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江戸の遊び・浮世絵文化に思わず感心「江戸のおもちゃ絵」展

先日、たばこと塩の博物館(東京都墨田区)で行われている「江戸のおもちゃ絵展」を見てきました。

私はおもちゃ屋の娘に生まれ、自分でもおもちゃ屋を経営してきたことから、大のおもちゃ好きです。
また、おもちゃの変遷や社会との関わりにもとても興味があります。
戦後すぐに父が店を始めた頃のおもちゃ、自分が子ども時代に遊んでいたおもちゃ、その後自分が店で販売してきたおもちゃなど、時代と合わせてふり返ってみると、おもちゃが時代を映す鏡のように思えて、興味はつきません。
 
今回は、江戸時代のおもちゃ・遊び事情がわかる「おもちゃ絵」の展覧会です。とても見ごたえがあり、3時間近く滞在してしまいました!
展示作品は撮影可能でしたので、画像をご紹介しながら、私なりに面白かった点をレポートいたします。


江戸の「おもちゃ絵」って?

江戸から明治時代にかけて、子ども向けの浮世絵が多数作られ、人気を集めていました。
内容は、すごろくや福笑いといった、現代のボードゲームのようなものから、絵本のように物語を1枚の紙におさめたもの、図鑑のように同じジャンルの事物を並べたもの、切り抜いて組み立てるペーパークラフトのようなものと、本当に多彩です。そうしたものの総称が「おもちゃ絵」です。
 
江戸の木版印刷の技術は、世界的に見てもレベルが高く、多くの出版物が庶民にも楽しまれていたそうですね。浮世絵が海外でも注目されるのには、そうした背景がありますが、おもちゃ絵はその子ども版といったところです。

「分福茶釜」の物語を描いたおもちゃ絵
切り抜くとミニチュア凧が作れます

まずいちばん感心したのは、江戸時代に、子どもたちが紙=印刷物で遊んでいたということです。どのおもちゃ絵も、木版とは思えないほど色とりどりで美しく、印刷も細かくて見飽きません。おもちゃ絵を手にした子どもたち、うれしく、楽しかったでしょうね。
 
よく考えてみると、当時は写真がない時代、物事を見せる、伝えるには絵しかなかったのでしょうね。
「ものづくし」という、同じジャンルの事物を並べたおもちゃ絵には、図鑑や絵辞典のように、教育的役割もあったようです。でも、色とりどりで見ていて楽しい絵ですから、今でいうところの「知育おもちゃ」のようなものだったのかもしれません。

左はおもちゃ、右は虫などの生き物づくし

元祖プラモデル?組み上げ絵

絵を切り抜いて組み立てると、建物や物語・芝居の一場面などが完成する「組み上げ絵」にも驚かされました。
いわゆるペーパークラフトですが、その精巧なこと!
プラモデルに熱中する現代の子ども(大人も?)の姿と重なります。

描かれる題材には神社仏閣、おみこし、山車なども多かったようです。お祭りが庶民の暮らしの中の楽しみだったことがうかがえますね。
 
また「忠臣蔵」など、誰もが知ってる物語も人気の題材だったようです。

吉良邸討ち入りの様子。下は組み立て前のもの

元祖ヒーローおもちゃ・着せ替え人形?

武者絵と呼ばれるジャンルも人気を集めたようです。源平合戦の武者たちを図鑑のように並べたものは、まるで仮面ライダーカードのよう。切り抜いて組み立てるものはプラモデルや超合金?こうしたものが後のヒーローおもちゃへつながるのだなと思うと興味深いです。

切り抜いて、糸などを使って組み立てることができます

女の子はやはり、人形遊びが人気だったようです。姉様人形と呼ばれる紙人形は、衣装を着せかえることができました。紙の着せ替え人形や、リカちゃん・バービーなどのファッションドールの源流ですね。

かんざしや櫛などのパーツも豊富です

幕末~明治、世の中の変化を映すおもちゃ絵

江戸時代の終わり、開国をして西洋文化が入り、やがて明治時代へという激動の時代。世の中の変化が見て取れるおもちゃ絵もありました。
例えば、江戸時代の終わり、外国人の姿を描いたもの。

また、明治になって鉄道が開通すると、さっそくおもちゃ絵にも登場します。

いつの時代も、子どもは大人が興味を持つものが好きで、大人の真似をしたがります。だから、子どものおもちゃ・遊びは世の中を映す鏡になるのだと、改めて感じました。


プラスチックや金属玩具がまだなかった時代、おもちゃの素材は「木・布・紙」です。
今、紙のおもちゃというと折り紙と紙飛行機しか思い浮かびませんが、今回の展示を見て、紙は昔の子ども達にとっておもちゃの大事な素材であり、遊びながら生活の知識を得られる唯一無二のものだと実感しました。
当時の日本は紙や印刷物の技術が優れていたので、海外に比べ知識とかリテラシーの高い人が多かったのかもしれませんね!
 
「江戸のおもちゃ絵」展は、2024年1月28日まで、たばこと塩の博物館で開催されています。おもちゃはもちろん、江戸時代の文化や浮世絵に興味のある方にはとても面白い展覧会だと思いますので、おすすめですよ!
 https://www.tabashio.jp/exhibition/2023/2312dec/index.html

1月4日より、展示内容が入れ替えになるそうです。今回ご紹介した絵の展示はないかもしれませんが、新たに展示される絵も楽しみですね。


昭和27(1952)年から55年間続いたおもちゃ屋「さくらトイス」の思い出話を毎月更新しています。こちらもぜひご覧くださいね。

編集協力:小窓舎


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