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進化論:調理は利点も欠点もある。感染症は減ったが、腸内細菌は多様性を失った。

 火を使った調理は、人類に莫大なメリットをもたらしました。しかし、良い事ばかりではない。良い事も悪い事も、そして評価不能の事もあるようです。

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 例えば、食中毒は激減した。だが、代わりにヒトの免疫は劇的に弱くなったはずです。ヒトは腐肉を食べられませんが、この特徴を持つのはあらゆる動物の中でもヒトだけでしょう。

 また、良くも悪くも、ヒトの免疫系が晒される陶太圧は激変しました。しかし、78万年は進化には(おそらく)短すぎる。
 ヒトの免疫系は「新しい環境」に適応する過渡期にあるでしょう。つまり現代の食生活に適応していない。ヒト免疫は未だに攻撃的すぎるのです。
 あるいは、これが数々の免疫系の病気の根本原因なのかもしれません。つまりガンのことです。

 胃がん、食道ガン、大腸ガンなどは、必要が無くなったのに過度の攻撃性を捨てきれない免疫システムが原因なのかもしれません^^


 さらに付け加えると、ヒトの中途半端な免疫系は、呼吸器系の感染症も招くでしょう。78万年前よりも免疫は弱まっているでしょうから。
 呼吸器系に入りこむ細菌は、調理とは関係ない。でも例えば白血球の数が減ったら、消化器系も呼吸器系も影響する。
 肺炎になるでしょうね。
 
 ヒトの呼吸器系疾患は、他の動物よりも多いらしいです。この理由は直立歩行にあると言われています。痰が排出され難いのです。
 しかし、免疫弱体化も理由の一つもしれません。


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 次の話題。
 ここ20年ほどでヒト腸内の共生細菌が、ヒトの活動に大きく影響すると判明してきました。
 そして、その細菌の供給源は、口から入る「何か」です。かつては食事から多くの細菌を取り入れたでしょう。しかしヒトは殺菌するようになった。腸内細菌は多様性を失ったのです。
 これが何を意味するのかは、ほとんど不明です。しかし一つ重要な点が有ります。
 
 今日現在、ヒトの腸内細菌は、ほとんどが母親由来のようです。つまりヒトは基本的に母親と同じ共生細菌を持つ。
 まず新生児が最初に口にする細菌は母親の糞便らしい。出産時に口に入るからです。これが子供の腸内細菌のベースです。
 そして、その後も体外環境中の細菌を取り入れるのですが、それらは多くの場合に母親由来でしょう。例えば、母親の皮膚の常在菌です。

 一方で、ヒトが持つ遺伝情報は「ヒト遺伝子+共生細菌遺伝子」の総体で見ると、9割以上が共生細菌由来なのです。共生細菌は数千種類もいるからです。

 つまり、(システムとしての)ヒトの遺伝情報は大半が母親由来らしい。これは人以外の動物と決定的に違います。
 これが進化に影響しないとは思えない。
 ヒトは(他の動物と違って)際だって母親と似る可能性が高いのです(注1)。おそらくは、人以外の動物は(ヒトほどは)母親と似ていない(父親とはもっと似ていない)。

あるいは、この事がヒトが文化・社会(≑文明)を形成した決定的な理由なのかもしれません。

 なかなか興味深い事だと思いませんか? ^^

注1:さらに興味深い事に、母親と似る可能性が高いのは、特にメンタル面でしょう。身長や目の色はヒト自身の遺伝子で決まるのに対して、性格、嗜好、情動は共生細菌で決まる(らしい)からです。
 例えばオキシトシンは共生細菌が分泌している。だから「何をするのが幸福か」は共生細菌の遺伝子で決まるのです^^

 ざっくり言うと、ヒトは母親と同じ行動を取る。親が魚が好きなら子も好き。親が話し好きならば子も話し好き。
 つまり文化の継承です。
 実に興味深いです!


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