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さくらゆき
2022年6月1日 17:19
「…うちの息子って、そんなに大した男なのかい?」恒孝が栄子に問い掛けた。「恒太は、祟りのことで村人から避けられている私と友達でいてくれました。十分すぎるほど優しい男の子です!」
2022年6月8日 20:30
栄子ははじめて言われた言葉に戸惑った。自分は姉に対して何も出来ない、役に立たない人間だと思って生きてきた。強くて優しいなんて、自分から一番遠い言葉だと思っていた。
2022年6月15日 16:56
栄子は救急車を呼んだ後、両親に電話をかけた。彼らとまともな会話をしたのは、何年ぶりだっただろうか。こういう時、栄子の側にはいつも恒太がいてくれた。しかし、恒太は先祖に体を乗っ取られていて身動きが取れない。足から崩れ落ちそうなのを耐えながら、栄子は桂に付き添って救急車に乗り込んだ。
2022年6月22日 17:31
栄子は、そっと病室を出た。(お父さんもお母さんも…お姉ちゃんのこと、見捨てたわけではなかったんだ。)栄子は、もしかしたら連絡しても両親は病院に駆けつけてはくれないかもしれないと思っていたのだ。
2022年6月29日 20:21
栄子は、両親に気付かれないよう、そっと病院を立ち去った。深夜の村は、昼間と違って、闇の中で魔物が蠢いていそうだった。それでも、栄子は行かなくてはならなかった。さくらの元へ。大事な人達を失わない為に──