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さくらゆき
2022年2月2日 12:17
「母さん、父さんはこっちに来ていないよね。」 恒太は警戒して辺りを見回した。「ええ、帰ってきていないわ。あの人、村にいるの?」 波留日は夫が村にいることすら知らなかったようだ。
2022年2月9日 18:03
「あの人は、この村に伝わる『祟り』に振り回されるのに嫌気がさして出ていったの。」波留日は寂しそうな顔で、ポツリとつぶやいた。「…恒太のお父さんも、先ほどそう言っていました。でも、本当に『それだけ』なんですか?」栄子は前のめりな気持ちになった。何も妻子を置いて家を出ることはないはずだ。
2022年2月16日 16:03
仏間には黒漆の金で彩られた立派な仏壇が置かれていた。壁には恒太の祖父母やその前の代の人達の肖像画がずらりと飾られている。栄子は仏間に入るのに気が引ける思いだった。「栄子、大丈夫だよ。おいで。」恒太が栄子の手を引いた。入ってしまえば、意外と平気になった。