ノネット編成で読むリー・コニッツ

四十九日法要。新型コロナウイルスにより無念にも命を落とすこととなった名手リー・コニッツノネット編成で紐解いてまいります。数ある名演の中でもとりわけ主宰がフェイバリットに挙げますのは、1979年SteepleChaseレーベルよりリリースされたアルバム『Yes, Yes Nonet』収録のスタンダードナンバー「Stardust」です。

なぜノネット編成を切り口に語るのかという真意は以下の通り。

すなわち彼の遺作となった『Old Songs New』旧知の逸品クールの誕生こと『Birth Of The Cool』そして『Yes, Yes Nonet』に共通する編成。デイブ・ブルーベック、あるいはギル・エヴァンスジョージ・ラッセルの既踏峰。氏の思い入れの深さゆえ、あるいはオカルトチックに書けば何かの巡り合わせという以外考えようがないという事実だけがある。

他言無用、クールジャズの代名詞。多管編成との親和性、それでいてインディペンデントな楽曲解釈と音色から来るアプローチ。字数の都合上、歯切れ良い語り口を心掛けざるを得ませんが、しかし晩年まで新旧世代との音楽的融和を止めませんでした。レジェンドに共通する立ち回り、神々の遊びとでも言い換えられるべき領域。

「Stardust」においてもこうした姿勢が貫き通されています。「なにも足さない、なにも引かない。」はかのサントリーウイスキー山崎のキャッチコピーですが、氏の名演にもピッタリと当てはまることでしょう。オブリガードで絶えず語り掛け、それでいて過不足ない世界観を演出。香り・含み・味・喉ごし・後味そのどれもが超一級品です。

ラージアンサンブルと称すべきかリトルアンサンブルと称すべきか。9人編成という文字通り華美を戒める質実なオーケストレーションの源流となっているのは、これまた名手マイルス・デイヴィスであるという圧倒的事実。ノネットを通じた音楽史のバトンリレーがこれからも途切れなく新世代まで続いていくことを祈りながら本稿を閉じます。


2020年6月2日

#音楽 #ジャズ #クールジャズ #LeeKonitz #Nonet #Stardust #DaveBrubeck #GilEvans #GeorgeRussell #MilesDavis #OldSongsNew #クールの誕生 #サントリー山崎 #追悼 #コラム #レビュー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?