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さくさく文庫①~水滴の転生~

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2023年1月に初めてKindle出版した短編小説集「さくさく文庫①水滴の転生」。 その本に掲載した短編小説と関連記事を集めました。小説はどれも途中まで無料で読めますので、試し読…
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#短編小説

【短編小説】水滴の転生

 気がついたとき、わたしは仲間達と一緒に天上から地上へと飛び降りている最中だった。  わたしは水滴。  最初は雨として地球という場所に降りそそいだ。降り立った場所は広大な海の上で、すでに降り立っていた仲間達との再会を果たして大いに盛りあがった。しかしそんな盛りあがりも束の間、わたしは蒸発して天上に戻ってきた。  次に気がつくと、今度も地上へ向かって飛び降りている最中という状況は同じだった。だが前回とは異なり、落ちるスピードがゆるやかで、なにより自分自身が素敵な形に着飾ら

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【短編小説】いちばん大好きだった

「いまさら無理だよ」  そう言って、きみは僕から視線をそらした。  きみに拒絶されたことにショックを受けて、僕は黙り込む。  小学生の頃から仲がよく、僕たちはいつも一緒に遊んだ。  きみはとても物知りで、きみが僕に聞かせてくれる物語は、僕をワクワクさせ、ドキドキさせ、せつなくさせ、何度でも聞きたいと思わせた。  いつも一緒にいた。  中学生の頃も。高校生の頃も。大学生の頃も。  けれど、いつのときも僕は、きみと共に歩む道を第二候補として扱っていた。  ひどい話だ。

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【短編小説】100円の誇り

 僕の職場は大所帯だ。  しっかりと数えたことはないけれど、同僚は数えきれないくらいいて、入れ替わりも激しい。勤務時間は朝10時から夜10時まで。よく考えたら休憩時間もない。いわゆるブラックな職場だ。 「おはよう」 「おう、おはよう」  目覚めた僕の上と下には、僕と同じ赤色の装いの同僚たちがいる。 「重ねられるのキツいよな」 「一番下のヤツ大丈夫かな? おーい」 「朝から重労働だよな、まったく」  僕の職場は、どこにでもあるような回転寿司店だ。  僕は生まれた時から

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【短編小説】今日はここまで

 昨日までは穏やかに過ごしていた。  なにも困ったことは起こらず、ただただ平凡な日々だった。  平凡すぎてつまらないくらいだった。  けれど今日、突然に不穏な空気が辺り一面にたちこめた。  こんなおそろしい状況があってもいいものか?  生命に危機がせまっている。  はやくここを抜け出したい。  はやく!  はやく!!  はやく!!!  ところが、夜が更け、今日はこの不穏な空気のなかで私は立ち止まることとなった。  はやくここから立ち去りたい。  私は一晩中、恐怖

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はじめての電子書籍

さくさく初の短編小説集、 「さくさく文庫① 水滴の転生」が 現在、無料キャンペーン中です。 本日(1/17)の16:59まで、 Amazonにて無料でダウンロードできます! 表紙から本文まで完全自作の 手作り電子書籍です。 この機会に、ぜひご覧いただけると嬉しいです! ◆関連の記事はこちらです ↓

noteでご紹介いただきました!

先日kindleにて、初めての短編小説集を出版しました。 「さくさく文庫①水滴の転生」です。 有難いことにたくさんの方にダウンロードしていただき、お読みいただけたようです。本当にありがとうございます!感無量です! お忙しい中レビューを書いてくださった方もおられ、大変感謝しております。どのレビューも何度も読み返しました。今後の創作の力になります! ありがとうございます!! そして今日の記事ですが、この本をnoteでご紹介くださったお二方の記事をご紹介したいと思います。