19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤② ピアニストとしてのセルゲイ・ラフマニノフ

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤②
セルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninoff, 1873-1943, ロシア)�
●現在、ラフマニノフは大作曲家として親しまれていますが、当時は超絶技巧のピアニストとして高い評価を得ていました。
当時のラフマニノフ作品は、スクリャービンやストラヴィンスキー、プロコフィエフなどの同時代作曲家たちに比べて、チャイコフスキーなど全世代に連なる保守的で前時代的なロマン派音楽として高評価を受けませんでした。
そのラフマニノフが、尊敬するチャイコフスキーの「子守唄」を自ら編曲してピアノ演奏したのがこの未発売のSPレコード(1940年頃の録音)です。
原曲に比べてかなり内声がクロマティックに動き、和声もテンションが加えられ、部分によってはまるでマル・ウォルドロンのJAZZピアノのような哀愁漂う何とも得難い響きです。
ラフマニノフには自作自演を始め、バッハからスクリャービンまで様々な作曲家の演奏がレコード録音として残されていますが、中でも一枚を選ぶとしたら、何の迷いもなくこのチャイコフスキーを選びます。

▶︎ピアニストとしてのラフマニノフは、親友のヨーゼフ・ホフマンと共にモダンピアニズムの先駆けだったことは興味深いところです。彼らは、いまではロマン派ピアニストとして崇められているホロヴィッツやモイセヴィッチといった若手を、自分たちの後継者として指名しました。現代的な観点からいうと、ロマン派と言っても差し支えない、いわゆるロシアピアニズムは、ホロヴィッツ辺りまでを指すのではと考えています。それ以降の多くのピアニストたち(オボーリン以降)は、むしろソビエトピアニズムであって、現代ピアニズムの始まりだったと定義しても良いのではないでしょうか。

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