2021.1.17 少しだけ悲しいお話

友人がいた。
地元に。

今はもういない。


しばらく、バンドをやっていた。
そのメンバーの1人であった。

小学校の時から遊んでいた。

今はもうない。

正確には、去年の6月で縁が切れた。

先述だが、彼とは小学校時代から遊んでいた。

いつもふざけて、面白い、ひょうきんなやつだった。

仲が良かった。

未だに覚えている、毎年クレヨンしんちゃんの映画を一緒に見に行っていた。

自由帳に自作キャラクターを描いて遊んでいた。

家にお邪魔して、PS2をやっていた。

中学校に入って、僕らは遊ばなくなった。


何となく、冷めたような態度。

少しずつ、人を馬鹿にするような性格。

多くのことを他人のせい、時代のせいにするように。

僕たちの間には距離が開いていった。

どれほどか。

僕たちの好きなもの、笑い方、正義。

全部、すべて、1から10まで、何もかもが変わってしまったあと。

今のバンドメンバーである、太鼓叩きと、彼ともう一度、出会った。

そこから、僕たちの止まっていた時間が動き出した。

2、3年ほど、バンドをやっただろうか。

曲を作り、ぼくたちの音楽をやりだした。

どこかで彼はすれ違っていった。

歌詞は書かない、歌わない、練習しない。

ぼくたちはあくまでもあそびだった。

あそびのなかで、全力だった。

ぼくたちは、3人で生きていた。つもりだった。

彼だけは、ぼくたちと同じ方向を向いていなかった。

時が過ぎ、彼を除いたメンバーで音楽をすることとなった。

" テツ "、だ。

" テツ "は、上手だ。

" テツ "のコーラスは響き、歌詞は甘ったるく、ベースの腕は確かであり、ぼくたち2人の誰よりも、センスがあった。

ぼくたちと同じ方向を向いていたのは、" テツ "だった。

また、時が過ぎ、彼は就職した。

失礼だが、予想通り仕事をやめた。

そして、遠く離れた僕のいるまちに来た。

最後のチャンスであった。

ここまで生きてきたぼくたち。

違う正義をお互いにもち、僕たちは、僕たちがすれ違うことはもうなかった。

彼の言うこと、彼の理想、彼の生き様、彼の人生、そして、彼の正義はもう、僕には届かなかった。

" 友人 "であった僕は、全力で伝えようとした。

しかし、彼には届かなかった。

彼は拒んだ。

彼は、彼の、彼だけの正義を貫いてしまった。

しかたがない。しかたがない。これは、しかたがない。

しかたがなかった。

今日をもって、僕は彼を思い出すことはないだろう。

彼もきっと、僕を腫れ物のように思っており、僕のことは思い出さないだろう。

彼はきっと、彼の正義を貫いて生きていくだろう。

もう一度、言う。

今日をもって、

僕は彼を忘れる。

思い出すことはもうない。

さようなら。

二度と会うことはない

友人よ。

少しだけ悲しい、お話し。

2021.1.17

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