虎に翼122話(重遠の孫)
桂場「裁判官は孤高の存在でなければならん。
団結も連帯も 政治家たちが裁判の公正さに難癖をつけるための格好の餌食になる。
今 君が奮闘する少年法改正の邪魔にもなっただろう...」
桂場は、生来 自閉的だ。環境の変化を、敏感に、どちらかといえば侵害と感じる。「時期尚早」と変化を押し留めようとするのも、竹もとのアンコの変化を許せない偏執(?)も、そこから来る。
優秀だから昇進し、昇進するから大きな変化にさらされる。東亜事件(帝人事件)の「水中に月影を掬するが如し」も、恐らくは侵害への拒否反応に起因する。
寒河江からの圧力を増幅して受け止め、「左」の異分子を切り捨てる事で侵害から身を守る。
個人の感受性の傾きと「司法の独立」という大義名分が、分かち難く微妙に絡み合っている。
司法権力が、半職業的な縦の構造になっているため 最高裁長官に権力が集中し その重圧に、桂場は潰れている。
ライアンなら務まるのか?
多岐川なら?
それぞれに、務まる所と、
務まらない所が出て来るだろう。
根本問題は、司法権力の構造にある。
・・・・・
寅子「政治家の顔色を見て
未来ある若者を見せしめにして…。
石を穿つ雨垂れにもせず
切り捨てたということですよね?
汚い足で踏み入られないために
桂場さんは長官として
巌となったんじゃないんですか?
あの日 話した穂高イズムはどこに行ったんですか?」
桂場「そんなものを掲げていては
この場所にはいられん」
(自閉)
多岐川「で どうすんだ?お前は
裁判所全体に
どんよ〜りした空気が流れてるぞ。ハハッ。
そもそも少年事件だけ
目の敵にされるのだって
家庭裁判所の地位向上を
怠ったせいもあるんじゃないのか?
お前の強権的な人事に
嫌気がさした
志高い裁判官たちは
どんどん辞めていっている。
ん〜 人手不足が進むな~。
お前の掲げている
司法の独立っちゅうのは
随分さみしく お粗末だな」
桂場「黙れ!」
(自閉)
・・・・・
寅子「少年法の対象年齢を引き下げた場合に18歳 19歳の子たちに対する調査は行われないということですか?」
豊谷「調査 調査 と
おっしゃいますが
家裁調査官がそれについて
行っているのかは…」
寅子「調査官なくして
少年審判はできません。
彼らの丁寧な調査が
少年たちの心を開く鍵に
裁判官と少年をつなぐ橋になり
事件を深部まで照らすんです」
ライアン「やっぱり僕には
分からないな。
弁護士や裁判所側との
意見調整もせず
少年法改正を急ぐ必要性が…」
豊谷「まず法が変わり
現場が そこに合わせて
形にしていく強引さが
時に社会構造を作り上げていく。
家庭裁判所設立に関わった
皆さんが一番分かってる
ことじゃないですか」
ライアン「うんそれはそうだね。
家庭に光を 少年に愛を。
あの時 むちゃをしてでも
家裁設立のために戦えたのは
家裁の仕事が
少年たちにできるベストだと
現場にいた僕らが心から
そう信じていたからだよ」
・・・・・
ライアン「ああいう時はね
頭にタッキーを
思い浮かべるんだよ。
頭の中のタッキーが
怒ってくれると
心が落ち着くんだよね。
それで 彼ならば
『この法改正には愛が足らん!』
って叫ぶだろうって」
(ライアンの頭の中の
タッキーは「共に居る」
桂場の頭の中の
多岐川は「侵害者」だ。)
・・・・・
朋一「本日付で 東京家庭裁判所
少年部判事として着任しました。
星朋一です」
平光「分からないことは
何でも聞いてくださいね」
朋一「では皆さんが今
非行少年たちと
どう向き合われているのか
家裁がどう変化する
必要があるのか
じっくり聞かせて
いただきたいです」
(朋一の正論に、
家裁職員一同 どん引き)
・・・・・
よね「斧ヶ岳美位子は
幼い頃から暴力を受けていました。母親は 10代の彼女を置いて
逃げ出した。
母親がそれまで受けていた
仕打ちを彼女は全て
引き受けることになった。
家事に暴力に...性処理も。
暴力は思考を停止させる。
抵抗する気力を奪い
死なないために
全てを受け入れて耐える
ようになる。
彼女には頼れる人間も
隠れる場所もなかった。
父親の子をみごもり
2人の子供が生まれた。
幾度も 流産も経験した…
職場で恋人ができ
やっと逃げ出すすべを得たのに
父親は怒り 彼女を監禁した。
恋人に全てを暴露する と脅され
追い詰められた彼女は
更に激しくなる暴力に
命の危機を感じて
酒に酔って眠る父親を絞め殺した。恋人は真実を知って
早々に あいつから離れていった。
おぞましく 人の所業とは
思えない事件だが
決して 珍しい話じゃない。
ありふれた悲劇だ。
あいつは今でも
男の大声に 体がすくむ。
部屋を暗くして眠れない。
金が出来たら その大半を
自分を捨てた母親に送る。
無理やり産まされた
実の子を 世話してもらうために…
私は 救いようがない世の中を
少しだけでも マシにしたい。
だから 心を痛める暇はない」
(よねは美位子に自分を重ねている)
光
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