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さらぬわかれ

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村の1本の咲かない桜の木。 その木には、曰くがあり…。 8歳のまま成長を止め意識のない姉とその妹の話。 GREEのコミュニティで発表していた小説(2009/1/17~)の完全… もっと読む
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2022年4月の記事一覧

さらぬわかれ 73

「妖刀【櫻葉】?そんな物をどうして床の間なんかに置いているの。」
栄子はあの恐ろしい気配を思い出していた。
恒太たち住人は、ずっと側に置いているから感覚が麻痺しているのだろうか。

「危険な物だからこそ、お義父さんは目の届くところに置いておきたかったのかもしれないわ。」
波留日が恒太の祖父の肖像画に目を遣った。

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さらぬわかれ 74

「どうしてお前が刀を持っているんだ!」
恒太が恒孝に敵意を向けた。

「恒太、父を『お前』呼ばわりするのは感心しないなぁ。」
不敵に笑う恒孝。

「もしかして、貴方話を聞いていたの?」
波留日の質問に、
「そうだよ。立ち聞きして悪かった。」
と悪びれもない顔で刀を持たない方の手で妻の髪に指を絡ませた。
波留日の顔がカアッと赤くなった。

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さらぬわかれ 75

「ふっ、やはり抜けないか。」
恒孝は自嘲した。

「あなた、この刀をどうするつもりなの?」
妻の問いに恒孝は、
「鍛冶屋に行って、融かしてもらう。
鞘が抜けないなら、まるごとね。」
と答えた。

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さらぬわかれ 76

栄子には妖刀【櫻葉】から靄のようなものが見えた。
それは恒太の身体にまとわりつき、恒太の中に侵入していった。

恒太は刀を握ったまま、虚ろな目で立ち尽くしていた。

栄子は胸騒ぎがした。「あれ」は恒太ではないのではないか。

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