこちらの攻撃をことごとく粉砕する。
早くも後半は5分経った。俺は村上とずっとウォーミングアップを続けている。オッサンはずっとベンチに座っていたが、立ち上がった。
「上山!交代だ、いけ!」
オッサンが気合いの入った声で叫ぶ。俺はピッチに向かった。俺の番号と交代する選手の番号がボードに映し出された。山崎と交代だ。
『クリムゾンウォーリアーズ、選手の交代です。山崎進に変わり上山蓮!ナンバー!エイト!』
場内アナウンスに合わせて山崎が戻ってくる。俺とハイタッチする際、山崎が言った。
「上山、小沢は左から久保田は右から攻める。ロペスは厄介だ。なんとか、この3人をマークすれば突破できるばずだ」
俺は山崎に力強くうなずき応えた。
「わかった!必ずうちにチャンスを与えてやる!」
俺はそういうとそのままピッチに入った。
小沢も久保田も外でみるより速い。しかもすごいテクニックだ。俺はこの日の為に考えた武器がある。
小沢が上がってきた。久保田からパスがくるはずだ!久保田が小沢にパスをする。小沢がボールを取る!その刹那俺は大きくボールごと小沢を蹴った!ボールは小沢の斜め後ろに転がった!
俺もボクシングではフットワークには定評があったんだ!モハメド・アリが"蝶のように舞い鉢のように刺す"なら俺は"蝶のように舞い虎のように蹴る"だ!
俺は左右に相手をかわして、そのままドリブルで持ち込む。ロペスが前を防いできた!
俺はロペスに向かって突進した!ロペスも突っ込む!ロペスがギリギリボールを奪おうとする刹那、俺は立石さんにパスした。
ボールはうまく立石さんにいった!立石さんはさらにトップの岩橋さんにパス!
「岩橋さんこっちだ!」
岩橋さんは俺の声に素早く反応し、俺にパス!
ロペスはもう岩橋さんに追いついていた!恐ろしい奴だ!
俺はボールを奪うとそのままシュート!ボールはゴールネットを揺らした!同点だ!
みんなが俺に駆け寄る。
「上山!いいプレイだ!お前あんなに素早く動けるんだな。この後も頼むぜ!皆!この後もいくぜ!」
谷内さんがそう言った。
俺の武器はボクシング仕込みのフットワークと散々走らされてた上にウエイトで鍛えた足を使い、インサイドキックを小さめにしかし鋭く蹴り込み相手のボールを奪うことだ。迷うことはもう無い。よく調べて何度も練習したんだ。
小沢も久保田も焦った顔をしている。ロペスはさらに闘志満々な顔つきだ。
ホイッスルが鳴った!さあ後半の続きだ。
俺はボールを取ると小沢が奪いにくる!
俺はギリギリまでボールをキープすると小沢の目の前でキックした。
ボールは小沢の横を抜けてゆく。俺はそのボールを追いかける!
「なんで奴だ。めちゃくちゃだぜ」
小沢の横を通り過ぎる時、小沢のそんな声が聞こえた。俺は懸命に走り、ボールに追いつく。
さあ、ここからはゴールまで一直線だ!
ロペスが立ちはだかる!ロペスも必死でボールを奪おうとする!
「いくぜ!ロペス!」
俺はそう叫ぶとロペスに突っ込んだ!立石さんが上がっている。ここは立石さんにパスだ。
立石さんはボールを取るとそのままゴールに向かって走り込む!ロペスが白石さんに迫る!
ロペスは白石さんからボールを奪う!俺はその時、ロペスの奪ったボールをキックした!
ロペスからボールが少し離れる!さすがにパワーが違う!俺は躊躇なくそのまままた蹴り込みボールを奪う!
3人が俺に迫ってくる。俺は一緒フェイントを入れて引いた!相手も反応する!
ここはボクシングではワンツーだ!俺は少しボールを蹴り、次に強く蹴り、走り出した!
転がるボールに勢いよく走り込みそのままシュートだ!ゴールネットが揺れた!逆転だ!
「上山!いいぞ!」
みんなが俺に駆け寄る。俺は一瞬オッサンの顔を見た。あの鬼のような表情が一瞬笑っているように見えた。
無勝手流なんてもんじゃなく、ただの自己流だが結果はあげた。
もっとみんなの為、クラブの為、俺は精進しようと誓った。
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