「ノケモノと花嫁」完全版のストーリーを追いつつ考察してみる2~ギンとイタル~
ヘッダーはノケモノと花嫁完全版2巻表紙より。
※2022年8月28日の記事です。
前回の記事はこちら↓
※全巻読み終わった人向けなのでネタバレ全開です。
※※あくまでも自己解釈です。また再読して編集するかも。
考察するにあたってこのように考えました↓
・ストーリーは現実世界と燃えるキリンの世界(精神世界)に分かれている。
・燃えるキリンの世界は、世羅ヒツジが見ている夢(精神世界)に近いのかなと。
・ただその精神世界は完全な幻ではなくて、現実世界にも干渉できている。
・登場人物の一部(世羅晶午など)は輪るピングドラムの眞悧みたいな、亡霊のような存在。
・コドモ=虐待児(通常の意味もある)
・オトナ=虐待親(通常の意味もある)
・キリン=燃えるキリンのコドモ。虐待を受けたコドモたちの負の意識の集合体。
・キリンの血=全てを可能にする呪われた血のこと。燃えるキリンのコドモたち全てがもつ力。
・燃えるキリンの世界=現実をもとにした精神世界(キリンの血の力で現実世界にも干渉する?)
・燃えるキリンの集団=オトナを殺しコドモを助けるための組織
・虐待は親から子へと連鎖しており、虐待の連鎖の輪から抜け出すためには、他者からの愛情が必要。
1でも書きましたが、上記のように解釈して考察しています。
人間の姿のイタルはギンの身体を借りた姿だった
最終巻を読むまでギンとイタルの関係がいまいち理解できなかったのですが、元は虐待を受けていた青い髪のギンという一人の少年=ギンと、のちにその姿をもらった実体のない生まれる前の存在がイタルなのかなと。(イタルは現実には存在しない、アストラル体的存在で、ギンの身体にイタルの魂的なものが入ったのが麒麟塚or羽熊塚イタル。)
まとめると、
ギン
→本来の外見はクマのキグルミの中のイタル(青髪の少年)。
→中身は燃えるキリンの世界での兎河ギン
→燃えるキリンの世界ではおかっぱ王子の外見となる(おかっぱ王子の外見は、虐待児時代に見た隣の家の家族の少年?)
→もとの青い髪の少年身体はイタルに譲った
→青い髪の少年時代、母親から虐待されていた。
(完全版3巻表紙のギン 外見は隣の家の俳優夫婦の息子(おかっぱ王子)中身は虐待され死んだ青い髪のコドモのギン(兎河ギン))
イタル
→虐待されていたギンのそばに現れた実体のない生まれる前の存在。
→別名、羽熊塚・麒麟塚イタル。
→身体はなくアストラル的存在だったが、青髪のギンやおかっぱ王子、クマの姿などで作中に現れる。
→のちに身体を青髪の少年ギンからもらう。
→1話から登場する青髪の少年、羽熊塚イタルの外見になる
※様々な動物の寄せ集めの伝説の動物=キリンは虐待されたコドモたちの想いの集合体としての意味もある?
(完全版2巻の表紙のイタル 外見は生前のギンで中身は実体のないコドモのイタル(羽熊塚・麒麟塚イタル))
…めちゃくちゃわかりにくい。
便宜上最初から登場している兎河ギンとしての金髪赤目の外見はおかっぱ王子と呼ぶことにします。
現実世界で一度も外に出ることなく亡くなったコドモのギン
ギンの最初の記憶は、両親から愛されていた記憶。
でもいつしかそれが嘘だったように脚に鎖をつけられて食事や水も十分に与えられず衰弱しきっていた。ギンは母親から虐待されていた。
部屋に閉じ込められ鎖に繋がれたギンは、ある日窓の外から見える家の中に美しい母親とコドモの幸福そうな姿を見る。(コドモの外見はおかっぱ王子)
まるで自分の世界とは違う美しい世界を見てしまい絶望するギン。
でもこの時に見たコドモの外見(おかっぱ王子)は、燃えるキリンの世界での自分の外見になる(憧れの存在への投影?)
ある日、痩せて脚が細くなりすぎたせいで足枷が抜けるようになったことに気づいたギン。
部屋を抜け出して玄関にたどり着くと、そこには可愛い女の子がいた。
これが世羅洋子(燃えるキリンの世界でのヒツジ)。
隣の家に住んでいるという少女は、クリスマスクッキーと「アリス」という女の子の人形(燃えるキリンの世界のアリス)を手渡した。
洋子とギンが会ったのはこの1回だけで、その後現実世界で会うことはなかった。
また、その後母親にクッキーが見つかり踏みつぶされてしまう。
(おかっぱ王子の過去でアリスに補修してもらったボタンを切られるエピソードとも似ている)
唯一自分のもとに残ったアリス人形は、ギンの心の支えとなり、母親に見つからないようにベッドの下に隠していた。
幸せがわからないギンは自分が不幸なのかすらわからない。
それを憐れむように見るもうひとりのコドモ(外見はおかっぱ王子、中身は多分イタル)が、「あの女(母親)は狂ってる。このままだと君は殺されるよ。だから殺される前に殺すしかない。」と言います。
斧を持ってベッドの下に隠したアリス人形を除き込む母親。
アリス人形をバラバラにしようとしている。アリス人形を守るため、ギンはついに母親を斧で殺す。
要約すると、虐待され続けたギンが母親に殺されようとしていた。また大切なアリス人形を壊そうとしていた。
ここに燃えるキリンの世界のイタルが関与したことで、ギンがただ母親に殺されるだけではなく→自分が死ぬ前に母親を殺す&燃えるキリンの世界で兎河ギン(おかっぱ王子の外見)として復活、アリス人形を栗鼠野アリスとして復活させたまでが本編までの前章なのかなと。
燃えるキリンの世界でのギンと現実世界でのギンの違い
「それすらもやがて…」の次のコマに斧の描写があるので、その後手足も切られてしまったのか。残酷すぎる。
これはおかっぱ王子の過去編と同じなんですよね。
だからおかっぱ王子の話は現実であったもとのギンの話なんだと思います。
燃えるキリンの世界で徳大寺と世羅が話した「やりきれない話」は現実にあったことで、それを燃えるキリンの世界ではおかっぱ王子の過去としてすげ替えられてる。
そして徳大寺のいう「やりきれない話」は、被虐待児経験のあるキリンである世羅晶午からすると、「胸がむかつく話」でしかないわけです。
勝手に産んで勝手に虐待して、殺そうとして殺されたオトナ。それをコドモ視点で見る世羅にとっては徳大寺が思うよりもよっぽど胸糞悪い話なんでしょうね。(徳大寺は母親も亡くなったこと、無理心中したことにも視点が向いている気がする)
おかっぱ王子の外見をギンが使っているのは、一度窓から見たことのある彼を自分に投影した?から…というか鏡も見たことなかったんじゃないか。
だから自分の姿がわからない、自分と同じコドモで、自分の理想の姿の外見を真似て燃えるキリンの世界に蘇った…とか。
…ここまでが現実世界のギンの話。
RUNAWAY34~53にあるおかっぱ王子の外見のギンの過去の話とかぶっているのは、おかっぱ王子のギンともとのギンが同じだからだからだと思います。
ただ四肢を切断されたら斧持てなくね?じゃあ先に斧で殺してた?でもそしたら自分の手足切らんよな。というところで、現実世界と燃えるキリンの世界が完全に隔絶されたものではなく、物理的にも影響しあっているし、キリンの血の力が働いているのかなあと。
→キリンの血とは、全てを可能にする呪われた血のことで、燃えるキリンのコドモたち全てがもつ力のことらしいです。プードルちゃん情報。(RUNAWAY33「キリンの血」)
兎に角、ギンの現実での死亡を以って、燃えるキリンの世界での復活を遂げた。復活したギンはおかっぱ王子の外見をした兎河ギンとして現れ、両脚は傷みの記憶として残しておくということで車椅子姿。現実では人形でしかなかったアリスも、ギンのお付きのメイドとして燃えるキリンの世界へ。
そうしてもとのギンの外見=その後はイタルとして燃えるキリンの組織としての活動を始めた。
ヒツジに愛されたことでキリンからクマへ変化したイタル
クマになる前の麒麟塚イタルは、燃えるキリンの組織メンバーとして、兎河ギンと共にオトナを殺しコドモを救う活動をしていたっぽい。
功績はなかなかだったのではないでしょうか(小説版ではそうだった)。
だけどある日助けたコドモの姿をみて、複雑な感情を自覚する。(薄々感じていたことだったかもしれないけど)
昔のギンと同じように鎖で繋がれ虐待されている男の子をオトナから助けた麒麟塚イタルは、男の子に「もう大丈夫だよ」と声をかけたが、その男の子は、手を差し伸べたイタルの手のひらに自分の親の血を見て泣き叫ぶ。
ショックを受けるイタル。
ここのシーン、男の子と生前のもとのギンの境遇が似ているんですよね。室内に鎖で監禁されているし。
助けたイタルに対して感謝よりも男の子は泣き叫んでしまう。
それって最終巻でも出てきた、もとのギンの「本当は誰も殺したくなかった。殺されていたとしても自分が殺すくらいなら殺したかった。」という気持ちとかぶる部分があると思う。(これは世羅晶午の徳大寺に殺してほしかったという気持ちとも似ているのかも)
それでも親は親だし自分が親を殺すくらいなら、自分が殺されたって良かったという、なんとも苦しい話。でもこれが虐待されていたギンの本心でもあるんだろうな。
その後複雑な思いを抱えたまま燃えるキリン本部へ戻ったイタル。
地下室には愛されないまま亡くなったコドモの死体が並んでいる。(RUNAWAY5「怪物の夢」でヒツジが迷い込んだ地下と同じ。)
それを見て「さびしい」と涙を流すイタル。
そこへ迷い込んだヒツジが現れる。ヒツジに愛してるといわれ、結婚の約束をする。
イタルはいつの間にか制服からクマのキグルミ姿になっている。おそらくここから麒麟塚イタル→羽熊塚イタルへと変わった瞬間。
イタルはヒツジに愛されたことでキリン→クマへ変わった。
燃えるキリンの輪から抜け出る可能性を手に入れたのかも。
もともとイタルは実体のない概念のような存在で、ギンやエイジとは違い身体も持たない姿のない存在。
麒麟塚イタルは愛されたことがなかったが、ヒツジの愛情によって変化し羽熊塚になった。それをクマに堕ちたという表現をするのは、燃えるキリン的には業火を使えるキリンよりもクマの方が格下だからかな。
キリンの業火は悲しみなど負の感情を糧にしているみたいだし。
ただ、ギンに対してのイタルの裏切りはひどい。
ここで小休止なのですが、ギンからすると仲間として組織に誘ってきた相手が「結婚するから組織辞めるわ!苗字も変えて心機一転するわ!」とか言い出したら「裏切り者!!ふざけんじゃねぇ!!!」ってなりますよね。
しかも決定的なセリフ「お前、母親に似てきたな」はないでしょ。さすがに。
酷すぎる笑
でもイタルもイタルでやっと見つけた自分を愛してくれる人との結婚…そして世羅→ヒツジに受け継がれつつあった虐待の連鎖を止められる可能性。
ギンとアリス、イタルとヒツジは切っても切れない関係だし、仕方がない…のかもしれない。でも私はイタルひでぇwと思いながら読んでました笑
生まれてから殺されること、愛されないことの苦しみを知った
話を戻して、生まれる前の存在であるイタルは、愛されずに死んでゆくコドモたちを見てきたので「生まれてから殺されることがなによりの不幸」だとわかってしまった。
それまで生まれることすらできなかった自分が一番不幸だと思っていたのに。RUNAWAY109「私たちの約束」では、それを語っています。
けれど、キリンに飲み込まれたイタルを探しに来たヒツジに「愛してる」と告げられたことで、オトナをただ憎む存在であるキリン→クマに変化した。
そして、生まれる前の存在で生まれることが恐ろしかった→愛されたことで生まれる決意する、へ意識が変化したのかな。
ここは良くわからないけど、イタルは生まれる前の存在(精神体とか受精卵とかその前の状態に近い概念的存在?)で未来の洋子のコドモとしての一面もあるのかなあと。
オトナを憎むキリンとして生きてきたところを、愛していると洋子=ヒツジから告げられたことで、燃えるキリンの虐待の輪から抜けて未来に生まれる存在になったのかな。
イタルの正体は結局何なのか
でもそれだと、燃えるキリン世界のイタルとヒツジは結ばれても現実世界の洋子とイタルは親子?だから結ばれはしないよね??結婚や花嫁の話は燃えるキリン世界だけの話?それともそれとは別で最後のページに出てきた男がイタル??イタルは洋子のコドモではない??それともイタルではない人が洋子の未来の花婿???
燃えるキリンの世界に残ったギンの話からすると、クマの姿ではお見舞いにも行けないだろうから現実世界での身体はイタルにくれてやったとのこと。
じゃあ最後のページに出てきた青年はやっぱり、青髪のギンの身体を貰ったイタルなんじゃないかなあ。そしてそれは洋子の血縁ではないから結婚しても問題ない。
堕胎した洋子と世羅の子の精神体の一部がイタルだったとしても、復活した青年ギンの身体を受肉したイタルと2人でだったら、虐待の連鎖を乗り越えていけるんじゃないかという気がしてくる。
イタルは、ヒツジと過ごした羽熊塚イタルと世羅洋子が堕ろしたコドモとしてのイタル、生まれる前の存在であるものの複数を兼ね備えている可能性もあるのかもしれない?
結論はよくわからないけど、一言
結論はよく分からないのですが、キリンの世界だけでなくて現実でも洋子(ヒツジ)とイタルが結ばれたと思います。この2人、ほんとに好きだ。
作品の最後にもあるように2人で華麗にハッピーエンドを迎えたと信じてる。
-------------------
後から気づいたのですが、このポストカード見たら完全に大人イタル×洋子じゃないですか???
スペシャルエディションの特典のポストカードの絵柄(著作権の都合上全部は載せられない)を見ると、どう見てもオトナになった洋子と抱き合ってる男性はイタルなんですよ。
(この髪のハネ具合と髪色!)だから、洋子のコドモはイタルなのか問題はさておき、現実世界でも洋子とイタルが結ばれたと解釈しておきます。
華麗につづく(編集すると思います)
完全版↓
リンクを貼っておいてあれですが、4巻目だけはアニメイトで売ってるイクニの原作小説付きなので、欲しい方はそちらで買うと良いかもしれません。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?