2022年12月の記事一覧
さらぬわかれ 108
栄子が病室に入ると、横たわる桂のそばで両親が泣いていた。
「お父さん、お母さん…」
姉は助からなかったのではないかという不安が、栄子を襲った。
「栄子、何処に行ってたの!桂…桂が!」
栄子の母が、桂を見るよう促した。
「桂…お姉ちゃん?」
恐る恐る、栄子は姉の名前を呼んだ。
さらぬわかれ 109
春の陽光が暖かい日。
地元の高校に進学した栄子は、丘の上の桜の下にいた。
「栄子!」
栄子と同じ高校の制服に身を包んだ恒太が、丘を登ってきた。
「恒太、もうすっかり脚治ったね。」
栄子は力強く丘を登りきってきた恒太に微笑みかけた。