ブサイクに生まれて良かった!!【3】夢の国の掟


「ここは、天国じゃないの?」

「ブー子は、死んで、天国に来たと思ってたのか?」

「うん、最初は、ドッキリテレビだと思ってた。違うと気づいてからは、レオ様と心中したと思ってた」

「ハハ…、なるほどね、その発想ブー子らしいな。俺は、あっちの世界、要するに俺らの世界のことだけど、そこでレオと出会ったんだ。ブー子も知ってる通り、俺って昔から、不器用で競争世界では上手く生きていくことが出来なかった。会社に入って、売上成績でその人の評価や価値が決められて、仕事が出来ないとクズみたいに思われて…。

俺らの世界ってなんか、殺伐としていると思わないか?

必死に仕事して、何のために働いているのかわからなくなって仕事をやめたんだ。

ほっとして、のんびりしてたら、今度は、まわりの人の見る目が、キツイんだよ。

仕事もしないで、ぶらぶらして社会のクズみたいな…。

出来ないやつは生きてるだけでクズなんだよ。俺らの世界は。

自分は駄目人間で、罪悪感に苛まれて鬱になりかかっていたんだ。
そのころにレオに会ったんだ。

レオは、そんな腐ってた俺を立ち直らせてくれたんだ。レオは、ほんとにいいやつで、俺にとって初めての信頼できる友達なんだよ」

「マサオも苦労してたんだね~」

「アハハ…ブー子が言うと苦労が苦労に聞こえないよな。ブー子は、むかしから、明るくていつも友達に囲まれていたもんな~。だから、レオが好きになるのもわかる気がするよ。

俺もブー子みたいな性格だったら、もう少し会社で頑張れたかもしれないな。

あっ、それで話し戻るけど、レオってすごい能力の持ち主であっちの世界とこっちの世界を自由に行き来き出来てしまうんだ。

俺らがこっちに来れたのは、レオとばっちり波長が合ってここに来れたんだ。

だから、俺らの世界の皆が来れるとは限らないんだ。いや、むしろほとんどの人が来れないと思う。

罪悪感や競争心、怒りや嫉妬心、独占欲や依頼心などを持っていたりすると、レオと波長が合わないんだよ。

ここにいる人たちは、穏やかな人たちがほとんどだ。

たまーに、そうじゃない人たちがいるけど、彼らの多くがレオの屋敷で働いている。

そうして、みな成長して屋敷から出て、平和に暮らすんだ」

「えっ、じゃアンデルセンもそうなんだ~だから、あんなに感動してたのかな~

あの、メイドさんも自分なんかって卑下していたから、屋敷で自信を付けて卒業するってことね」

「彼らは、この世界では、ブサイクだから、どうしても自分を卑下して自分を過小評価してしまうんだよ。でも、レオといると、自己肯定感が作られて自分に自信が出てくるんだ。

でも、たちが悪いのは、周りにちやほやされてテングになって傲慢になってしまう人たちなんだ。

あまりにも強いマイナスなエネルギーを発していくと今度は、逆にレオ様があっちの世界に行く時にいっしょにひっぱられて、あっちの世界に行ってしまうんだよ。ほら、あそこに男性に囲まれている娘がいるだろ?

あの娘なんかひっぱられてむこうの世界に行ったら最悪だ。あの性格じゃ友達もできないよ」

「あれっ、さっき私をすごい目でにらんでいた女性だわ」

「ケメコって言うんだけど、美貌を鼻にかけて、男性を誘惑しているんだ」

「ガハハ… ケメコ! チョーうけるんですけど…」

「笑ってる場合じゃないぞ~ケメコの狙いは、レオなんだぞ。 妻の座を虎視眈々と狙ってるんだからな」

コシタンタン?


「タンタンといえば、タンタン麺!なんかお腹すいたから、食べながら、お話しましょ」

「ったく!ブー子は、色気より食い気だな! レオはこんなブー子でもいいのか?まったくもって疑問だ」

「何ぶつくさ言ってんのよ、マサオも食べましょうよ」

そこへ、レオ様が来て、

「おいおい、マサオ、僕のブー子さんを誘惑しないでくれよ」

「おーレオ、元気か? 驚いたよ!相手がブー子だったとは…。

でも、レオ、安心してくれ。俺とブー子は小学校からの友達で、死んでも、恋愛関係には発展しないから…

しかし、レオまで、ブー子って呼んでるんだな~りっぱな“風子”って名前があるのにね…」

「えっ?ブー子さんはふう子さんだったんですか?」

「そうよ~でも、10人が10人とも ふ にテンテン付けちゃうんだけどね~」

ブー子でいいですよ。そのほうが、私に合ってるから…」

「しかし、マサオとブー子さんが、友達だったとは、びっくりだな。

近いうちに3人で食事をしよう!マサオ、また連絡するよ。

ブー子さん、疲れたでしょう?そろそろ屋敷にもどりましょう」

まだまだ、マサオに訊きたいことが、山ほどあったけれど仕方ないわ。

レオ様と私は、再びリムジンで屋敷に戻った。

再び、屋敷のゲストルームに戻ってきた。

夜は、夜で間接照明のあかりで、ロマンチックな雰囲気を醸し出し、アロマの香りが心地よい。

メイドさんが、待っていてくれて、

「ブー子さま、おかえりなさいませ。街は、いかがでしたか?」

「すごく楽しかった~食事が特に、美味しくて大満足だったわ。ところで、あなたのお名前を聞いてもいいですか?」

「はい、わたくしは、マリアと申します」

「へ~、マリアさんか~すてきな名前ね~もしかして、姓は、安部さんだったりして…アベマリアなんちゃって…」

「そうです!アベマリアです。ブー子さんすごいです!なぜ わかったんですか~」

「え~~っ、 ほんとにアベマリアなの!!」

冗談のつもりが、ホントだったとは…しかし、こんなに美しくて謙虚で、ほんでもって名前までもがアベマリアなんて…もったいなさすぎる。

「マリアさん、今日、パーティーでケメコさんっていう人に会ったんだけど知ってる?」

「はい、だんなさまを訪ねて何度かいらっしゃいました」

「どういう人?」

「ブー子さんほどではないですが、とてもお美しい方で、社交的で、女性たちのあこがれの的なんです」

クソ~ 褒められてるのは、わかっているが、素直に喜べないわ~


「だんなさまが男性のあこがれの的なので、世間ではお似合いと噂されていますが、だんなさまはケメコさまのことをあまりお好きではないと私は思っております。そうしたら、こうしてブー子さまをお連れになったので、納得がいきました」

「どうして、そう思っていたの?」

「だんなさまは、容姿だけで人を判断する方ではないんです。ケメコさまは…その……なんというかあまりお優しくないので…ほとんどの男性たちは、美しさに気をとられて、気がつかないのですが、だんなさまは、ちゃんと見抜いていらっしゃいます」

「ケメコさんは、レオ様に好かれていないことは、わかっているのかな」

「わかっていると思います。でも、負けず嫌いな性格だし、絶対に振り向かせてみせると思っていると思いますよ」

「マリアさん、すごーい!ケメコさんとレオ様の心理分析できちゃうのね」

「はい、いつもお近くにいますので…ケメコさまの目を見ていればわかります。ケメコさまは、私みたいなメイドには、無関心なので無防備になってるんです。ブー子様、ケメコ様には、気をつけたほうがいいと思います」

「へ~、レオ様って、女性にモテるのね~ そういえば、マサオが言っていたわ。ケメコさんがレオ様の妻の座を狙ってるって」

あれっ、マサオの名前を出したとたん、マリアさんの顔がぱっと明るく、ピンク色になったど…

「マサオって知ってる?レオ様の友達の?」

「はい、何度もお会いしています。とても素敵なお方で、お優しくて穏やかで…」

あれ~マリアさん、もしかしてマサオに惚れてる…

「あのね、私、マサオと幼なじみで、友達なのよ!あいつは、ほんとにいいやつなのよ!今度、マサオとレオ様とごはん食べようって約束してるから、マリアさんも一緒に食べようよ!」

「そんな、とんでもございません…ご一緒だなんて…」

「いいから…いいから…、マサオも喜ぶよ、きっと…」

マリアさんは、恐縮しながら、おやすみなさいと言って部屋を出ていった。

再び、すてきなバスルームでバラの花びらのお風呂に入った… あ~ゴクラク、ゴクラク…

こんな夢のようなところに迷い込んでしまったけれど、あっちの世界では、私やマサオがいなくなってしまって、どうなってるんだろう?

会社は、無断欠席でクビになっちゃうのかな?
ヒエ~課長怒ってるだろうな~ 

ここの方が、どれだけ居心地がいいか、でも戻ったときのことを考えると、頭をかかえてしまう。

そうだ!戻らなければいいんだ!

レオ様と結婚して幸せに暮らす?

イヤイヤ、レオ様を愛しているなら、それもありだが、今は愛しているとはいえない…

私って悪女?

レオ様の心をもてあそんでる?

あ~、どうすればいいんだ~

まぁ~あれこれ考えてても、仕方ないか!

なるようになれ…だ!

おやすみなさ~い。


狭い私の部屋、時計を見ると、ギエ~、遅刻だ~。

変な服を着て、靴がないので、そのまま裸足で外に出て走る。なのに全然進まない!!
駅の階段にやっと着いたが、階段が険しくて怖くて上がれない。

やっと上がれたと思ったら、足を踏み外した。

ギャ~~、

周りを見ると、レオ様のゲストルーム。は~良かった~ 夢をみてたんだ。 

目が覚めてしまったので、起きて庭に出た。

外は、まだ暗い。

よく手入れされている庭には、、花たちが咲き誇り、美しい…

花の香りが心を癒してくれる。

ふと、前をみるとレオ様が庭のベンチに座っているでは、ないか。

「レオ様、どうしたんですか? こんな時間に…」

「ブー子さん、あなたこそどうしたんですか?僕は、ブー子さんが屋敷に来てくれたことが、本当に嬉しくて美しい花を愛でながら感慨にふけっていたんだよ」

「レオ様…」

「あっ、ブー子さんの気持ちは、よくわかっているつもりだよ。僕の片思いだってことは、承知だよ。

だから、僕の気持ちを重く考えないでください。ブー子さんは自由だよ。ありのまま、思うままでいてくれていいんだ。

僕がブー子さんを好きだからって、ブー子さんも僕を好きになる必要はないんだ。

もちろん、好きになってくれたら飛び上るほど嬉しいけどね。

僕がブー子さんを好きな気持ちに偽りはない。その気持ちだけで僕は途方もなく幸せなんだ」

なんて深く、純粋な愛なの… 

「それから、ブー子さん、僕のことは、レオって呼んでくださいね。

さあ、だんだん冷えてきたので中に入りましょうか」

レオは、優しく肩を抱いて、部屋の中へ招いてくれた。

「ブー子さん、お休みなさい。ゆっくり休んでくださいね」

レオは、みんなが言うように、ほんとうに心が広くて、誠実な人だわ。

あら、私、なんだか胸のあたりがキュンキュンしてる。

この気持ちは、なんなの……

レオ……


朝、小鳥のさえずりで目が覚める。

目ざまし時計で起こされるのとは大違い。

なんて、すっきりした目覚め。

起きて、身支度を整えて食堂へ行った。そこにアンデルセンがいた。

昨日まで、あんなに素敵に感じていたアンデルセンに魅力を感じなくなっている自分に驚いた。

レオが来るのを待っている私。

そこへ、マリアが来て、

「だんなさまは、急用で、お出かけになられたので、ブー子さま、お食事をどうぞ召し上がっててくださいということです」

ガーン! なんということでしょう…私、がっかりしている!

レオがいないから… え~私…どうなっちゃったの~

え~~~!!

もしかして、私、レオに恋しちゃった!!!

【4】につづく

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