19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤③ モーリッツ・ローゼンタール

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤③
モーリッツ・ローゼンタール(Moritz Rosenthal, 1862-1946, ポーランド)

●ショパンの弟子であるカロル・ミクリと、フランツ・リスト本人に学んだポーランド出身でアメリカで活躍した伝説のヴィルトゥオーゾ。若い頃はその超絶技巧的な演奏が過ぎて、評論家から苦言を呈されるほどでしたが、成熟するにつれて詩情溢れるショパン弾きとして、パハマン、パデレフスキ、ブゾーニ、ゴドフスキ、ホフマン、ラフマニノフ、ザウアー、ダルベールなどと並んで、世界的に賞賛され大成功を収めます。

リストの弟子にはいろいろなタイプのピアニストがいますが、ローゼンタールはベートーヴェンの録音を残していない数少ない弟子です。リストといえば、ベートーヴェンの弟子であるカール・ツェルニーの弟子なので、その他の弟子たちは皆、偉大なベートーヴェン弾きであることが多いのです。
恐らく、晩年のリストよりも、ミクリやリストの弟子のヨゼフィ(リストに就く前に学んだ)から学んだことの方が多く影響しているのではないかと思います。

ローゼンタールのレコードは、ミクリ門下のコチャルスキや、リスト門下のザウアーなどと並んで、ショパン演奏を語る上でも欠かせない歴史的名盤の宝庫です。数ある名演盤から一曲をピックアップするのは非常に難しいのですが、ここでは僕が初めて聴いたローゼンタール盤のショパン「エチュード ハ長調, Op.10-1」を選んでみました。
当時、ポリーニの機械的に完璧なエチュードを愛聴していた僕にとって、ペダルを極力抑えたレガート、繊細で美しいタッチで演奏されるローゼンタールのレコードはまさに衝撃的でした。
https://youtu.be/13bZhjSo4Jc

▶︎ちなみに、若き日のヴィルトゥオーゾとしての片鱗は、ローゼンタール編曲のJ.シュトラウス「美しき青きドナウ」( https://youtu.be/IbDWpdFLdBw ) や、リスト「ハンガリア狂詩曲第二番」( https://youtu.be/SuFxcFlT3-I )、などの録音で聞くことができます。
また詩情豊かなショパン演奏として「ワルツ第7番嬰ハ短調, Op.64-2」( https://youtu.be/Rucq0tWGloY )も必聴です。リズムの取り方、装飾音のあしらい、トリオ部分の美しさなど、隅々まで繊細で美しい超一流の名演奏です。

皆様からいただいたサポートは、ピアノ歴史的録音復刻CD専門レーベル「Sakuraphon 」の制作費用に充てさせていただき、より多くの新譜をお届けしたいと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。