いつか東の幼馴染が心から並び立てますように

スマホアプリゲーム『魔法使いの約束』の舞台化『舞台 魔法使いの約束 第2章』通称まほステが、明日で千穐楽を迎える。
あまりに劇薬、良すぎて開いた口が塞がらず宇宙に放り出されたような気分で、終演後しばらく天王洲アイルを彷徨ってしまった。

推しである東の幼馴染を見て、改めて思ったことをメモ。

シノは一人で生き抜こうとしていた。その手が汚れてでも、誰かを出し抜いてでも、また自分の何かが奪われてでも、孤児院で終わらない搾取をされ続けることが耐えられなかったのだろう。野心とまではいかずとも、自分の責任ではない理不尽には屈することができない人なのだと推する。

ブランシェット城で、はじめて役目と居場所を与えられた。
ヒースクリフに出会って、はじめて自分が魔法使いの自分で良かったと思えた。
ヒースクリフの友人として恥じない自分になるために、他者から評価される手柄や地位を求めた。
願うだけでなく、行動が伴うのが彼の立派なところ。
ただ悲しげもなく立場の低さを受け入れながら、そのまま自分のことは愛して、ヒースクリフのために野望を持つこと。これが彼の生き方なのだろう。

それが、ヒースクリフにとっては背負うには重すぎる期待でもある。
ヒースクリフは、城の後継ぎという役目に魔法使いの自分は相応しくないと思っているのだと思う。
これ以上目立つことなく、ある種自分らしく生きていくことを願っている。
立場に縛られた関係でなく、シノと純粋な友人関係になりたいと思うヒースクリフは、愛されて育った者の豊かさが伺える。

同じ魔法使いとあれど、孤児の小間使いを貴族の息子の友人として繋ぎ合わせたヒースクリフの両親は、本当にヒースクリフを想っているのだろう。
身分や外面よりも、自分達より遥かに長くこの世に留まるであろうヒースクリフが孤独にならないことを選んだ。
孤独だった二人が繋がった。

今のところ、二人の生き方のコンセプトは違う。
シノはヒースクリフと並び立つ為に地位と名誉を手に入れることを生き甲斐とする。

ヒースクリフは、そんなものがないところでシノと繋がりたいのだと思う。地位や名誉そのものより、繊細な心の繋がりを大切にするような人だから。

自分とヒースクリフの間にある、絶対に埋まらない育ちや身分の違いの溝を、シノはそのままにしたい。美しいものを、尊いものを、そのまま侵さずにいたい。それを守ることこそがシノに与えられた使命だから。
もし友人になれるなら、それは自分が社会的に認められる立場になってから。自分自身が溝を埋め立ててからだ。
ヒースにその溝を飛び越えさせるようなマネはしたくないのだ。

なのに、ヒースクリフはそれを飛び越えてこようとする。何も持たない自分でも友人でいたいと言う。

シノはいつか、「立場に関わらずシノそのものを大切にするヒースクリフ」を認め、受け止められると良い。
それは、今の自己愛で完結させることでなく、ヒースクリフの愛を受ける自分を認め、愛することだ。

そしてヒースクリフもまた、シノが誇りに思うヒース自身を受け止め、誇らしげに笑える日が来ると良い。

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