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#紫陽花の季節
植物の精【紫陽花の季節、君はいない】
2023年12月28日。どんよりとした曇り空。俺が勤める植物公園は、今日が仕事納めである。
「夏越くん、お疲れ様!」
設備の点検を終え、事務所に戻ってきた俺に園長が話しかけてきた。
「お疲れ様です、園長」
園長とは、初対面の時に正体を知らずに話しかけられたこともあり、人間が苦手な俺でも身構えることなく接することが出来る。
「今年は、ドラマの影響で例年より忙しかったわね」
植物学者が主人公の
紫陽花の季節、君はいない 88
「気をつけて行ってきて下さいね、夏越殿!」
「くれぐれも、失礼のないようにな。
人間にもそれ以外にも。」
御葉様と涼見姐さんに見送られる形で、俺は八幡宮を後にした。
鳥居の外に出ると、急激に蒸し暑くなった。
厚めの雲の切れ目から、光が射し込んでいる。
俺は一旦自宅に戻り、夏越の祓で拝受したリース型の茅の輪守を玄関の壁に吊るした。
まるで彼女を探し出す決意表明のようだと思った。
行動を始めるな