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さらぬわかれ

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村の1本の咲かない桜の木。 その木には、曰くがあり…。 8歳のまま成長を止め意識のない姉とその妹の話。 GREEのコミュニティで発表していた小説(2009/1/17~)の完全… もっと読む
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2022年6月の記事一覧

さらぬわかれ 81

「…うちの息子って、そんなに大した男なのかい?」
恒孝が栄子に問い掛けた。

「恒太は、祟りのことで村人から避けられている私と友達でいてくれました。
十分すぎるほど優しい男の子です!」

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さらぬわかれ 82

栄子ははじめて言われた言葉に戸惑った。
自分は姉に対して何も出来ない、役に立たない人間だと思って生きてきた。
強くて優しいなんて、自分から一番遠い言葉だと思っていた。

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さらぬわかれ 83

栄子は救急車を呼んだ後、両親に電話をかけた。
彼らとまともな会話をしたのは、何年ぶりだっただろうか。

こういう時、栄子の側にはいつも恒太がいてくれた。
しかし、恒太は先祖に体を乗っ取られていて身動きが取れない。

足から崩れ落ちそうなのを耐えながら、栄子は桂に付き添って救急車に乗り込んだ。

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さらぬわかれ 84

栄子は、そっと病室を出た。

(お父さんもお母さんも…お姉ちゃんのこと、見捨てたわけではなかったんだ。)

栄子は、もしかしたら連絡しても両親は病院に駆けつけてはくれないかもしれないと思っていたのだ。

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さらぬわかれ 85

栄子は、両親に気付かれないよう、そっと病院を立ち去った。

深夜の村は、昼間と違って、闇の中で魔物が蠢いていそうだった。

それでも、栄子は行かなくてはならなかった。
さくらの元へ。
大事な人達を失わない為に──

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