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本日の一曲 20世紀前半のクラシック音楽

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連載「本日の一曲」のうち、1901年~1950年のクラシック音楽をまとめました。
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本日の一曲 vol.329 クライスラー プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ (Fritz Kreisler: Präludium und Allegro im Stile von Pugnani, 1905)

1875年2月2日にウィーンで生まれたフリッツ・クライスラーさんは、まずヴァイオリニストとして有名ですが、数々のヴァイオリン曲の名曲を作曲し、作曲家としても有名です。 クライスラーさんは、7歳から10歳までウィーン音楽院でブルックナー(Anton Bruckner)さん、ドント(Jakob Dont)さん、ヘルメスベルガー(Joseph Hellmesberger Jr.)さんたちに、10歳から12歳までパリ音楽院でドリーブ(Léo Delibes)さん、マサール(Lamb

本日の一曲 vol.307 ラヴェル ステファン・マラルメの3つの詩 (Maurice Ravel: 3 Poèmes de Stéphane Mallarmé, 1913)

1913年という年は、ラヴェルさんは、イーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinskyh)さんとモデスト・ムソルグスキー(Modest Mussorgsky)さんのオペラ「ホヴァーンシチナ(Khovanshchina)」の編曲作業をしながら、1913年5月29日に行われたストラヴィンスキーさんの「春の祭典」の初演に付き合っていた年でした。 この間、ラヴェルさんは、ストラヴィンスキーさんから「3つの日本の抒情詩」を聞かされました。 ラヴェルさんは、この「日本の3

本日の一曲 vol.306 ストラヴィンスキー 日本の3つの抒情詩 (Igor Stravinsky: 3 Poésies de la lyrique japonaise, 1913)

イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)さんは、1910年、バレエ・リュスを率いるセルゲイ・ディアギレフ(Sergei Diaghilev, 1872-1929)さんの依頼を受けて、「火の鳥(L'Oiseau de feu)」を提供し、1911年には「ペトルーシュカ(Pétrouchka)」も提供して、若手劇場作曲家として有名になっていました。 当時のパリでは、日本趣味が流行しており、ストラヴィンスキーさんも、自宅の壁を日本の版画で飾り、日本の詩を読んだりしたそう

本日の一曲 vol.305 シェーンベルク 月に憑かれたピエロ (Arnold Schönberg: Pierrot lunaire Op.21, 1921)

「月に憑かれたピエロ」(通称月憑かピー)は、ベルギーの象徴派詩人であるアルベール・ジロー(Albert Giraud)さんが1884年に発表したフランス語の詩集「月に憑かれたピエロ(Pierrot lunaire)」をオットー・エーリヒ・ハルトレーベン(Otto Erich Hartleben)さんがドイツ語に翻訳したものを題材として、オーストリアの作曲家アルノルト・シェーンベルクさんが曲をつけたものです。 正式な題名は、「アルベール・ジローの『月に憑かれたピエロ(ドイツ語

本日の一曲 vol.294 ラヴェル 鏡 (Maurice Ravel: Miroirs, 1905)

モーリス・ラヴェルさんのピアノのための「鏡」は、5曲からなる組曲です。 1902年、フランス・パリのオペラ・コミックでクロード・ドビュッシー(Claude Debussy)さんのオペラ「ペレアスとメリザンド(Pelléas et Mélisande)」の初演が行われました。このころ、ドビュッシーさんは39歳でしたが、ドビュッシーさんの作品、とりわけこの「ペリアスとメリザンド」を支持する若い芸術家が集まり、このサークルが「アパッチ」と呼ばれるようになりました。 「アパッチ」

本日の一曲 vol.280 モンティ チャルダーシュ (Vittorio Monti: Csárdás, 1904)

ヴィットリーオ・モンティ(1868年1月6日~1922年6月20日)さんは、イタリア・ナポリの作曲家・ヴァイオリニストです。ただ、残念なことに有名なのは、この「チャルダーシュ」だけといってよいかと思います。 チャルダーシュとは、伝統的なハンガリーの民族舞踊で、その名前は、ハンガリー語で酒場を意味する「csárdá」に由来するそうです。日本人には懐かしく哀愁がただよう「遅い」部分から始まり、途中からとても「速い」部分からなるという構成になっています。もともとはヴァイオリンとピ

本日の一曲 vol.276 ピアノ・トリオ集補遺 ラヴェル ピアノ三重奏曲 (Maurice Ravel: Piano Trio, 1914)

モーリス・ラヴェルさんのピアノ三重奏曲が作曲された1914年は、1912年にバレエの大作「ダフニスとクロエ」を苦労して完成させ、1913年には作曲はほとんどせずに、イゴール・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky)さんの「春の祭典」のリハーサルに立ち会った後、第一次世界大戦が勃発した年になります。ラヴェルさんは、1915年にはトラック輸送兵として第一次世界大戦に出征したのですが、1917年1月には最愛のお母様がなくなってしまいました。 このピアノ三重奏曲は、「ダ

本日の一曲 vol.266 ヤナーチェク ピアノ・ソナタ 「1905年10月1日の街角で」 (Leoš Janáček: Sonatá pro klavírní "I.X. 1905, Z ulice", 1906)

レオシュ・ヤナーチェクさんは、1854年7月3日、チェコのモラヴィアで生まれた作曲家です。同じチェコと言っても、ベドルジハ・スメタナさんやアントン・ドヴォルザークさんは西部のボヘミア出身であり、ヤナーチェクさんの出身地のモラヴィアはチェコの東部になります。 ヤナーチェクというと、有名なのはオペラ「利口な女狐の物語」だと思いますが、それでもあまり親しみはなかったと思います。日本で一躍有名になったのは、2009年に発表された村上春樹さんの小説「1Q84」の冒頭でヤナーチェクさん

本日の一曲 vol.243 フラゴーソ ヴァイオリン・ソナタ (António Fragoso: Sonata for Violin and Piano, 1918)

アントニオ・フラゴーソさんは、1897年6月17日にポルトガルのポカリサで生まれ、1914年の17歳のとき、リスボン音楽院に入学し、1918年に同音楽院を卒業しましたが、同年インフルエンザをこじらせ、10月13日、ポカリサの自宅で本当に短い生涯を終えました。 本日ご紹介するヴァイオリン・ソナタは、フラゴーソさんの遺作となった作品で第1楽章のみで未完になっています。Brilliant Classicsから、フラゴーソさんが作曲したヴァイオリンのための室内楽曲をまとめて動画にし

本日の一曲 vol.233 バーバー 弦楽のためのアダージョ (Samuel Barber: Adagio for Strings, 1938)

サミュエル・バーバーさんは、1910年3月9日、アメリカのペンシルベニア州ウェストチェスタで生まれた作曲家で、母親がピアニスト、母方のおばがメトロポリタン劇場のコントラルトでした。6歳でピアノを始め、7歳で最初の作曲をし、14歳でカーティス音楽院に入学して、音楽の勉強をしました。 本日ご紹介する「弦楽のためのアダージョ」は、バーバーさんの曲の中で最も有名な曲ですが、この曲は、もともとは1936年、バーバーさんが26歳のときに、弦楽四重奏曲ロ短調の第2楽章として作曲されたもの

本日の一曲 vol.207 サティ 家具の音楽 (Eric Satie: Musique d'ameublement, 1920)

エリック・サティさんは、1866年にフランスのオンフールで生まれた作曲家で、1888年の「3つのジムノペディ(Gymnopédies)」が最も有名な曲だと思います。サティさんは、「音楽界の変わり者」と言われ、サティさんに交響曲や大規模な管弦楽曲などの作曲はなく、室内楽曲やピアノ曲、歌曲があるくらいです。 しかし、その考え方は、後進の作曲家に大きな影響を与え、フランス6人組(ルイ・デュレ、アルテュール・オネゲル、ダリウス・ミヨー、ジェルメーヌ・タイユフェール 、フランシス・プ

本日の一曲 vol.171 レーガー 3つの無伴奏ヴィオラ組曲 (Max Reger: 3 Suites for Viola Solo, 1915)

マックス・レーガー(Max Reger)さんは、1873年にドイツに生まれ、後期ロマン派の作曲家に位置づけられる人です。巨体でブサイクでヘビースモーカーで大酒飲みだったようですが、多作でバッハ、ベートーヴェン、ブラームスの正統な後継者であると自負していました。しかし、暴飲暴食が祟ったようで、1916年に43歳の若さで早世してしまいました。 本日、ご紹介するのは、最近ブリリアント・クラシックスから公開された「3つの無伴奏ヴィオラ組曲」(Op.131d, 1915)です。後期ロ

本日の一曲 vol.168 ラフマニノフ 交響的舞曲 (Sergei Rachmaninov: Symphonic Dance, Op.45, 1940. by Kirill Petrenko & BPO)

セルゲイ・ラフマニノフさんの交響的舞曲は、ラフマニノフさんの「白鳥の歌」であり、当時移住していたアメリカの指揮者ユージン・オーマンディ(Eugene Ormandy)さんとフィラデルフィア管弦楽団に献呈されました。全編アメリカで作曲された唯一の曲だと言われています。 ラフマニノフさんの曲としては、唯一、アルト・サックスが使用された曲であり、また、ピアノも使用されています。 この動画は、第1楽章の一部だけですが、最近、交響曲第2番Op.27、交響詩「死の島」Op.29ととも

本日の一曲 vol.159 ドビュッシー ヴァイオリン・ソナタ (Claude Debussy: Violin Sonata, 1917. Played by Gérard Poulet & Yori Kawashima)

クロード・ドビュッシーさんのヴァイオリン・ソナタは、ドビュッシーの晩年の室内楽傑作群のうちの1曲です。この曲の初演となる演奏会は、ドビュッシーさんご本人のピアノと本日ご紹介するジェラール・プーレ先生のお父様のガストン・プーレ(Gaston Poulet)さんのヴァイオリンにより、パリのサル・ガボーで催されました。ジェラール・プーレ先生は11歳でパリ国立音楽院に入学、2年後には審査員全員一致の首席で卒業後、パガニーニ国際コンクールで最優秀賞を受賞しており、フランスの至宝と世界中