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ブサイクに生まれて良かった!!【最終話】

あさ子と別れて、すぐに家に帰る気になれなかった。

どこか落ち着いた雰囲気のお店はないかと探していたら、一軒のカフェ。

吸い込まれるように店内に入る。

すると、優しそうなおばさんが出迎えてくれた。

「いらっしゃい。 さあさあ、中に入って…」

促されて中に入る。

そこは、なんともいえない落ち着いた雰囲気、優しい空気……。

不思議だわ……何故だかレオのお屋敷の空気と一緒。

「レオが、お世話になりました」

「えっ、レオ…?」

「レオは、私の息子よ」

「えっ、お母さん?!!」

「わがままな息子でごめんなさいね~さあさあ、座って。レオのところで、お気に入りだった、フルーツジュースはいかが?」

「あ、あれすっごく美味しかったんです」

ジュースが運ばれてきた。

え~~~!! 飛び上がるほど、びっくり!

そこには、なんと、ケメコさん!

「ケメコさん、どーしてここに?」

「どーしてなのか私が聞きたいわよ!! 気がついたらここにいたんだから」

そういえば、マサオが言っていた。

マイナスなエネルギーを発していると、こちらの世界にひっぱられてしまうって……。

ケメコさんは、アンデルセンを誘惑して、レオをだまそうとしたんだったわ。

私が、こちらに帰ってきたときに、一緒にひっぱられてしまったのかな~

かわいそう~ 彼女にとって、こちらの世界は、何重にもつらい試練が待っていそうな気がする。

なんか責任感じちゃうな~

「ブーコさんは、責任なんか感じなくていいのよ~みんな、自己責任!

ケメコさんは、ここで、たくさんのことを学んで向こうに帰ったときには、すごく成長しているから大丈夫よ。いつ帰れるかはケメコさん次第だけど」

その話しをふてくされて聞いているケメコさん。

本当に大丈夫かな~ 帰れるのかな~

レオのお母さんってすごい人なんだわ。

人のこころが読めちゃうんだ。

私が、レオのことを好きなこともきっと知っているはず。

「ブーコさん、レオのこと見守ってあげててね。レオにとっても、すごい成長のチャンスだから。さあさあ、ジュースを召し上がれ」

一口飲む… あ~ これ、これ、この味!美味しい~

「美味しいでしょ~?」

レオのお母さんは、テレパシーで会話ができるんだ。恐いくらいひとの気持ちがわかるのだ。ウソは絶対につけない。

レオと同じでとても穏やかで、あたたかい人。

あ~レオに会いたいな~

今頃どーしてるかな~

突然、私がいなくなって、マサオとマリアさんもビックリしてるだろうな。

すると、

「マサオ君の場合、あなたと同様に事情が、わかっているから大丈夫よ。

ただ、マリアにとっては、ブーコさんは、最初からいない人ということになってるから心配する必要がないの。

あなたが再び、戻った時に記憶が再開し、あなたがいなかったという感覚もないの。

なので、再び会った時にあなたを忘れてるってことはないから安心して。

こっちに戻った時、あなたのお友達もそうだったでしょ?」

「それじゃ、マサオは、こっちのみんなの記憶には、ないということなんですか?マサオは、存在してないんですね?」

「そう、今、マサオ君の存在を知っているのは、私たちだけよ。こちらに戻ってきたときは、当然のようにマサオ君が存在するの」


マサオは、もうこちらの世界には、戻ってこないんだろうな~

あんなに素敵なパートナーもできたし……。

マサオには、あの穏やかで平和な世界が合っている。

でも、私は、もうマサオに会えないかもしれない。

レオにも……。

私が、再びあの世界にもどることなんかできるのだろうか?

急に悲しみが襲ってきて、涙をこらえることが出来なくなった。

こんな状況では、とてもポジティブになんかなれない。

今の私は、あの世界に戻ることなんてできない。

あんなに能天気なブー子は、どこに行ってしまったんだろう。

恋するってこんなにつらいことなんだ。

「ブー子さん、そんなに落ち込まないで。何故、あなたたちが、別れなければならなかったか、わかる?」

「私が、レオにあいまいな態度をとって、ちゃんと気持ちを伝えなかったからだと思います」

「それは違うわ。もし、気持ちを伝えたとしても、また違った状況が起きて別れがきたはずよ。別れを引き起こしたのは、ブー子さんの潜在意識のなかの思い込みなの。

表面的、顕在意識では、ブー子さんは、前向きに気持ちを切り替えるのが上手で、うまく自分の精神のバランスを保てるんだけど、心の奥深く自分でも気づいていない自分が、悪さをしてしまうの。

あなたは、自分が幸せになれるはずがないって思っていない?

要するに、これは、自分が引き寄せたことなの。

過去に経験した傷ついた恐れが引き起こしたことなのよ。

そうして、この感情に気づかず、フタをしてしまったら、状況は、違っても、また同じような感情を経験してしまうの。

だから、今回、これを引き起こした思い込みに気づき、この辛い感情を手放してごらんなさい。

手放すということは、気づくってことよ。

そうすると、感謝の気持ちが生まれてくるの。

辛い気持を乗り越えて、感謝の気持ちが持てるということは、どれだけ人を成長させるかしれないのよ」

「今は、まだすぐには、感謝する気持ちにはなれません。でも、何故別れなければならなかったのか、なんとなくですが理解できた気がします」

「精神的に、すぐに立ち直れないのは、当然よ。そんなときの対処療法のお薬は、美味しいものを食べたり、お気に入りの場所に行ったり、お友達と話したり、本を読んだり、映画をみたり、お風呂に入ったり、いい香りにつつまれてみたりして、少しづつ精神を落ち着かせていくの。自分を大切にしてあげるの。一瞬でも、ほっとできたら、その小さなことに感謝してね…」

「このジュースに感謝です! あの……、また、来てもいいですか?」

「もちろんよ、そして、ケメコさんのお友達になってあげてね」


少し、こころが、軽くなり、久しぶりの小さな小さな我が家に帰った。

あっちの世界から戻ってきてからは、時間があるときは、カフェに通いつめてケメコさんの話し相手になったり、お店を手伝ったりした。

カフェは、連日女性たちが、はるばる遠方からもカフェに癒されに来る。

レオのお母さんは、ひとりひとり丁寧に話しを聞いて悩める女性たちの力になっているようだ。

カフェに来る相談者と話をしていて、わかったことは、悩みを誰かに解決してもらいたいというタイプのひとは、何度来ても一向に悩みが減らないということ。
依存してしまっているひとは、なかなか前に進めないみたいだ。

悩みがあっても、それを解決できるのは、自分しかいないということ。

自分の意識が変わらなければ、どんなに素晴らしい人に相談にのってもらっても変わらないということを学んだ。

ケメコさんは、あちらの世界では、美人でちやほやされていたが、こちらの世界では、一向に男性にモテないので、かなりショックをうけている。

これからが、ケメコさんが成長のチャンスということだ。

毎日、いろいろな人たちと接触して、充実した日をすごしているうちに、レオを愛しているし、会いたい気持ちは変わらないが、いつしか執着心みたいな感情は消えていた。

レオは私のことを大切に思ってくれていた。そう思えることが幸せだって言っていた。こういうことだったんだ。


毎日が、感謝だってことが身に染みてわかってきた。


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なんだろ~眠っちゃったみたいだ。

なんだか、心地よい風がふいてる。

お花の香りがする。

目を開いてあたりをみると、そこはレオの屋敷の東屋ではないか!

ビックリしていると、マリアさんが、

「ブー子さん、そんなところで寝ていたら、風邪をひきますよ」

って、何事もなかったように言うではないか。

「レオは?」

「今、お部屋にいらしゃいます。呼んできます」

マリアがレオを呼びに行った。

はたして、レオは、来てくれるのだろうか?

ドキドキ、ドキドキ 心臓がいつもの十倍も動いてる。

「ブー子さん!!!」

レオは、駆け寄りおもいっきり抱きしめてくれた。

「ただいま……レオ。」

おわり


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