作品創作に使えそうな西洋音楽の話2,ピアノはいつから「ピアノ」になったか


こんにちは。Vtuberのさくやです。
創作に使えそうな西洋音楽のお話を更新していく予定です。
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今回は、身近な楽器であるピアノについて簡単にお話していこうと思います。

まず結論からですが
ピアノはいつ「ピアノ」になったのか、といいますと、それは19世紀でした。

実は、意外と近代的な楽器なのです。

とはいっても本屋や楽器屋を覗いてみると
17世紀の「バッハ」や、18世紀の「モーツァルト」や「ハイドン」の「ピアノ曲」の楽譜が売っていたりしますが、
それらはピアノではなく、前身の鍵盤楽器で演奏された曲ということになります。

では
前身の鍵盤楽器、そしてフォルテピアノからモダンピアノへ至る過程をざっくり解説します。

1.前身の楽器たち


チェンバロ
16~17世紀に使用された楽器です。
チェンバロはドイツ語で、英語ではハープシコード、フランス語ではクラブサンといいます。
見た目は小さなグランドピアノに似ていて、鍵盤は二段になっています。

足は細く、美術品のように装飾をされているものが多いです。
また白鍵と黒鍵の色が反転されていることも多いです。
これは当時白鍵が象牙で作られており、高価だったので、鍵盤数の少ない方に使われたなどと言われています。

音の強弱は、弾く側の人間には調整できません。
ですので二段で「弱い音が出る鍵盤」と「強い音が出る鍵盤」で分かれています。

また、ピアノのように反響を使って「ジャーン」と音を伸ばすことができないので、
「トリル」という指を細かく動かす奏法を使って、音の長短を調節します。

余談ですが
人道的な処刑のために開発された処刑器具、「ギロチン」を設計、製造したのは
ドイツのチェンバロ職人・トビアス・シュミットだと言われています。


クラヴィコード

14世紀に発明され、18世紀までよく使用された鍵盤楽器です。
見た目はアップライトピアノに似ていたり、色々です

チェンバロと違って、ある程度指で音の強弱を調節できます。
ですが、クラヴィコードの音は小さいです。

私が鍵盤楽器の講座を聞きに行ったときは、小さなホールの空調をすべて切って、
ようやく後ろまで少し音が聞こえる、といったくらいでした。

『クラヴィコードを弾く婦人』 (1665) 、ヘラルト・ドウ、ダリッジ美術館、ロンドン。


そのボリューム感などから、この絵のように室内で演奏される機会が多かったと予測されます。

2.フォルテピアノからモダンピアノへ


鍵盤楽器のみならず、楽器の進歩の歴史というのはとにかく音量の増幅が常に大きなテーマでした。
それに加えて18世紀後半から、大音量で音が鳴る楽器の需要が急上昇しました。

どうしてかというと、コンサートホールで音楽鑑賞をする文化ができたからです。

王や貴族の権力が強かった時代は、彼らの宮殿やお屋敷などで演奏会を開いていましたが、
18世紀後半には市民革命と産業革命によって、経済力のある市民も出てきましたので
大きなコンサートホールや劇場を建てて、料金さえ支払えば誰でも入場・鑑賞ができるというシステムが一般的になっていきました。

大きな会場中に音が響くような楽器の需要が格段に上がったということです。
また産業革命による科学分野の革新によって、それがかなうようになったというのもあるでしょう。

それまでは繊細な家具や美術品のようだった鍵盤楽器が、
黒塗りの巨大マシーンのような「ピアノ」へと変貌したのです。

因みにピアノのフルネームは「フォルテピアノ」といいます。(ピアノフォルテということも)
フォルテは「強い音で演奏してね」という意味の楽語、逆にピアノは「弱く」という意味です。
弱い音から強い音まで自在に出る楽器、という意味で名付けられました。

少しややこしいですが、19世紀以降のモダンピアノ(スタンウェイなど)と区別するため、
18世紀に生まれたピアノをフォルテピアノと記載することもあります。

では
創作にピアノを登場させる際のポイントを簡単にお話ししたいと思います。

3.創作へ活かすために~小説、脚本、漫画など


呼称はとりあえず「ピアノ」でいいと思います。
架空の世界が舞台なのか、実在の過去にタイムスリップなのかなどにもよりますが、
比較的自由に登場させることができる楽器ではないかと思います。

先述したように、チェンバロの製造職人が処刑器具の設計などを委託されていた史実もありますので、
楽器の設計などを使って、ストーリーの流れに活かしていただくことなども王道かと思います。

一つ留意するポイントとしては、18・19世紀時点でピアノは比較的モダンで都会的な楽器であったという点です。
もし作品の全体的な設定が17〜19世紀あたりの場合で、「古の伝説で聖女が歌い、演奏していた」というシーンなどがあるのならば、伝説上の人物に持たせるのは竪琴、或いはクラヴィコードなどの古い楽器の方が旧時代的な雰囲気は出るでしょう。

4.創作へ活かすために~楽曲、BGMなど


ピアノは「一人でオーケストラ並みの表現ができる」ともいわれるほどの存在感のある楽器です。

ピアノ独奏の魅力はもちろん、合奏に使用する場合も最強で、
相性の悪い楽器を探す方が困難です。
他に伴奏の役割が持てるハープなどとは敢えて組み合わせたりしないくらいで、そうでもなければ無限に使い方を想像できます。

古めかしい表現が必要な際はチェンバロ、クラヴィコード、教会や学校などの空間を表したい時はオルガンなど、使い分けていただけると表現したい空気感がより伝わりやすいかと思います。

おわりに

以上で今回のお話を終了いたします。
ピアノの魅力の魅力が伝えられることと、そしてこの小さな知識が創作活動のお役に立てることを望みます。

またお会いしましょう。











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