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なぜ「まぶた」は「めぶた」ではない? (連載:外から見る日本語第8回目)

バンクーバーの習い事教室STEP AHEAD LEARNINGです。

当教室にて、日本語教師歴25年になる矢野修三先生による日本語講師養成講座(初級編)がまもなく開講される予定で、日本語の面白さをもっと多くの人に知ってほしいという思いから 「連載:外から見る日本語」を執筆していただくことになりました。

長い長い日本語教師歴を通して感じた日本語のフシギを短いエッセイ形式でお届けします。

日本語を教えることに興味がある人も、単なる雑学としても、だれでも楽しめる内容となっております。

それでは はじまり はじまり。
(このエッセイは2022年8月25日に執筆されたものです)


日本で信じられない事件が・・・、安倍元首相の銃撃事件である。テレビニュースの画面だが、あのような映像を目の当たりにして、強い衝撃を受けた。守りに対する警備体制に問題ありと、その後のニュースでもいろいろ報じられている。
 
 このような「守り」に関する記事を読んでいて、かなり前だが、とても困った日本語上級者からの質問を思いだした。

 まず、なぜ「めぶた」ではなく「まぶた」ですか、である。最初は質問の意味がよく分からなかったが、英語ではeyelid で「目のふた」であり、確かに生徒にすれば、「め+ふた」のほうが分かりやすい。なるほど。  さらに、「目の当たりにする」はなぜ「まのあたり」と発音するんですか、うーん、当時、「目」を「ま」と読む理由もはっきり分からない日本語教師としては大弱り。「ま」と読むこともあり、ルールだから覚えて、と説明するのがやっとであった。

 この「目の当たりに」を「めのあたりに」と言っている若者もかなりおり、日本人でもこの「目」の読み方はややこしい。生徒に分かりやすく説明するにはどうすればいいか、いろいろ考え調べた。

 そして、この「守る」の語源に出合った。この「まもる」の語源、驚いたことに、「目(ま)+守(も)る」とのこと。すなわち、「目を離さずじっと見る」が由来。えー、びっくり。それゆえ、「目」の訓読みに「ま」と「め」があり、特に「ま」は古い用語や慣用句などに使われている。なるほど、それまで「守る」を辞書で調べたことなどなく、とても納得した。

 上級者には、「守る」の語源を話して、大部分は「め」だが、古い言葉などは「ま」を使うものもあり、注意して覚えて、と説明に少し余裕が持てるようになった。 
 
 確かに、「めぶた」や「めばたき」でも通じるが、やはり「まぶた」や「まばたき」でなければ馴染めない。でも目尻(めじり)や目頭(めがしら)は「め」。実にややこしい。「め」か「ま」かの特別な決まりなどなく、昔から慣れや言いやすさなどで使い分けてきたようである。「帽子を目深に」は「まぶか」であり、「目新しい」は「めあたらしい」。うーん、漢字を見ると「め」か「ま」か、戸惑ってしまう。

これらはひらがな書きがいいかも。

 この「守る」の語源を考えると、日本語教師として、安倍元首相の銃撃事件、やはり守りの体制に大きな問題が・・・。犯人の行動を全然見ておらず、目(ま)+守(も)っていなかったのでは、と思えてならない。  
 謹んでご冥福をお祈り申し上げます。




本エッセイを執筆された矢野修三先生が、4月16日からバンクーバーの弊社STEP AHEAD LEARNING のオフィスにて、0から日本語教師を目指したい人向けに日本語教師養成講座(初級編)を開講します。


バンクーバー時間です。オンラインの受講も可能。

最初の1日は無料とオリエンテーションになっているので、興味がある人は奮ってご参加下さい!

詳細はこちらから。

https://stepaheadlearningcanada.com/japaneseteacher/




本エッセイは執筆者である矢野修三先生から許可を頂いて転載しております。

執筆者プロフィール:
矢野アカデミー元校長
矢野修三先生

矢野アカデミーのサイト:

https://yanoacademy.ca/


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