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火の玉の如く2(小説)


俺より軽い足取りでオッサンは俺のボールを奪う。
奪われたボールは俺の背中の後ろのゴールに軽く入れられた。
嘘だろ?フットワークじゃ誰にも負けたことの無い俺があんなオッサンに……。

「おう、もう一回やるか?それとも、俺が攻めるか?」

「もう一回だ!さっきは油断しただけだ!怪我するかもしれないが覚悟しろよ!」

俺はそういうとオッサンはニヤっと笑った。
くそ!なめやがって!

俺はオッサンの足を思い切りキックしてやろうとさらに加速して突っ込んだ。
オッサンはニヤニヤしてボーっと立っている。

オッサンがボールを奪いにきた!俺は横にステップしオッサンをかわすとそのままオッサンの足を刈り込んでやった!

オッサンは俺の横を通り過ぎると思うとそのままボールをとり、軽々とゴールした。

「おいおい本気か?マジで頼むぜ。あくびがでてくるわ。次は俺の番だ。いくぞ」

さっきはやられたが次はそうはいかない。絶対に止めてやる!
俺もボクシングじゃ、華麗なステップで定評があったんだ。

オッサンがドリブルしながら走ってくる。なんだ?スキだらけじゃねえーか。
オッサンは俺に向かって走ってくる。
俺は両腕を広げてオッサンの突進を防ぐ準備をした。
オッサンが左右に揺さぶりながら走って来る。
気がつくと俺は抜かれていた。

いつのまに抜いたんだ?わからなかった……。

「ん?なんだ終わりか?終わるなら終わりでいいぞ?」

俺は言葉にならなかった。あんな俺より倍も年上のオッサンに簡単にあしらわれるなんて…….。

「よし!終わりだな。俺の勝ちだ。どうだ少しはスッキリしたか?昼間っから辛気臭い顔してるけどよ。なんだ。ぼんやりして。まあいいわ。じゃあな」

オッサンがそう言って立ち去ろうとする。俺は立ち去ろうとするオッサンに走り寄り、頭を下げた。

「待ってください!正直なめてました!俺の負けです!サッカーをやらせてください!」

俺はそういうとオッサンに頭を下げたまま、くちびるをかみしめた。血の味がする。負けた味か……,。

「おいおい、お前、サッカーシロウトだろ?シロウトがやれるほど、サッカーは甘くないぜ。悪いことは言わん。帰れ」

「男の約束は絶対です。この通りです。俺は負けました。サッカーやらせてください!」

オッサンは鼻くそをほじくり、指でペンペンとするとニヤッと笑って

「ずいぶん男らしいこと言うじゃねえか。いい身体してるな。なんかやってたのか?」

「はい、ボクシングやってました!それが……事故で右腕の筋を切ってボクシングができなくなってしまって。俺はスポーツで頂点とりたいんです!」

俺がそういうと今度は耳に指を突っ込んで耳くそを取り、指をペンペンしている。

「ボクシングか。どうりでいい身体してると思ったぜ。そうかボクシングができなくなって、ふてくされていたのか。でもよ、3対0で俺の勝ち、サッカーじゃボロ勝ちだぜ。しかもお前は途中棄権。そんな根性でできるのか?」

「俺やります。お願いします。サッカーやらせてください!」

俺がそういうと今度は頭をカリカリかいて何やら難しい顔をして、突然ニカッとすると

「よし、怪我が完全に治ったら来い。とりあえずは入団テスト期間だ。ジャージは貸してやる。スパイクか、スパイクはまだ半人前にもならん奴にはいらん。動きやすいシューズで来い」

そういうと踵を返しておっさんは後ろを向いたまま手を振って、また元の場所に戻って行った。

俺はサッカーがやりたい訳じゃない。あんなオッサンに負けたのがシャクなんだ。
必ず、うまくなって倍にして返してやるぜ。

俺が尻尾を巻いて逃げると思うよ、オッサン。
サッカーなんか好きじゃねえが、負けは必ず返すのが俺の主義だ。

俺は痛む手を押さえながら、グラウンドを後にした。
腕の痛みより、心が痛む。覚悟しろよ!オッサン!

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