162. 川沿いの神様

八百万の神様と言いますが、私の周りもまさにその通りで、喜びの神様、風の神様、愚痴の神様などなど、私にとっても、目に映るものは今の自分を見直す神様です。

ジョギングを始めて13年ほどになります。
川沿いの大神様もそんな感じで、笑顔が可愛らしい、ふたりの仲良しおばあちゃんです。

ひとりは 背筋がシャンとした、せいたかのっぽさん、ひとりは腰のやや曲がったおちびさん。
毎朝ニコニコと並んで川沿いをゆったりとお散歩しています。

ふたりの神様に会ったのは今から2年前。
在宅勤務を始めた頃です。

はじめはあちらから声をかけて来てくださり、以来すれ違うたびに「おはようございます」と、透き通るような笑顔を投げかけて下さいます。

その道はジョギング で100メートルの猛ダッシュをするクライマックス地点です。

「お、おぉはょうぅっ、、ごっ、ござぃまぁあぁすぅ〜」

初めの頃は、ゼェゼェと息を切らしながら すれ違いざまに答えていただけでした。

そのうちだんだんと、

朝の7時30頃にそこを通るらしいこと
雨の日はいないこと
他の時間はいないこと
2人にとてもよく似ているペアのおばあちゃんとは関係ないこと

そんなことがわかってきました。

そして私も、おばあちゃん達を遠くから認めるとスピードを緩めて息を整え、数メートル手前から先に声をかけるようになりました。
おばあちゃんも嬉しそうに応えてくれます。

いつからか、ふたりに会えた日はとても気持ちがよくて、曇りの日も心が晴れるようになりました。

ある日、いつものように挨拶をしたら「おはよう」と返ってきました。
「おはようございます」ではなく「おはよう」。

なんだか、おばあちゃんのお茶飲み友達になれたような、くすぐったい嬉しさが広がりました。

「わたし、神様とお友達になれたみたい」

桜が散り、若葉が芽生え、日差しが淡いイエローグリーンにキラキラと増していく、そんな春の朝の出来事でした。

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