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本日の一曲 20世紀前半のクラシック音楽

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連載「本日の一曲」のうち、1901年~1950年のクラシック音楽をまとめました。
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#本日の一曲

本日の一曲 vol.419 マルガリータ・レクオーナ タブー (Margarita Lecuona: Tabú, 1934)

マルガリータ・レクオーナさんは、1910年4月18日にキューバのハバナで生まれ、十代でハバナのプロアルテ音楽学校でギターをクララ・ロメオ・デ・ニコラ(Clara Romeo de Nicola)さんに、バレエをニコライ・ヤヴォルスキー(Nikolai Yavorsky)さんにそれぞれ学び、1930年ころから作曲を始め、舞台でギターを弾きながら歌っていました。 本日ご紹介する「タブー」は、昭和の時代を生きた日本人なら誰でも知っている曲であり、1930年代に彼女の叔父であるエル

本日の一曲 vol.417 リヒャルト・シュトラウス メタモルフォーゼン (Richard Strauss: Metamorphosen, 1945)

本日ご紹介するのは、リヒャルト・シュトラウスさんのメタモルフォーゼンです。弦楽合奏による曲で非常に美しい曲だと思います。 この曲は、1944年から1945年にかけてミュンヘン近郊のガルミッシュ=パルテンキルヒェンにあったシュトラウスさんの山荘で作曲されたもので、完成は1945年4月12日になります。 シュトラウスさんは、ドイツがナチス政権になってもドイツにとどまって活動していましたが、この曲の完成直後の4月30日にアドルフ・ヒトラーは自殺してナチス政権は崩壊し、5月7日に

本日の一曲 vol.400 マーラー 交響曲第5番 (Gustav Mahler: Symphony No.5, 1902)

歌手以外のソリストにとって、馴染みのない3大作曲家は、リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner)さん、アントン・ブルックナー(Anton Bruckner)さん、そして、グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)さんだと思います。ワーグナーさんはオペラばかり、ブルックナーさんは交響曲ばかり、マーラーさんは歌付きはあるものの、やはり交響曲ばかりです。この3人の作曲家には、ソリストが練習できたり、リサイタルで披露できる曲はまったくと言っていいほどありません。この

本日の一曲 vol.392 マーラー 大地の歌 (Gustav Mahler: Das Lied von der Erde, 1908)

グスタフ・マーラーさんは、1860年7月7日にボヘミアのイーグラウ近郊のカリシュト村(現在のチェコのカリシュチェ)で生まれ、1911年5月18日にウィーンにて50歳で亡くなってしまった作曲家です。 マーラーさんは、歌手以外のソリストにとっては、ソリスト用の曲がほとんどないため、あまり馴染みのない作曲家かもしれませんが、クラシック音楽の愛好家の間ではとても人気のある作曲家です。 マーラーさんの曲はあまり知らないという人が初めにマーラーさんのどの音楽を聴いたらよいのか、いくつ

本日の一曲 vol.387 レスピーギ シバの女王ベルキス (Ottorino Respighi: Belkis, Regina di Saba, 1931)

オットリーノ・レスピーギさんの曲については、以前「本日の一曲」で「ローマの祭り」を紹介したことがありました。 レスピーギさんは、1879年7月9日、イタリア・ボローニャで生まれ、1936年4月18日にローマにて56歳でお亡くなりになりましたが、本日ご紹介する曲は、晩年の1930~1931年に作曲された最後のバレエ音楽「シバの女王ベルキス」です。 シバの女王ベルキスは、旧約聖書に初めて登場する人物であり、イスラエル王のソロモンを訪れ、ソロモンを試すために難しい質問攻めをしま

本日の一曲 vol.352 ディーリアス 夏の歌 (Frederick Delius: A Song of Summer, 1931)

フレデリック・ディーリアス(1862年1月29日生~1934年6月10日没)さんは、イギリスの作曲家とされますが、両親はドイツ系であり、両親がイギリスに帰化したため、生まれはイギリスであり、生まれてからしばらくはイギリスで音楽教育を受けていたものの、その後の生涯からすると、その音楽のルーツはミクスチュアなものだったと言えます。 ディーリアスさんの両親の家業は羊毛業であり、息子が音楽の道に進むことを反対していた父親は、息子に仕事を与え、ディーリアスさんをスウェーデン、フランス

本日の一曲 vol.348 ジョン・ケージ ソナタとインターリュード (John Cage: Sonatas and interludes, 1948)

「4分33秒(1952)」で有名なアメリカの現代音楽の作曲家であり発明家、キノコの研究家でもあるジョン・ケージさんの最高傑作と言われる「ソナタとインターリュード」をご紹介します。 現代音楽は、現在の音楽のことではなくて、クラシック音楽の発展形としてのモダンな音楽という意味です。この発展には、いろいろと面倒な理論的展開があったりして難解なのですが、この難解さは置いておきましょう。 ジョン・ケージさんについては、アルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg)さ

本日の一曲 vol.346 グレン・ミラー ムーンライト・セレナーデ (Glenn Miller: Moonlight Serenade, 1938)

グレン・ミラーさんは、1904年3月1日、アメリカ合衆国アイオワ州クラリンダに生まれ、高校生の時にクラスメイトとバンドを結成、1923年にコロラド大学ボルダー校に進学しましたが、中退してニューヨークで音楽の道に進みました。ニューヨークでは、後にジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin)さんも師事したロシア出身のジョセフ・シリンガー(Joseph Schillinger)先生に師事しました。シリンガー先生の指導の下、「ミラーズ・チューン(Miller's Tun

本日の一曲 vol.329 クライスラー プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ (Fritz Kreisler: Präludium und Allegro im Stile von Pugnani, 1905)

1875年2月2日にウィーンで生まれたフリッツ・クライスラーさんは、まずヴァイオリニストとして有名ですが、数々のヴァイオリン曲の名曲を作曲し、作曲家としても有名です。 クライスラーさんは、7歳から10歳までウィーン音楽院でブルックナー(Anton Bruckner)さん、ドント(Jakob Dont)さん、ヘルメスベルガー(Joseph Hellmesberger Jr.)さんたちに、10歳から12歳までパリ音楽院でドリーブ(Léo Delibes)さん、マサール(Lamb

本日の一曲 vol.307 ラヴェル ステファン・マラルメの3つの詩 (Maurice Ravel: 3 Poèmes de Stéphane Mallarmé, 1913)

1913年という年は、ラヴェルさんは、イーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinskyh)さんとモデスト・ムソルグスキー(Modest Mussorgsky)さんのオペラ「ホヴァーンシチナ(Khovanshchina)」の編曲作業をしながら、1913年5月29日に行われたストラヴィンスキーさんの「春の祭典」の初演に付き合っていた年でした。 この間、ラヴェルさんは、ストラヴィンスキーさんから「3つの日本の抒情詩」を聞かされました。 ラヴェルさんは、この「日本の3

本日の一曲 vol.306 ストラヴィンスキー 日本の3つの抒情詩 (Igor Stravinsky: 3 Poésies de la lyrique japonaise, 1913)

イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)さんは、1910年、バレエ・リュスを率いるセルゲイ・ディアギレフ(Sergei Diaghilev, 1872-1929)さんの依頼を受けて、「火の鳥(L'Oiseau de feu)」を提供し、1911年には「ペトルーシュカ(Pétrouchka)」も提供して、若手劇場作曲家として有名になっていました。 当時のパリでは、日本趣味が流行しており、ストラヴィンスキーさんも、自宅の壁を日本の版画で飾り、日本の詩を読んだりしたそう

本日の一曲 vol.305 シェーンベルク 月に憑かれたピエロ (Arnold Schönberg: Pierrot lunaire Op.21, 1921)

「月に憑かれたピエロ」(通称月憑かピー)は、ベルギーの象徴派詩人であるアルベール・ジロー(Albert Giraud)さんが1884年に発表したフランス語の詩集「月に憑かれたピエロ(Pierrot lunaire)」をオットー・エーリヒ・ハルトレーベン(Otto Erich Hartleben)さんがドイツ語に翻訳したものを題材として、オーストリアの作曲家アルノルト・シェーンベルクさんが曲をつけたものです。 正式な題名は、「アルベール・ジローの『月に憑かれたピエロ(ドイツ語

本日の一曲 vol.294 ラヴェル 鏡 (Maurice Ravel: Miroirs, 1905)

モーリス・ラヴェルさんのピアノのための「鏡」は、5曲からなる組曲です。 1902年、フランス・パリのオペラ・コミックでクロード・ドビュッシー(Claude Debussy)さんのオペラ「ペレアスとメリザンド(Pelléas et Mélisande)」の初演が行われました。このころ、ドビュッシーさんは39歳でしたが、ドビュッシーさんの作品、とりわけこの「ペリアスとメリザンド」を支持する若い芸術家が集まり、このサークルが「アパッチ」と呼ばれるようになりました。 「アパッチ」

本日の一曲 vol.280 モンティ チャルダーシュ (Vittorio Monti: Csárdás, 1904)

ヴィットリーオ・モンティ(1868年1月6日~1922年6月20日)さんは、イタリア・ナポリの作曲家・ヴァイオリニストです。ただ、残念なことに有名なのは、この「チャルダーシュ」だけといってよいかと思います。 チャルダーシュとは、伝統的なハンガリーの民族舞踊で、その名前は、ハンガリー語で酒場を意味する「csárdá」に由来するそうです。日本人には懐かしく哀愁がただよう「遅い」部分から始まり、途中からとても「速い」部分からなるという構成になっています。もともとはヴァイオリンとピ