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一人でスイカを目指したけど・・・

私はもう一歩も足が前に出なくなっていた。
足に鉛を付けたように重くなっていたからだ。
止まって休みたい気持ちにさえなっていた。


15年以上前のこと「麻夢ちゃん、一緒に走らない?」と高校の先輩M子ちゃんから声をかけられた。職場で偶然再会して以来、思い出話に花が咲くようになった。
M子は最近、走るのにはまっているらしくフルマラソンに近い距離までよく走っているようだった。私がスキーのために体を鍛えたいということを知っていたので声をかけてくれた。
「しかも、走ったらスイカ食べ放題!」とM子は言葉を続ける。スイカが大好きな私を何とか誘うつもりだ。

運動はやっていたものの10キロを走るなんて初めてで距離感さえわからない。
「大丈夫、大丈夫、麻夢ちゃんの基礎体力なら走れるって」と彼女は無責任とも思えるような言葉を言った。

当日、「麻夢ちゃん、走り終わったらゴール地点のテントでスイカ食べ放題だから一緒に食べようね」とM子ちゃんは嬉しそうに言った。そしてゆっくり走っている私を横目にさーっと走り去っていった。
10キロのゴールがどれくらい先なのか皆目見当がつかないからやる気も起きない。

ようやく半分まで来たところで、疲れも出た来た矢先のこと。
「大丈夫ですか?」とパワーありそうな男性が声をかけてくれた。見かけはとても速そうだ。
「スイカ食べ放題の言葉につられてエントリーしたんですけど、いきなりの10キロで足が鉛のようです。先輩はずっと前に私を追い越して今一人でたたかっています。」と私は答えた。
「話しながら一緒に走りましょう」と伴走を受けてくれたのだ。
重い足の私は、「いえ大丈夫です」という元気ももちろんなく。

そこからはいろんなことを話してくれた(何を話していたのかは覚えていない)。意識は足の重さから話を聴くほうへと向いた。
自分でもわからないほど足が前へ出始めた。

「ラストあと、1キロまで来ましたよ。よく走りました!もう大丈夫ですよね。」と微笑み、ゴールに向かって走っていった。速い!ずっと私のスローペースに合わせてくれていたことに改めて感謝した。


生きることはまさにこの走ることだ。
先が見えず、自分のペースを守りながらも進み続ける。雨が降ったり、道が悪かったり、自分自身が疲れていたり。
でも一人でなければ、隣に伴走がいたら、その大変さも軽減できる。
一人で頑張ることも時には必要だけど一緒に先を目指す仲間がいたら少しは気持ちも軽くなる。

私もコーチとして誰からの伴走ができるとしたら彼のようにゴールの少し手前まで一緒に走りたい。

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