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すずめの戸締まりは映画としては良かったけどダイジンがかわいそう。

※ネタバレ
※キャプションは2022「すずめの戸締まり」製作委員会より

この間すずめの戸締まりを観てきましたー。感想は、総合的には良かったんです。良かったんですが、私は結局要石に戻ってしまったダイジンが気になってしまった。それについて。



ハッピーエンドの中にある違和感

ダイジンって可哀想じゃないですか??確かに鈴芽を主人公としてみた時のストーリーとしてはハッピーエンドかもしれない。感動もしたし、つまらないなあと思う瞬間もなかった。でもストーリーの中に出てくる話を繋ぎ合わせると、要石=人身御供の成れの果て、とわかるので単純にハッピーだけで終われなくなってしまった。

ダイジン視点でのストーリーではとても残酷というか、鈴芽はあまりにもダイジンの立場に対して他人事すぎじゃない??と思いました。

ダイジンは、元は人間だった可能性がある(少なくとも生きものだった、草太が要石の姿では三脚のイスだったことから見た目通り猫とは限らないとわかる)わけで、地震の化身であるミミズを封印するために人身御供とされた訳ですよね。

作中に「これから何十年もかけて厄災を封じる要石になる。それは人間の身に余るほどの誉れ」との話が出てくるんですよ。でも要石になる過程で草太がイスに座ったまま凍りついてゆく姿は、とても幸せなものには見えなかったし、ダイジンも元々はそういう過程を経て要石になったわけですよね?
それを、いきなり鈴芽が要石の封印を偶然とはいえ解いて、ネコの姿で自由の身となったボロボロのダイジンにニボシをやって「うちの子になる?」というわけです。すっかりその気になったダイジンは大喜びで「すずめ、すき!」と要石の役割を草太にうつしてしまう。要石では鈴芽の側には居られないし、鈴芽から好意を寄せられる草太は邪魔な存在だから。

でも草太を要石にされて失いそうになった鈴芽は、ダイジンに大嫌い!と言い放つ。自分が「うちの子になる?」と誘っておいて。言われたダイジンは「すきじゃなかった、、」「すずめのものになれなかった」「せめて人の手で要石に戻して」と、最初のボロボロのネコの姿に戻り、ミミズを封じる役目を果たすために要石に戻ってしまう。それに、鈴芽がダイジンを要石として再度封印する時もその後も、ダイジンに対する感謝も謝罪もほぼない。草太が無事で良かった。環と和解できて良かった。ミミズを封印できて地震を防げた、過去の自分に会えて自分の心を救えた。良かった。でも、その裏でダイジンは要石になって今後何年もあの世界に留まり続けるんですよ?ボロボロで空腹状態になって。誰からも好意を向けられずに。感謝もされずに。鈴芽は草太が要石になった時はあんなに悲しんでいたのに。
そしてそんな要石になることを「人の身に余る誉れ」だなんて言われても納得できないです。

鈴芽がダイジンに「うちの子になる?」と言ったことと、環が母親を失った鈴芽に「うちにくる?」と言ったのは、たぶんリンクしているんだろうし、映画魅せ方やストーリーとしても仕方ないのかもしれない。でも地震を封じるための犠牲として要石(ダイジンとサダイジン)がいるってことや、ダイジンの気持ちに感情移入してこの映画を観ると、なんて残酷なんだろう(しかも周りは気づいてない)と思ってしまった。


観た人たちは要石になったダイジンの犠牲をどう思ったんだろう??

この映画、私は一人で観たんですけど、もし一緒に観た人がいたらどう思うんだろう?ハッピーエンドで良かった?映像が綺麗?色々な手がかりが散りばめられていて何度も観たくなる?RADWIMPSの曲最高??確かにそれもあるけど、ストーリーにただのハッピーエンド「だけ」感じてしまう人がいたとしたら、ちょっと怖いなとも思う。

自分が共感しやすい立場以外の他の立場にたって考えるという視点がすっぽり抜けていると感じるので。

まあ、誰かを救うことは他の報われない誰かがいる可能性があるのは仕方がないことでもあるとは思うんですけどね。


まとめ

鈴芽視点ではハッピーエンドに間違いないけど、そのハッピーエンドの下地には要石になった人の犠牲がある。天気の子ではその他大勢よりも愛する人を選ぶアンチヒーローみたいなものを感じた。鈴芽が草太を一度要石にしかけた時は、今回は逆なんだ…!と思ったけど、最後までみたら結局人はエゴを捨てられない存在なんだなあと思った。どれだけ綺麗に飾られていても、そこにはエゴがある。ただ、そのエゴを綺麗に飾るとこんなにもスッキリしたラストに見える。

ここまで色々書いたけど、全体的な感想としては良かったです!映像も綺麗だしストーリーもおもしろかった。ただ、火垂るの墓みたいに主人公以外の視点では同じストーリーでもかなり違うものになるんじゃないかなあって。
この映画を観て疑問を持つか持たないか、持ったとしたらどう解釈するか、そこだけでもかなり白熱しそう。こういう余韻を残すのも監督が狙ったことなのかもしれないなあ。あと、この映画色んなところにジブリが散りばめられてますよね。魔女の宅急便、ポニョ、千と千尋、トトロ、もののけ姫、、、そういう細かいところもあって、何度か見直したいなあと思います。配信されたらまた観てみようかな。見逃しなんかもありそうだし。

小説版。これも読んだらより深く理解できるかな。

曲も良いんですよー。
ハルカカナタも良いけど、私は特にすずめって曲が好きです↓

再視聴したら、もっと別の解釈が出るかもしれないなあと思いました。
おしまい。

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