購入しませんか?
シェア
さくらゆき
2022年4月13日 17:28
「どうしてお前が刀を持っているんだ!」恒太が恒孝に敵意を向けた。「恒太、父を『お前』呼ばわりするのは感心しないなぁ。」不敵に笑う恒孝。「もしかして、貴方話を聞いていたの?」波留日の質問に、「そうだよ。立ち聞きして悪かった。」と悪びれもない顔で刀を持たない方の手で妻の髪に指を絡ませた。波留日の顔がカアッと赤くなった。
2022年4月20日 16:39
「ふっ、やはり抜けないか。」恒孝は自嘲した。「あなた、この刀をどうするつもりなの?」妻の問いに恒孝は、「鍛冶屋に行って、融かしてもらう。鞘が抜けないなら、まるごとね。」と答えた。
2022年4月27日 12:41
栄子には妖刀【櫻葉】から靄のようなものが見えた。それは恒太の身体にまとわりつき、恒太の中に侵入していった。恒太は刀を握ったまま、虚ろな目で立ち尽くしていた。栄子は胸騒ぎがした。「あれ」は恒太ではないのではないか。
2022年5月4日 21:54
波留日は和室に救急箱を持ってきて、恒孝の左手の怪我を手当てした。「波留日、ありがとう。」恒孝は今までの心のこもっていない笑顔とはうって変わって、穏やかな笑みを浮かべている。「出血量の割には、傷が浅くて良かったわ。」波留日は救急箱の蓋を閉めた。
2022年5月11日 17:50
「確かに、『あれ』は恒太の顔つきではなかったね。他人を殺すのに躊躇がない感じだった。」恒孝は気絶している恒太の手から妖刀を外した。「じゃあ…恒太の中にいるのは、『誰』なの?」波留日は顔面蒼白で意識のない息子の手を握った。