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さらぬわかれ

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村の1本の咲かない桜の木。 その木には、曰くがあり…。 8歳のまま成長を止め意識のない姉とその妹の話。 GREEのコミュニティで発表していた小説(2009/1/17~)の完全… もっと読む
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2022年5月の記事一覧

さらぬわかれ 77

波留日は和室に救急箱を持ってきて、恒孝の左手の怪我を手当てした。

「波留日、ありがとう。」
恒孝は今までの心のこもっていない笑顔とはうって変わって、穏やかな笑みを浮かべている。
「出血量の割には、傷が浅くて良かったわ。」
波留日は救急箱の蓋を閉めた。

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さらぬわかれ 78

「確かに、『あれ』は恒太の顔つきではなかったね。
他人を殺すのに躊躇がない感じだった。」
恒孝は気絶している恒太の手から妖刀を外した。

「じゃあ…恒太の中にいるのは、『誰』なの?」
波留日は顔面蒼白で意識のない息子の手を握った。

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さらぬわかれ 79

男手である恒孝は手を負傷しているし、波留日や栄子では意識のない恒太を彼の部屋に運べない。

波留日は和室に布団を敷いて、そこに恒太を寝かせた。

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さらぬわかれ 80

「もう…恒太に東京の高校を受験させようとは思っていないんですか?」
栄子は恒孝に尋ねた。

「だって君たちの恋を邪魔したら悪いじゃないか。」
恒孝はしれっと答えた。

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