036.スプーン1杯の認知症
「天気いいし、気分良かったら桜の花見に行かん?」
「行こうかぁ・・・。
でも昨日、初めて夜眠れんかった。こんなことなかったのに・・・」
2週間前も同じことを言っていた。その前は、「最近ずっと眠れない・・・」と言っていた。
桜の咲く近くの展望台のある山に車で上がった。展望台へ続く歩道をゆっくり歩くと、テンションが上がった声で、昔話が始まった。
『昔ね、隣の作業員(私の父)が、うちの店に(母の実家)に上がり込んで、来てて、友達が「作業員の人がカメラ持ってるから、貸してもらおう!」って言うから、貸してもらえんかね?とお願いしたら、貸してくれて・・・今考えたら、よくまぁ図々しく借りたし、貸したよね!それで、お礼にお土産買おうって、枝に穴がくりぬいてあるパイプが10円で、それを買ってあげたんよ!しんじられんやろ?カメラ借りて、あんな安いものを・・・それを最近、口にくわえて吹いててるから、なんで木なんて咥えてるん?って見たら
あの10円のパイプ(笑)もう、何十年も前のモノよ!!!(※60年前くらい?)まだ持ってた!
で、どうしたん?なんでこれまで使わなかったん?って聞いたら、穴が開いてるから使えんかったらしいんよ!(笑)しかも、もらったときから穴が開いて、最初から使えなかったんだって!!!!信じられんやろ!』
と楽しそうに話していた。自分が大切に思われていたことを思い返しているんだろうな。
過去の思い出は、消えないようで・・・思い出はミルフィーユみたいに織り成して今があるんだな・・・と、思えた。し、きっと、そうなのだろうと・・・
母は自分を不幸だと言う。城下町の端で子供時代を過ごして、友人を羨んでいた。そんな母をみじめだなって思っていた。羨ましく思うことを。。。
最近は、その友人たちの配偶者が亡くなり、一人で過ごす友人に可哀そうよねと言う。もう、勝手に言っといてくれ。と思う。
幸せを決めるのは、自分の心